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グローカル人材論特殊講義って何だ?【前編】2012~2017年度

みなさんは「グローカル人材論特殊講義」をご存知ですか?

この講義は、グローカルの設立前2012年度から京都産業大学で開講されているグローカルのコンセプトである「教育の社会化」を体現している授業です。企業TOPからNPOに至るまで様々な業種・職種の方をゲストに招き、対話を通じ教室を社会と見立て、最前線で活躍されるみなさんから社会のリアルを語っていただいています。実はこの講義を契機に、世界に誇る技術を持つ知られざる京都企業を知り、PBLを受けたり、グローカルのインターンや職員になった方もいます。

現在に至るまで人気は色あせず、じっくり語り合える小人数講義の形態にこだわっているのもポイントです。就職活動のためではなく、社会を知る学びの中で「働く」や「京都の産業」を見つめる。そんな時間を重ね学生が自ら自分の軸や社会の見方が変わる場を創出しています。


講義について

概要

 この科目は、毎回、連携経済団体より企業トップもしくはエースの方に講師として来ていただき、その仕事内容経験を語ってもらいつつ、このグローバリゼーションの時代に、地域社会を支えることの意義や苦悩をめぐって学生とワークショップ的な議論を繰り返していく、というものです。議論のコーディネーターは法学部の中谷 真憲 教授が務め、地域経済で働く中で見いだされる公共性のあり方および就業観を、企業学生双方に考えていただく場とします。

京都産業大学HPより

講義の様子

▼これまでに行われた講義の様子をいくつかご紹介!
※社名・役職などは当時のまま記載しています。

2012年度

2012年度 講義をしていただいた講師のみなさま

2013年度

2013年度 講義をしていただいた講師のみなさま

南部邦男なんぶ くにお 氏(株式会社ナベル 代表取締役会長)

人は何のために働くのか学問とは何か何のために人は学ぶのかということについて、終戦からの歴史と社長自らの人生を踏まえながらお話頂いた。また、京都の素晴らしさ・今の日本の素晴らしさについてお話され、それを次世代にも引き継いでいってほしいとおっしゃっていた。

🏣学生からの感想🌙

「鶏卵流通業界はナベルとオランダのモバという会社の二強状態で、グローバル化は必須とのことでした。グローバル化と聞くと英語が話せるかどうかを連想しがちですが、ビジネスをするにおいての方向性や戦略を日本語でしっかりと考える事の方が大切だと述べておられました。こと大学において身に付けるべき事は新聞記事やニュースを鵜呑みにせず真実に肉薄する力だと気付かされました。」(法学部法政策学科4年次生)

京都という地をよくしたいという思いから社会貢献や地域の方々と密に関わりを持っておられる地域に愛される企業だから、国際化の波にのまれようとも存続し続けられるのではないかなと思います。他の会社にも同じような商品があるけどどちらかを選ばなくてはいけないとき、その会社の人間性であったり信用性が最も大切なのではないかなと思います。」(法学部法政策学科3年次生)

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吉田光一よしだ こういち 氏(株式会社フラットエージェンシー 代表取締役)

🏣学生からの感想🌙

「吉田氏は事業の根本動機を「社会の役に立ちたい」という思いだと述べられたが、私が今回の講義を受けて素晴らしいと感じたのは、氏はそれをビジネスとして成り立たせようとしている点である。ボランティアとしてではなくビジネスとすることの重要性は、その事業が一回限りや短期に終わってしまうのではなく継続させてゆくことに繋がるためである。また私は氏の「積極性」にも衝撃を受けた。自分から積極的に「やらせてください」と言う姿勢を私もこれから見習っていきたい。」(法学部法律学科4年次生)

「吉田氏は「ビジネスはアイデアじゃない」、「政策とお客さんがビジネスのカギ」、「勉強すれば先が読めるようになる」と仰っていた。私の理解が正しければ、アイデアと世間一般に言われているものは知識が生み出しているもので、知っている者にとってはひらめきの要素はないという事ではないかと思う。そして、勉強すればするほど顧客ニーズや経営知識も蓄えられるようになり、選択肢がかなり狭まる。勉強したからと言って成功する保証はないが、勉強しなければ成功はないという事だけは言えると思う。」(法学部法政策学科4年次生)

