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【実施・掲載報告】都立高校での進路支援プログラム活動が朝日新聞に掲載されました。

特定非営利活動法人glolab (グロラボ)では、東京都立六郷工科高等学校(東京都大田区)と連携し2022年6月から12月にかけて進路支援プログラムを実施しました。そして、今回その活動の様子を朝日新聞社に取り上げていただきました。

プログラムの概要および6月〜7月にかけての実施報告はこちら
記事は朝日新聞デジタルにて掲載中です(有料)。

昨年9月〜12月はプログラム後半戦として、自己理解コース(1〜2年生対象)では自分が育ってきた環境からどのような影響を受けているかを考えるワークを中心に実施し、加えて進路に影響を及ぼしうる在留資格についても診断ツールの活用と基本知識をレクチャーをしました。
仕事理解&就職準備コース(3年生対象)では、当初の予定を変更し、生徒の状況や希望をヒアリングした上で、個別での進路サポートを提供しました。また、12月は1〜3年生合同で社会人の先輩による講話も実施しました。

自己理解コース(1~2年生対象)

9月〜12月の実施内容

「ロールモデル(お手本となるような人物)」という言葉がありますが、
私たちが進路を考える際、自分の周りにいる家族や友人・知人、偉人や有名人などの言動から意識的あるいは無意識的に影響を受けることは珍しいことではありません。また、人物以外にも育ってきた地域文化や風習、その時代の流行りや大きな出来事から影響を受けることもあり得ます。
しかし、学生時代にそれらの外部的な要素がどのように(どの程度)自分の進路決定に影響しているかをじっくり考える機会はあまりないのではないでしょうか?

自己理解コースの後半戦では、生徒を取り巻く環境がどのように自分の価値観や言動、進路の希望に影響を及ぼしているのかを考え、言語化し他者に共有することでより深い自己理解を促すワークを実施しました。ワークの概要や資料はyoutubeに公開している進路支援動画シリーズ「今日から!」の第6話をご覧ください。

加えて、外国にルーツをもつ生徒が進路を考える際に考慮する必要がある
在留資格については、当団体が開発した診断ツールを生徒に試してもらうことで、自身の在留資格がどのように進路に影響しうるのかを知ってもらう機会を提供しました。

診断ツールはLINEまたはウェブ上で使用いただけます。

生徒たちの様子や変化

自分が育ってきた環境からどのような影響を受けているのかを考えるワークを通じて、ある生徒は「お兄ちゃんから日本語を教わっている。いつも助けてくれる。お兄ちゃんが大好き。」と、顔をほころばせながら話してくれました。彼女は参加当初、シャイな印象だったのですが、このワークを通じて大好きなお兄さんのことを嬉しそうに話してくれるまでに変化しました。
また、ある男子生徒は「自然が好き。ネパールにいるときはよくハイキングに行っていた。将来はできれば自然が多いところに住みたい。」と、懐かしそうにネパールにあるハイキングコースの話や将来の希望を教えてくれました。

一見、それらが進路にどのように影響するのか、と思われるかもしれませんが、未来を考えるためには「過去〜現在」を振り返り、その個人にとって
印象深い出来事や人物などからヒントを得ることは効果的な方法のひとつです。また、自身の考えを言葉にして他者に伝え、他の人からコメントをもらうことでより一層自己理解が深まったり、新たな発見をすることもあります。

仕事理解&就職準備コース(3年生対象)

9月〜12月の実施内容

3年生は当初、全員が卒業後に就職を希望していたこともあり、求人票の
読み方のレクチャーやワークシートを使いながら興味のある仕事を調べる
練習を一緒に行いました。興味のある仕事をインターネットで調べた際は、難しい日本語サイトの情報を理解するのに四苦八苦しながらも、ボランティアの助けを得ながら理解を深めました。

その後、各生徒の心境や状況に変化があったため、予定を変更して個別のサポートを実施することになりました。当団体では『「逆境」を成長の機会に』を合言葉にしており、その本質は進路に対する生徒の主体的で能動的な行動(≒キャリアオーナーシップ)を引き出し支援することにあります。
参加人数や支援現場の状況にもよりますが、可能な限り生徒に寄り添った
支援を提供するという考えから、窓口となっていただいている進路指導室の先生と「生徒が求めている本当に必要な支援は何か」ということを改めて話し合いました。その結果、生徒と通訳同席での面談を実施し、彼らの考えや希望を再度確認した上で個別の支援策を提供することにしました。

個別支援では、在留資格の専門家に繋げることや進路相談、情報提供を行いました。なお、在留資格に関しては他団体のアドバイザーと連携することに加え、今回は外国人在留支援センターも活用しました。

生徒たちの様子や変化

進路相談にのっていた女子生徒からは「(コーディネーターの質問が)
自分は考えていなかったことだけど、大事だから親と話す。」という発言があったり、次回の面談までにご家族と話してくることについて一緒にメモをした内容を忘れずにやってくる姿から、その生徒の良い変化を感じ取ることができました。

振り返りとまとめ

両コースを通じていくつかの学びがありました。これらの学びを次年度につなげていきたいと思います。
1. 進路支援を早めに初めることで生徒が選択肢を広げられるようにする
当たり前のことを言っているかもしれませんが、高校1年生から始めるのと
3年生から始めるとのでは、生徒本人にとっても支援者にとってもできることが大きく変わってきます。特に就業制限のある在留資格を持つ生徒の場合は、進路を考える上でも自身の在留資格を踏まえた準備やアクションが必要になります。また、生徒が進路を考える際は保護者や周囲からどの程度理解や支援が得られるかも重要になってきます。保護者の理解を得たり、必要な情報提供をするためにもできるだけ早い段階からの支援が必要だとあらためて感じました。引き続きその重要性を伝えていきたいと思います。

2. 生徒の置かれている状況をできるだけ正確に把握する

生徒の進路について本人と話をする際は、必要であれば通訳者に同席してもらい、できるだけ正確に本人の意思や置かれている家庭環境等をヒアリングすることが大切です。今回3年生との個別面談を実施した際は通訳者に同席してもらうことで、生徒の考えを細かく確認することができましたし、我々の考えやアドバイスを伝えてあげることもできました。通訳も含めて、できるだけ彼ら・彼女らが話しやすい環境を作ってあげることで、生徒の置かれている状況を把握することができ、その生徒にとってより良いサポートを提供することができると考えます。

3.必要に応じて適切なリソースに繋げる
生徒が置かれている状況は多様かつ複雑であり、進路支援コースの枠組みの中だけではサポートが不十分であることを痛感しました。ただ、当団体として無制限にサポートを提供することはできないですし、持続可能な方法でもないと考えています。ですので、コースで提供できるサポート以上のことについては、生徒本人と学校側ともしっかり話した上で、当団体としてできることの明確化と先生方との連携や役割分担をして対応しました。
まだまだ試行錯誤ではありますが、他の団体等との連携を強化していきながら、より包括的な支援ネットワークを構築していくことで、生徒を適切なリソースに繋げられるようにしていきたいと考えています。

報告:城島・柴山

■ 東京都立六郷工科高等学校
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