【人事が語る就職活動のはじめの一歩】その1 :「脱消費者脳」


 採用活動で学生のESを読んだり面接をしていて、「この学生はわかっているな」もしくは逆に「この学生は全然わかってないな」と評価が別れる場合があります。その二つのパターンの学生の何が大きく違うのか、それはその学生が「消費者脳かどうか」であると言えます。ちなみに「消費者脳」というのは私が勝手に生み出した言葉なので今はわからなくても全然大丈夫です。以下詳しく説明していきますね。

「消費者脳」とは

現在就活生、つまり学生であるあなたは、基本的に消費者です。ここでいう「消費者」とは経済学における「生産者⇄消費者」の定義では必ずしもありません。ここでいう消費者とは「世の中に価値を提供する側ではなく、消費する(買う)側である。」ということです。色々な場面について言えるのですが、ここでは進路選択にフォーカスして考えてみましょう。
 

 あなたが今大学生であるとすると、入学に際して今の大学を選び、入学者選抜を通過してきましたよね。どんな形であれ、実際にあなたは今の大学に行くという選択をしましたが、その際あなたは「消費者」として大学を選択したと思われます。その証拠にあなたは大学にお金を払い、大学はその対価としてあなたに教育を提供していますよね。つまり大学進学というのは基本的に「消費者的な行動」であり、大学進学というのは「消費者脳」で行った選択なんです。「自分が入れる大学/学部はどこか」「自分に一番の価値(教育内容/学歴など)を提供してくれる大学はどこか」など、自分が払えるコストと得られる対価を基準に行った選択が大学選びだったはずです。この消費者的な行動をあなたにとらせている「消費者脳」を捨て去れていれるかどうか。この差が就職活動において採用側に与える印象を大きく左右しているんです。


大学入試と就活の違いとは

 では、なぜ大学入試では有効だった消費者脳を就職活動では捨て去らなければいけないのでしょうか。大学入試も就職活動も一見同じような選考を経ていますね。センター試験のようなSPI、小論文試験のようなES、そして何よりも、同じものとしか思えない面接。多少の違いこそあれ、受ける側からすると大きな違いは感じないかもしれません。しかしここで理解してほしいのは、先ほども書いた通り大学入試においてはあなたは消費者、つまり「買う側」だったということです。

 就職活動は全く違います。あなたは「売る側」になり、企業が「買う側」になります。考えてみて下さい、会社は実際にあなたを買いますよね?採用試験に合格して採用されれば、会社はあなたに毎月の給与を支払うことになります。それ以外にも、まだ何もできない新人に研修・教育を施す費用、社会保険料の会社負担分、住居手当などの福利厚生費や退職金の積立など、会社は実際にお金を使ってあなたを買うことになります。実は採用活動(あなたにとっての就職活動)とは、会社のビジネスにとってあなたが有用であるかどうか、買うべき相手かどうかを見極めるプロセスだというわけです。


脱消費者脳 → セールスマンへ

 就職活動があなたにとって消費行動でないことはわかりました。消費者脳を捨て、あなたは自分自身(より正確にはあなたの労働力)を会社に売り込み、買ってもらわなくてはいけません。そこを理解して「脱消費者脳」ができている学生は自分のセールスポイントをよくわかっていてアピールも上手なため、企業側も納得して「買う」ことができます。反対に「消費者脳」が抜けていない学生は自分のことがよくわかっておらず、「こんな条件で働きたい」とか「こんな仕事がしたい」など自分の希望しか持っていません。これって少し的外れだと思いませんか?

 ちょっと想像してみてください。あなたの家に訪問販売が来て、セールスマンが商品の説明もろくにせず、

「この商品を買ってくれると僕が儲かるんで買って下さい!!」

と言ったらどうしますか?絶対買いませんよね?その商品はどんな物なのか。買うとどんなメリットがあるのか。価格に見合った価値はあるのか。そういったことを判断し、自分に必要だと思えば買うし、必要でないと思えば買わない。買う/買わないの判断にセールスマンの希望は基本的に関係ないと思います。就職活動においてあなたはこのセールスマンの立場であるということを肝に銘じて下さい。

 就職活動をしていると「あなたは何をやりたいですか?」という質問によく出くわすと思います。面接中に面接官から直接聞かれることもあります。しかしその質問を真に受けて「単純に自分のやりたいこと」を考えてはいけません。その考え方こそが「消費者脳」なんです。就職活動においてはこの消費者脳を捨て、

・「自分の価値とは何なのか(自己分析)」

・「自分がその企業にとってどう有用なのか(企業分析)」

  そしてそれらを

・どうやって伝えるのか(セルフプロデュース)」

を的確に行うことが何よりも重要です。具体的に何をすべきかについては今後少しずつ書いていきたいと思います。是非ご期待下さい。


p.s. もちろん、あなたのやりたい事は何よりも大切です。1度しかない人生ですから、就職するといっても会社のためではなくあなたのために働いて下さい。ただ、就職活動は志望企業に受かってナンボの世界ですからあくまでも一時的に、そして戦略的にセールスマンになって下さいね。

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