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舩橋晴雄ふなばし はるお 氏(シリウスインスティテュート株式会社 代表取締役)

🏣学生からの感想🌙

「舩橋氏の講義の中で感じたことは、仕事がお金儲けの為だけになっていては、決して成功しないということである。勿論、株式会社において、利益を求めることは大前提である。しかし、その考え方で経営を続けても続かないということを実感した。自分の中でしっかりとしたぶれない軸を持ち、目標を高く設定し、努力する。また、その軸も自分の事だけではなく、他人との関係性をベースに築くことで、この人なら仕事を任せても良いと思ってもらえる人になる。これを自然に実践できる人が信頼を築き、仕事において、良い結果を残せるのだと思う。この「信頼を築く」ことこそが、仕事の本質だと考える。」(経営学部会計ファイナンス学科4年次生)

「本講義では、「人」「日本人」をキーワードとして進められた。現在の就職活動を見ると、どうしても仕事の表面的な内容(HPや企業説明会でしか知ることのできない)だけを取り上げて考えがちな印象を受ける。人という観点から仕事を考えると、自分がその仕事を通じて、なにを社会に対して行えるかではないかと本講義を受けて考える。では、私の仕事観はなにか。自分が社会に対して働きかけたいことを仕事として行えるものであり、自分がしたいことをではなく、社会に求められることでなければならない。必ずしも楽しいものでなくとも、気づいたら情熱を注いでしまうほど、価値のある誇りあるものであり、そうしていくことが仕事であると考える。(法学部法律学科4年次生)

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2014年度

2014年度 講義をしていただいた講師のみなさま

上田 真理うえだ まり 氏(株式会社最上インクス 企画経営グループ)

日本が誇る最先端技術のお話から、技術職という立場から語られた「働く」ということへの向き合い方や意義についてまで、幅広く講義していただいた。

🏣学生からの感想🌙

「お話に心を打たれ、本当に感銘を受けるものであった。働く上で何を目的とするのか、何を目指して日々努力するのか、何をやりがいと位置づけ意識するのか等といった、人が仕事をする理由生きる理由といった大きなテーマが強く印象に残った。私自身の将来を考える上で、また、今後の生き方に大きな影響を受け刺激となりました。」(法学部3年次)

働くことの意義を、目に見えない報酬である仕事・能力・人間的成長に注目され、積極的に見出される熱意の大きさに感銘を受けた。」(法学部4年次)

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東 宗謙ひがし むねのり 氏(株式会社太鼓センター 代表取締役)

世界も認める日本の打楽器「和太鼓」でビジネスを行う立場から、和太鼓との出会い、太鼓教室から「和太鼓療法」ビジネスに至るまでの紆余曲折、和太鼓の効果など、今までの歩みを振り返る形で実体験をお話しいただいた。その中でも、学生に向けて「好きなことを仕事にする」ということの誇りや喜び、またそれ故の困難なども含めて語っていただいた。

🏣学生からの感想🌙

「好きなことをビジネスにするには勇気がいるが、一歩踏み出せばいろいろな発見がありアイデアが出てきたりする。それをうまく仕事に結び付けて新たな市場を開拓できればビジネスは成功する。東さんが音楽の感動をみんなで味わってもらいたいのが根底にあり、モチベーションになっているように、なにをするにしてもなぜやりたいのかを明確にして持っておかないといけないことが改めてわかりました。」(経済学部3年次)

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柏木 裕之かしわぎ ひろゆき 氏(株式会社ワコールキャリアサービス 代表取締役社長)

母体である『ワコール』がどのような企業であるかをご説明頂くとともに、創設者である塚本幸一氏がなぜ人の役に立つための会社を興したのかを、企業にとって大切な柱である理念から深くお話しいただいた。
また、ワークショップでは、受講生に『起業したならば、どのような理念を掲げるか』というテーマにも挑戦してもらった。

🏣学生からの感想🌙

「何の企業が自分に合っているか、どんな企業なら合わせていけるかという受け身な考え方をしていた。そうではなく自分は何をしたいか、どんな人になっていたいか、自身の軸をはっきりさせていくことで今後の進路選択を考えていこうと思う」(法学部4年次)

