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私が初めて付き合ったヒト
小学生の頃からずっとずっとコイビトに憧れていた。
早い段階から恋愛に好奇心を抱き、恋愛小説から漫画まで読み漁っていた私。
いつしか私にも、あの漫画の世界の主人公のような存在になる時が来るのだと、信じて疑わなかった。
家族以外の人に愛されるという感覚は、どんなものなんだろうかと。
そう思い続けて中学生になった私に、初めての恋人ができた。
厳密に言うと、初めて‘きちんと’お付き合いをした人、である。
同じ部活で仲良くなった同級生の「女の子」だった。
私は極めて異性愛者に近い。
99%以上は異性愛者だと断言出来る。
でも、その子は特別だった。
間違いなく彼女は恋愛対象だった。
初めてできた恋人が、憧れていた彼氏ではなく彼女であったことなど、正直少しも気にならないほど。
それぐらい心底惚れていた。
何故だかその子の前では男になってしまうのだった。
(まあ典型的なクズ男みたいなことをしてしまっていたんだけど)
彼女は、柔らかくて、聡明で、明るい人だった。
私の中で最も、愛らしいの言葉が似合う人だった。
同じような人がいたら好きになる、というわけではない。
彼女でないと多分好きにはなれなかったと思う。
キスをすると、とろんととけた表情をするのも。
意地悪をすると、涙目で甘えてきたのも。
彼女でないとダメだったんだと思う。今でも。
大学四年生になった今、中学の恋愛を振り返っても鮮明に覚えているのは彼女のことだけ。
彼女と別れた後に念願の彼氏ができたが、正直どんな表情をしていたかすら思い出せない。
未練はもうないけれど、これ以上ないくらいに夢中になった忘れられないヒト。
なぜ今更思い出したかって、今私の横にいる彼が記憶の箱をつついたからなのである。
いやそれだけじゃない。先日Instagramで彼女からフォローリクエストが来ていたこともあるのだろう。
中学の頃、彼女とは喧嘩で別れた。
それはそれは、大喧嘩だった。
内容は、100 : 0 で私が悪い。
私は本当に傷つけるような言葉や行動ばかりで、彼女が別れを切り出すのも時間の問題だった。
でも謝れなかった。
別れたあと、暫くずっと後悔したけれど。
謝ることができるほど、大人にはなれなかった。
そのまま彼女とは別々の進路を辿った。
気まずいまま。
高校を卒業して大学生になり、コロナが流行りだした頃。
なぜかふと連絡を取った。成人式だったからかな。
無性に会いたかった。謝りたくて、中学生の頃のあの感覚にもう一度触れたかった。
彼女は快諾してくれたのにも関わらず、結局最後までへっぴり腰だった私は、会わない結果を選んでしまった。
後悔はしていないというと嘘になる。が、その時に会っていたらもっと後悔したと思う。
というか、どんな気持ちになるか想像できなくて怖くてやめた。
そんな冒険をできるような度胸もなければ、資格もなかったのである。
1か月前くらいにInstagramの投稿で見た彼女は、顔こそ変わっていないものの、纏う雰囲気は大人になっていた。
ずっとショートだった髪の毛が、ロングヘアになっていた。
彼女は、当時のことなんて覚えていないのかもしれないけれど。
私には忘れられそうにもない。
中学生の頃から、私と彼女の間で、時計の針は動かないままだと思っていた。
彼女が、動かすべきだと背中を押してくれたのか。
はたまた、たまたまInstagramのオススメユーザーにのぼってきた見慣れた名前だったからタップしたのか。
真相を聞くのは、もう少し先になるかもしれない。
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