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【本紹介】最下層女子高生(著:橘ジュン)

今日は、橘ジュン先生の最下層女子高生ー無関心社会の罪(小学館新書)を紹介します。

幼少期から肉体的・精神的虐待、性的虐待を受けたり、極度の貧困の中に育ち、家にも学校にも居場所のない、女子中学生・高校生や20代の女性のエピソードが説明されていました。

エピソードの中で紹介されるケースは、両親に金銭面や生活面で何らかの問題があり、ネグレクトやDV・性的虐待の被害を受けた若い10~20代の女性が中心でした。家での精神的な被虐のせいで学校でもいじめの対象となり、どこにも居場所がないと感じいていたり、その結果、優しくしてくれるかのように見える男性の下に身を寄せ妊娠してしまったり、また収入を得る手段として風俗のアルバイトをし妊娠をしてしまうというようなケースが多く見られました。貧困や家庭環境の問題と性的搾取の問題が経済的・社会構造的に密接に結びついていることを強く認識させられました。

エピソードの中でしばしば、橘先生の強い意志を感じるフレーズであったり、葛藤や苦しみを感じる文章がありました。エピソード1つ1つが、胸の締め付けられるような内容ばかりでした。まだ若く、状況を認識できなかったり、助けを求める方法を知らなかったり、また助けを求めたくても心理的に求められなかったり、我慢してしまったりする子がいることも分かりました。色々な暴力のために家にいられない若い女性が、一人で生活できるような経済基盤もなく家を出てきたけれども、そのまま戸外にいると色々な性暴力の被害などに遭ってしまうという本当に瀬戸際にいるような子もいて、橘先生の支援NPOが毎日緊迫感の中で支援されていることが伝わってきました。

こうした女性の支援は、以下3つの行政機関で行われるということでした。

①児童相談所
 ・支援対象:0歳から18歳まで(法改正により~20歳まで)
 ・支援内容:児童の相談を受ける、法的な根拠に基づいて一時保護所への入所の措置を行う
 ・関連法:児童福祉法、改正児童福祉法

②自立援助ホーム
 ・支援対象:原則15歳~20歳までの子女、家族がいない児童や家庭にいることが出来ない児童(法改正により~22歳まで)
 ・支援内容:生活しながら仕事に通う場所を提供する

③婦人保護施設
 ・支援対象:18歳以上、年齢制限なし
 ・支援内容:長期的支援の必要な20代半ば以上の女性のための住居型の生活支援、「最後の砦」
 ・関連法:売春防止法、DV防止法

ただ、行政やNPOのサポートネットワークに入れた人であっても、行政の圧倒的な人手不足や、年齢で画一的に区切られてしまう現状制度の難しさから、適切な支援を受けることが難しいケースもあるということでした。また、入所した後に施設に適応することが難しい子や、一時的に避難した後、もう一度家庭に戻り更にひどい状況に陥ってしまう子など、問題は様々なようです。個人的に、筆者の橘さんが運営しているNPOを探して連絡をする人は、ある程度の読み書き・デジタルリテラシーがあったり、見ず知らずの人に連絡して会うという心理的なハードルを乗り越える勇気のある人なのかなと思い、普通の生活をしていると見えなくなっている人もいるだろうと思いました。


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