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見えかたもひとりひとり違っている  ~視力障がいについて~


1.視覚障がいと差別

視覚障がいといっても、要因やその時期は人によって様々です。生まれつきの人、そして緑内障、白内障、糖尿病や脳腫瘍などの病気が原因で、後から視覚機能に支障が出る場合もあります。

視覚障がいは視力があるかないかの単純な状態ではありません。前出の視力障がいのほかにも、視野が限定される、視野障がい、一定の色が分かりづらいなどの色覚障がい、光の強さを区別したり、調整することが難しい光覚障がいなどがあります。
 
近年はPCやアプリで読み上げ、拡大などの機能を利用している方も多くいますが、音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報も周囲の状況を把握するための大切な手段になっています。
 
視覚に障がいのある方が、地域での生活でどんなことを不便だと感じているのか、日本盲人会連合が発行している、「視覚障害者にとって差別ってどんなこと?」に詳しく書かれています。私たちが差別する側とならないよう、どのような配慮が必要なのかを知る手掛かりとなります。

http://nichimou.org/wp-content/uploads/2017/02/jirei2016.pdf

・一人暮らしをするのに、アパートを借りようとしたが、「火の始末はだいじょうぶですか?」と心配され、なかなか入居できなかった。
・近所づきあいが難しく、災害時の避難などが心配。
・パック詰めの食料品は、さわって確認ができないので、ひとりで買い物に行けない。
 
そのほか、補助犬法が施行されているにもかかわらず、盲導犬が入店を断られるケースが後を絶たないことなどについても書かれています。

さらに女性が性犯罪に巻き込まれたり、また、妊娠をしたときに、障害児が生まれるのではないか、と堕胎をすすめられたなど、明らかに、ひどい人権侵害の現状も記されています。

2.視覚障がいについて知り、考えるきっかけになる絵本

① みえるとかみえないとか

 おとなにも子どもにも大人気のヨシタケシンスケさんの絵本です。

アリス館HPより

ヨシタケシンスケ/さく
伊藤亜紗/そうだん
出版社/アリス館
 
調査をするために、宇宙飛行士が色々な星へ行くというお話。いろんなほしに、いろんなあたりまえがあり、目の見えない人もいて、みえるひととはいろいろちがうということもわかりました。

そして、みえないからできないことはたくさんあるけど、見えないからこそできることもたくさんあるということに気が付きます。

最後は、どんなにやることや考え方がちがっていても、おなじところをさがしながら、ちがうところをおたがいに面白がればいいんだね、と読み手に語りかけています。

目のことに限らず、自分とちがう人、その人の住む世界、生活について、興味、関心をもって見ること、考えることの大切さを楽しみながら教えてくれる、そんな本です。

②  ローラと私


徳間書店HPより

キアラ・ヴァレンティーナ・セグレ文
パオロ・ドメニコーニ絵
出版社:徳間書店

この物語はローラの愛犬ステッラ(星を意味する)の目線で語られています。ローラが家族と住んでいた、いなかを離れて、町で一人暮らしをはじめたところから、話は始まります。

ローラとステッラが散歩で外を歩く時の怖さ、驚き、ショッピングでの楽しさ、街の様子などが色鮮やかに描かれています。家でのくつろぎの時間もステッラとローラは一緒。そして、冬は山に、夏は海に旅行にでかけます。

物語の最後にはローラとステッラの出会いについても明かされます。何気ない日常に訪れる心の平安や、ショッピングや旅行での喜びや興奮が表情や景色、絵の色調からも感じとることができます。読んでいるこちらも幸せを感じられる一冊です。

3.視覚障がいについて知ることができる、大人のための本

①とわの庭


新潮社HPより

小川糸 著
出版社 新潮社

とわの目は物心つく頃には明るい、暗いの識別ができていたのが、やがて見えなくなった。

母さんの愛情を受けて育ったが、母さんの気持ちの変化に、とわの生活、生命そのものが左右されていく。

過酷な運命をたどりながらも、周囲の助けと盲導犬のジョイとの出会いがあり、彼女は自分の人生を自分の足で一歩一歩踏み出していく。

読みはじめると、とわの行く先が気になり、止められなくなりました。嵐のなかを歩んでいるように感じるときも、生きていれば、いつかきっと穏やかな日々が訪れる、そんなことを思いおこさせてくれる本です。

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