人材派遣のイメージが変わりました。人材育成を大切にしていることや派遣事業を通して人と会社を繋ぐこと、派遣後の正規雇用までをも事業の理想としていることを聞き、派遣事業の見えなかった一面を知ることができました」(経済学部3年次)

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2015年度

児嶋 一登こじま かずと 氏(株式会社京写 代表取締役社長)

代表的な京都の伝統産業の1つ、京友禅を出発点とする同社の概要説明、会社運営とは何かという実務的なことから、仕事観、人生観、新入社員に求める心構えまで、自身の経験や信念を交えてお話された。また、中期経営計画についてもお話頂き、学生は実務の世界について知ることができたと思う。人材育成の大切さ、挑戦すること、挑戦しやすい雰囲気を作ることの大切さを改めて感じることのできた講義だった。

🎤学生から出た質問

「海外進出時の苦労はどういったものがあるか、様々な国がある中でなぜ香港を選んだのか」
「会社の運営は社長のワンマンか、それとも分担しているのか」
「挑戦する企業とはどういった具体的にどう挑戦していくのか」など

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坂本 勉さかもと つとむ 氏(株式会社洛北義肢 会長)

自身の人生や企業に至った経緯、人との出会いや「愛」の大切さ等についてお話頂いた。また、持参された義肢、装具についても説明していただいた。
ワークショップでは、「愛とは何か」「仕事に責任を持つとはどういうことか」について話し合った。特に愛については、学生それぞれの熱い考えが提示された。
講義全体を通して、聞いていて胸の熱くなる内容であり、学生たちにとって「愛」「仕事における責任」について深く考えるいい機会となった。

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2016年度

北尾 哲郎きたお てつろう 氏(日東薬品工業株式会社  代表取締役社長)

日本で前例のない新たな商品を絶えず開発・輸入している日東薬品工業についての説明や、販売商品を実際に手に取りながらその説明や特色についてのお話をいただいた。また、若手社員の方にもお越しいただき「仕事」についてお話頂いた。

その後、「薬にあともう少しあったらいいなという工夫を考えてほしい」というテーマでワークショップが行われた。
🎤ワークショップで学生から出た意見
「安心して買えるように成分表示などをわかりやすくする
「マイナスなイメージや堅いイメージが薬にはあるから、もっと気軽なものにして、味付けも工夫するのがいいと思う」など

京都企業の素晴らしさや、年齢の近い若手社員に触れることのできる授業だった。

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山口 智啓 やまぐち としひろ 氏(全日本空輸株式会社  京都支店 支店長)

航空業界の今と、全日本空輸株式会社の歴史についてお話頂いたあと、LCCや観光産業についてもお話していただいた。質疑応答の時間では、学生から、「チケットレスで飛行機に乗ることはできないのか」、「リニア等が発達した場合、飛行機は存続できるのか」等の質問が出された。
その後のワークショップでは、「20代の若者を旅行させるにはどうすればよいか」をテーマに行い、それぞれが若者らしいユニークなアイデアを出していた。日頃触れ合うことが少ない航空業界について詳しく知ることができる機会だった。

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片岡 宏二かたおか こうじ 氏(株式会社片岡製作所  代表取締役社長)

レーザー加工をメインに太陽電池製造装置、リチウムイオン電池などの検査装置を国内外で製造され、多くの分野でシェアを取るニッチトップ企業である片岡製作所の片岡社長からお話頂いた。
中でも、「競合他社が大手でも、そのディビジョンと戦うのだから負けることはない、これが中堅企業が大手に勝てる理屈だ」というご説明は、目から鱗の内容だった。
23歳で会社を立ち上げられ、一代で海外展開まで進出する企業を築かれた軌跡、そして社長の見ておられる世界や社会と向き合う姿勢など、お話の中から多くのことを学ばせていただいた。また、経営者となった時のお気持ちなども聞かせていただいた。
講義全体を通して日本の技術力、京都企業の魂をあらためて感じることができた。

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榊田隆之さかきだ たかゆき 氏(京都信用金庫専務理事・グローカル人材開発センター代表理事)

