甚だ簡単ではございますが
漫画家の蛭子能収さんは、葬式に行くと葬儀の最中に必ず笑ってしまうという。
みんなそろって同じ行動をしているその場が、奇妙で不思議な空間に見えてくるそうだ。
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これっぽっちも未練のない中学の、底冷えする体育館で行われた卒業式で似た経験をした。
笑ってはいけない場面で笑わぬよう我慢する。
具体的には、PTA会長(50代くらいの男性)のスピーチで何回も登場する口ぐせ、
え~甚(はなは)だ~簡単ではございますが
に耐えること。
それまで何度かの式典で披露済み。
緊張のせいなのか、中学生相手に連呼されるこの謎フレーズ(特にはなはだの部分)にじわじわくる生徒が多かった。
まだ教師の体罰が黙認されていた時代、うっかり声を出して笑い声など出しそうものなら、なわけである。
そんなわけで、今回も同じパターンが予想されていて、みなと笑いをこらえるというプチイベントが退屈な卒業式のわずかな楽しみだった。
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笑ってはいけないような厳粛な雰囲気の中、予定調和的に落とされたはなはだ爆弾。
紺色の制服の肩を揺らしている者もちらほら見かけた。
意識し過ぎは逆効果を生むもの。
目が合った友人とクスクスやりあったくらいで、はなはだ はわたしの中で以前のようなインパクトを失っていた。
そうして卒業式は長渕剛の乾杯と校歌斉唱2連発で幕を閉じた。
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