見出し画像

33歳塗師の思う伝統工芸の現状

最近は日々の業務が増え、GNU(ヌー)の活動も広がりつつあるのは嬉しいことです。
でも、それに伴って「考えを文字に残すこと」の大切さを今一度考え直すきっかけをいただいたので、noteでブログを書き始めてみようと思う今日このごろです。

「伝統工芸の担い手」として、発信に対してもう少し解像度を上げて活動してみようと思います。

高校時代は、毎日「比叡山高校野球部の寮生活」について、他の生徒とは少し環境の違う日々の寮生活を、面白おかしくブログに綴っていて、校内でちょっとだけ有名だったりしました。笑
その頃を思い出して、筆を走らせます。

#現代は筆ではなくPCでと突っ込まれそうですがブラインドタッチができない僕は携帯を走らせてます

 
今回は直近に出店したイベントで思ったことと、今後の若き塗師の目標の共有を少し。

結論を言うと、来年2024年に「キャンプ場で伝統工芸を広める」をコンセプトに、JAPAN PRIDEなイベントを開催する。という目標に至るまでの心境。
興味のある方は、読み進めてみて下さい。

33歳塗師の少し変わった1日

僕の仕事は、漆塗りの職人「塗師」
でも、一般的な職人とは違って、少し変わった動きをしていたりします。

職人というと、一般的には問屋や小売店、もしくは直接エンドユーザーから漆塗りの依頼を受けて、指定された納期に向けてとにかく毎日、朝から晩まで漆を塗るのが仕事。

僕もそんな側面もあったりしますが、時代の流れで職人の需要が減ったことと、もっとたくさんの人に魅力を伝えたいという想いのもとヌーの活動を始めたので、少し変わった1日を送ってます。
日々の業務はざっとこんな感じ。

仏壇仏具の製造販売、社寺仏閣修復に加えて、snsでの情報発信、ブランド運営、プロダクト企画制作、小中学生に向けての漆体験授業、キャンプ場でワークショップ企画運営ect.

と、従来の漆塗り職人とはかけ離れた仕事内容。
でも、あくまで僕の肩書きは、漆塗り職人「塗師」で漆を塗ることを生業としています。

最近はありがたいことに、いろんなところで業界のことをお話しする機会が増えてきました。
直近だと「進化の瞬間 switch」で取材していただき、とてもいい取材をしていただいたので、まだ観ていただいてない方は是非。

駅伝の繰上げスタート

今僕たちの業界は苦境に立たされています。年々時代の流れとともに需要が減ってきて、輪島などの産地でもお手上げ状態。安売りをしても売れない現状に、市場は崩壊しています。
そうなると、後継者不足。文化は耐えていく一方です。


そんな中日本の「職人」の話をしていると、駅伝の繰り上げスタートを思い浮かべたりします。

走者が襷(たすき)を順に受け継いで、長距離を走るあの競技。中継所では、仲間から受け継いできた襷を肩からはずし、次の走者は助走をつけ、それを受け取りゴールに向けまた走り出します。

でも中には、襷を受け取れない走者もいます。
足踏みをしながら冷える体を動かし、遠くを見つめながら自分のチームの選手を待つけど、ある時間が来ると襷を受け取らないままスタートしなければならない。
それが「繰り上げスタート」というルールです。

必死で繋いできた襷を、次の走者に渡せず中継所で泣き崩れる選手を見ると、
今の日本の職人の現状のようだと感じることがあります。

僕は名古屋で丁稚奉公(修行)をしていた時代から、家業を継いだ今も、代々受け継いできた看板をたたむことを決めた職人を何人も見てきました。
仲の良かった畳職人さんは、泣きながらそのことを伝えにきてくれたこともありました。