「これからの企業のあり方と求められる人材」

クリッカーを導入しインタラクティブな進行で「10代のホチキス事件、20代ココナッツ事件、ワールドリンク創設」など、真剣かつユーモアを交えて榊田代表のターニングポイントや、一番大切な勲章について臨場感あふれるトークで、榊田代表の人生を学生とともに追体験させていただいた。
そして京都ならではの地域性やイノベーションが起こるために大切な要素に加え、「人・風土・理念」「知識・完成・フットワーク(アクション)」という良い企業の指標や学生に必要な要素・メッセージもいただき、本当に目を開かれる思いだった。

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2017年度

川口 聡太かわぐち そうた 氏(BRIDGEコーポレーション 社長)

学生とお話しされている様子🎇

「根拠のない自信をもって、どんどん挑戦してください」

人生における様々な局面でのご自身の葛藤苦労を惜しみなくお話しいただきました。ご苦労をされたからこそ、「安心できる会社を作りたかった。」という今の会社への思いもお話しいただき、現状の評価軸を、発揮した業績(成果)において評価しておられるなどご紹介もいただきました。

📮学生へのメッセージ
「ここなら、誰も負けないという領域を!セグメントを考える」
「小さくてもOK。ビジネスをつくれるような会社にしておく。」
「どこではたらくかはもちろん、どんな人が上司になるのかは重要。」

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大垣 守可おおがき もりよし 氏(大垣書店

学生の様子📝

「5W1Hで”働く”を考える」

ビデオレターで「5W1Hで”働く”を考える」という課題を頂き、学生が”働く”ということを具体的にじっくり考える場となった。5W1Hという要素に分解して、考えることで「真剣に考えたの初めて!」という声もあり、学生たちのもつ”働く”イメージや意識が明確になったのではないか。

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小口 明彦おぐち あきひこ 氏(介護付有料老人ホーム京都ゆうゆうの里 施設長)

「日本から世界へ、介護モデルの展開」
介護業界のディープな現状、日本の未来、今後のビジネス展開まで我々若者世代が考えるべき重要なお話をしていただいた。お話の中で、人口減少医療・介護人員不足など日本の抱える深刻な問題について「現場の声」でお聞かせいただき、学生たちも終始真剣な表情で授業に臨んでいた。
小口施設長は高齢化先進国であること”悲観的”ではなくむしろ”ポジティブ”にとらえておられたことが特に印象的だった。

日本の最先端の介護モデルを世界に輸出することができれば、世界の問題解決につながり、ビジネスとしても、再び日本が世界のトップを走る時代が来る、そんな期待を持つことができました。
そして、この講義により、学生たちの医療・介護業界への認識がポジティブなものへとシフトし、新たな問題意識が生まれたきっかけとなったのではないでしょうか。

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植木 修康うえき やすのぶ 氏(日本銀行京都支店 支店長) 

「仕事とは誰かの人生の一部を引き受けること」

 東大法学部卒業後に日銀に就職され、数々の出向を経て、2016年度末から日銀京都支店の支店長に就任。
 経歴だけを聞くときっと「お堅い」超エリートな方なのだろうと極ありきたりの私の予想は見事に裏切られた。
 弁舌爽やかなそのお話は専門用語が濫用されることもなく、金融に関する知識の乏しい私や学生にも理解できる明瞭なもので、受講生全員が引き込まれているのが肌で感じられるほどだった。
 結果、学生側が触発されたのかフィンテックや小規模銀行の統合、潜在成長率等に関わる質の高い質問が飛び交い、それに対する植木さんの回答もこれまた的確で感動すら覚えるあっという間の2時間。

特に印象的だったのが「植木さんのOptimistiⅽさ」です。
1世紀単位の物差しで経済の先を見据えながら、人間の問題が生じれば改善に向かおうとする性質を、闇雲ではなく客観的な数字や事実を通して信じていらっしゃいました。
日銀というトップの金融機関に勤められている植木さんにそんな姿勢を見ることで、生まれた時から経済不振が叫ばれる世代に生きる学生は初めて希望を感じ取ることができたのではないでしょうか。

グローカルstaff Hila

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次回、後編では2018年度から2023年度の講義の様子をお届けします!
お楽しみに!

グローカルセンターインターン 伊原 実咲


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