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フルーツの町へ移住したら人生変わった【地域活性化起業人 活動報告 #02】

ぐるなびは、食文化振興や観光振興などによる地域活性化に貢献すべく、2021年より総務省による「企業人材派遣制度」を活用し、当社社員を“地域活性化起業人”として全国各地に派遣。地方自治体との連携のもと、ぐるなびの持つ事業インフラやノウハウを活かした地域独自の魅力・価値の向上に取り組んでいます。
今回は、宮崎県都農町にて業務に従事する齊藤優輝より、活動報告をいたします。

はじめに

今からちょうど1年前の2022年6月に宮崎県都農(つの)町へ移住し、地域活性化起業人として活動しております、株式会社ぐるなびの齊藤優輝と申します。

百貨店の食品バイヤーという前職での経験を活かしながら、都農町のフルーツや畜産品(和牛)を当社が運営する食のECサイト「ぐるすぐり」 を通じて販売するなど、珠玉のフルーツをはじめとする素晴らしい都農町の食を全国の消費者にお届けする仕事に大変やりがいを感じています。

東京のデスクに座っているだけでは到底見つけることのできない、現地にどっぷりと入り込むからこそ出会える食の宝が、宮崎県都農町にはまだまだ存在します。こうしたことは、都農町だけでなく日本全国あらゆる地域に共通して言えることではないでしょうか。

今回はそんな大きな可能性を秘めた地域活性化起業人の活動、これまでに培ったスキルを活かし好きな場所で楽しく生きる現在の働き方についてご報告します。

1.都農町は宝の山

皆さんは「飛び切り」という等級がフルーツや野菜にはあることをご存知でしょうか。
「いやいや、そんなのスーパーで見たこと無いよ」
「高級果物店にだってそんな名前のついたフルーツは売ってないよ」
そんなふうに思う方がほとんどですよね。

それもそのはず。フルーツや野菜の等級というは「秀」や「優」、「A品」「B品」「規格外品」という言葉こそ公式には存在していますが、私の知る限り「飛び切り」という等級が箱などに書かれていることはありません。

しかし、限られた生産者が育てる果物や野菜の中には、稀に飛びぬけて品質の高いものが生まれることがあり、「飛び切り」という等級に値するフルーツが確かに存在するのです。

例えばシャインマスカット。このブドウの平均的な糖度は18度前後で、西日本では8月のお盆明けに糖度が上がり切り、9月頃までが旬。東日本では9月下旬から11月に旬を迎えます。

ただし、この条件に当てはまらない、良い意味での規格外であるシャインマスカットを作ることができる「名人」が日本には一定数存在しています。
なんと、そのうちの一人が都農町で果樹園を営む矢野弓広さんなのです!旬よりも半月ほど早い7月下旬に、糖度が20度を超える極甘のシャインマスカットを収穫されてます。

「飛び切り」のシャインマスカットを生産する名人、矢野農園の矢野弓広さん

栽培テクニックや畑の地質、日当たりに加え、その年によって変化する天候など様々な要素が重なって生れる「規格外に品質が高いフルーツ」は、一般消費者の手に届く前に市場のセリで目利きの仲買人(バイヤー)が買い占め、特別な販路に流れて行ってしまうため、お目にかかりたくともなかなか見つかるものではありません。そんな市場の仲買人同士が異様に質の高いフルーツを表現する際、隠語として「飛び切り」と呼んでいるそうです。

もちろん「飛び切り」を生み出す生産者の自宅の表札に「名人」などと書かれているわけではありませんので、「名人」と出会うには地べたを這うようにアナログな情報を手繰って探し当てるしかないわけです。名人を探し求め都農町を回っていた時に出会ったのが、そんな「シャインマスカット」「飛び切り」を育てている矢野農園の矢野弓広さんです。矢野さんに出会ったことで、この奇跡ともいえる「シャインマスカット」を全国の消費者の皆さんにご紹介することができるようになりました。
お取り寄せサイト「ぐるすぐり」で一旦は完売してしまった「シャインマスカット」ですが、大変嬉しいことに第2弾として6月より予約販売を開始しました。矢野名人が育てた飛び切り甘い「シャインマスカット」を是非お取り寄せいただきご堪能ください。