僕は、GNUの活動を通して各地で「漆塗りワークショップ」を行なっています。キャンプ場や、アウトドアショップ、中学校の技術家庭の授業など、場所は様々。
そのときにいつも参加者にお話しするのは「伝統の現状について」です。
受け継いできた襷を次の走者に渡すことができない職人たちが増えていて、、、
かと言って次に繰り上げスタートする、新たな職人の走者の存在もない。
職人をやりたい人はいるけど、漆作品の需要がないから生活が成り立たないんですよね。
夢を諦める職人も少なくないのです。

みなさんに改めて、大切なことに向き合うきっかけを作ってもらうために、ワークショップなどGNUの活動を始めました。

PITAGORA BASE URUSHI WORK SHOP

日本人はダイヤモンドを捨てて、砂利みたいなものを拾って喜んでいる

ドイツの建築家カールベンクスという人が残した言葉に、
「日本人はダイヤモンドを捨てて、砂利みたいなものを拾って喜んでいる」という言葉があります。

海外の人の方が日本の伝統の素晴らしさを知っていて、日本人はその魅力に気付かず、伝統というみんなの大切なものを捨ててしまっている
そんな悲しい言葉です。

日本が世界に誇る伝統の現状と向き合っている人が、いったいどれくらいいるのか...?
家業が漆塗り職人という変わった環境に生まれた、そんな僕にしかできないことは何か。

「伝統工芸の、この現状をなんとかしたい」

いつか、この想いに共感してくれる作り手たちと、そしてそれを応援してくれる人たちで、
豊かでパワフルで未来の日本を変えるような空間を作りたい
そんな新たな目標ができました。

そんな想いを抱いていた時に出会ったPITAGORA BASE

そんなことを考えているときに、たまたまご連絡をいただいたのが、10月に出店したイベントPITAGORA MARKETを主催する、PITAGORA BASE の飯田さんでした。
飯田さんは、愛知県飛島村でアウトドアショップを営んでおられます。

写真左 PITAGORA BASE 飯田さん

「中川さんの漆に対する想い、イベントを通じて少しでも広がりますように」
とお声がけくださり、出店する運びとなりました。

ありがたいことに毎月のように、ショップ様より、GNUの作品をお店に置かせて欲しいとご連絡をいただきます。
ただ、漆の作品は作れる数に限りがあることと、直接使い手の方に想いを伝えたいということもあり、現在のところはショップ様への卸は行っておりません。当日の他の出店者様は店舗にお取り扱いがありましたが、うちは普段お取引はありません。今回はそのあたりもお話した上で出店させていただきました。
作り手のことをよく考えてくださっているPITAGORA BASE飯田さんのお人柄に、とても惹かれました。

夏の間仕込んでおいた新たなプロダクトと、新たなワークショップを引っ提げて行ったイベント。

当日GNUブースに足を運んでくださった方は、「過去最高数の群れの数」でした。

ちなみに、ヌーの活動を応援してくださっている方々のことを「ヌーの群れ」と称し、アフリカの大地を次なる目的地を目指して多くの仲間を増やながら移動していく。
漆文化を一緒に広めるヌーの群れとして表現しています。

ピタゴラさんのイベントには、日本の刃物文化を広めたい想いで活動されているFEDECAさんや、日本茶の魅力を伝えたいという想いで活動される大島園の大島さんも出店されていて
僕のいつか実現したい夢の第一歩のようなイベントとなりました。

そして、ふわっとしていた想いが、イベントが終わってから確信に変わった瞬間でもありました。

2024年「JAPAN PRIDE」と称して、まずは小さくてもいいので伝統工芸の底上げを測るイベントをスタートさせたいと思っています。

まだ何も決まっておりませんが、また肩書きの一つに「イベントプロデューサー」という言葉がひとつ増えそうな予感。
これからも、新たな挑戦を続ける伝統の担い手でありたい。そんなヌー中川をよろしくお願いします。


GNU urushi craft

GNU urushi craftは、「漆文化を広めよう」を合言葉に、様々な”漆の新たな可能性”を探りながら、若き塗師が”ヌーの群れ”と一緒に、漆文化を広める挑戦を続けるプロジェクトであり、コミュニティーであり、アウトドアブランドです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?