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note感想🌟 共作小説【白い春~君に贈る歌~】第2章「海を眺めていた」①




十六年前の房総半島。

隣にいた女性。

夏が来るたび瞼の裏に海の景色が映るあなた…

忘れられない思い出。

今も、心の中にいるんですね。



破れそうな夢をつないでくれた女性と、いつしか恋仲になり、共に夢を見たあなた。

しかし、女性の心の闇は深くて。

そんなに自分を痛めつけないで欲しいと願ったけれど、その声が届かなかったんですね。

女性の闇が深くて、支えきれなくて、光が見えなくて。

無力さと厭世的な価値観。

空虚な闇があなたにまで押し寄せた。


外すことのできない真っ暗なサングラス


光が閉ざされて、消せない過去。

救われたかったよね。


私の作る曲はどんどん悲壮感のあるものに仕上がっていった。私はいつも彼女のことを歌っていたのだ。


女性と共に生き、共に夢を見たあなた。

そこに光があれば、どれだけ幸せだったかと思う。

いつも光を探していたんですね。



海は太陽の光を反射し、散らばった宝石のように眩しい。彼女は白い歯を出して笑っている。


そこに光があった。

幸せがあった。

そう思っていた。


やがて砂浜に二人で並んで座った。彼女は地面に謎の絵を描いた後、砂を両手で掬い上げた。

「これが私の人生」

 そう言って、細い指の隙間から砂がするすると落ちてゆく。砂は風に吹かれて斜めに流れる。その様子は星屑のようだった。慌てて、彼女の両手と地面の間に、私の両手を窪めて重ねた。

「それなら俺は、この人生になりたい」

 と言って、彼女の手から落ちる砂が地面に落ちないよう受け止めた。


女性を救う光になりたかったあなた。

こぼれ落ちる砂を受け止めたかったあなた。

砂は無情に落ちていって。

星屑のように美しかった。

女性を受け止める人生になりたかったのに。




誰かを守りたいと願うならば、先ずは自分を守らなければならない。誰かを愛するならば、先ずは自分を愛することが必要である。私たちは自分に注げる愛情の範囲でしか、人に関わることができないのだから。容量を超えてしまえば、私が私でいられなくなってしまうのだ。


女性の闇は深すぎた。

あなたを守れなくなるくらい。

女性を支えられるくらい自分を愛せたら、今でも一緒にいられたのかな。

闇が共鳴していたのかもと思うんです。

倒れるしかなかった。

傷だらけになるしかなかった。

その傷から、優しさがにじみ出るから。

あの海で見つけられなかった光をあなたは探しているのだと思います。

あなたと女性を救うはずだった光。









🌸この記事は仲川光さんの企画参加記事です🌸


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