2.私が“地域活性化起業人”になるまで

「どこか暖かいところがいいな……」
2021年の年末頃、私は日本地図を眺めながらぼんやりと“地方への移住”について考えを巡らせていました。

コロナ禍真っ只中。度重なる外出自粛や行動制限要請から、仕事もほとんど自宅マンションでこなす日々が続きました。スマホの体調管理アプリを見ると1日500歩も歩いていない!という状況が2年ほど続いていたこともあり、対面での人とのコミュニケーション、日の光や風の音など物理的な刺激に非常に飢えていた状態だったのだと思います。

私は10年ほど勤めた百貨店のバイヤー職を辞してぐるなびへ転職後、自分で立ち上げた日本の食を中心とした魅力を海外へ発信するアウトバウンド事業の運営・拡大を担っており、主な仕事相手は上海にいるグループ会社の社員やクライアントである自治体や省庁の方々でした。

当時の仕事は非常に面白く、やりがいも十分あったのですが、仕事のすべてがパソコンの画面上で完結してしまう、「リアルな現場」から遠く離れた働き方でしたので、ジワジワとある種のストレスを溜め始めていたことも事実でした。

百貨店のバイヤー時代。中南米のコーヒー農園の視察の様子。

百貨店で食品バイヤーを務めていたころは、日本各地はもちろんのことヨーロッパや中南米、東アジアといったように、常に移動し続ける日々を過ごしそれはとても充実したものでした。そして、リアルなふれあいを根っから好む私にとって、産地で感じる畑の匂いや生産者とのコミュニケーション、こうした仕事環境が何よりも性にあっていたように思います。

地域活性化起業人の勤務候補地は日本全国。それぞれの地域の実情についての資料も乏しく、どの地方自治体が何を求めているかという情報も特段有りませんでしたが、「生の現場がある!」という事にまず私の心は躍りました。候補地の一覧をパラパラと眺めていると、ふと九州の宮崎県にある「都農町」が目に留まったのです。

都農町の田園風景

日本有数のフルーツの産地であり、世界的に有名なワイナリーが存在し、畜産も盛ん。そして総務省による「企業人材派遣制度」のもと、人材を求めている。しかも全くの偶然ではあるものの、新米のバイヤーであった10年以上前に私は都農町を訪れたことがある。

「あ、ここだな」と感じました!

その後、都農町について調べながら直感が確信に変わるまで約1週間とさほど時間はかかりませんでした。掴んだ“確信”を胸に、まさに突き動かされるように、家族への相談をすっ飛ばし都農町への派遣を申し出たのでした。

3.都農町で過ごした1年

都農の美しい風景

2022年の6月1日から私は都農町へ赴任し活動を開始しました。
「地域活性化起業人」という働き方の良いところは、何と言っても仕事のゴールやそこへ向かうプロセスを自主設計できる点です。

私は短期、中期、長期の目標と行動計画を立てる中で、まず短期的にはぐるなびのユーザーに対して都農町の商品を紹介し販売する事に取り組み始めました。中長期的には町の課題解決に役立つ事業の立ち上げを地元の関係者と共に組成していきたいと考えています。

生産者の皆さんの負担を極力抑えつつ、また「訳アリ品」や「激安商品」というものではなく、本当に味と鮮度が良く、食の感度の高いユーザーを満足させる商品を発掘する仕事は「これでお給料をもらっていいの!?」と思えるくらいに楽しいものです。

都農町の友人たちと一緒に楽しむBBQ

また同時に、仕事以外でも都農町の方々との深いつながりを持てたことは、私の人生にとって非常に大きな財産となっています。人と人のリアルなふれあいや四季の移ろいを感じさせてくれる地域行事などの存在が、コロナ禍の行動制限などで自由を奪われ、乾ききっていた私の感性や心もちに潤いを与えてくれたのです。

「任期はあと2年しかない」という焦りにも似た寂しさがあるのですが、地域活性化起業人としての役割を終えた後も都農町とのつながりは自分の人生において仕事・プライベート両面で大きなものになりそうです。

ここまでお読みいただいた皆さん、本当にありがとうございました。自分の専門性や能力がうまくかみ合えば、日本の各地に眠る宝物のような可能性を掘り起こす事が出来ると思います。こうした働き方の機会を提供してくれたぐるなびと、私を温かく受け入れてくれた都農町の皆さんに心から感謝しつつ、残り2年間で更なる成果を上げることを目指して、「お志事」頑張ります!

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