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グローバルヘルス業界でのキャリアの話

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なんだかんだキャリア形成に関する記事が増えてしまったので、まとめることにしました。
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#キャリア

JPO派遣制度への応募を検討している若者への、たった1つのアドバイス

先日、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー (Junior Professional Officer; JPO) 制度への出願についてXで何気なく呟いたところ、普段よりもエンゲージメント⬆️だった。やはりキャリア系の投稿は需要があるんだなぁ… 私が外務省のJPO派遣制度に応募したのは5年以上前なので、試験の詳細は忘れており、試験対策等で気の利いたアドバイスをすることは難しい。じゃあ今更JPO受験に関する記事なんか書くなよ!と怒られそうだが、本稿ではJPO合格にも直結し、

保健システムのbuilding blocks別、アーリーキャリアの構築法

グローバルヘルス業界のキャリア形成に関する記事はいくつか執筆しており、とりわけ保健システム強化の分野を専門性を確立したければ、まずは6つのbuilding blocksの中から1つを選択すべし!と以前指摘した。 とは言え、building blocksの1つを選んでも、更にその下に小分野がいくつか存在し、その細かい小分野毎に求められるqualificationが異なる。グローバルヘルス業界は他の業界よりも専門性がより細分化している。その求められるqualificationを

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「向こう5~10年で獲得したいスキル」を振り返る

WHOに入職する前に、こんな将来こんなスキルを獲得したい的なことをブレストして記事にまとめたことがある。 久しぶりに思い出したので、当時の考えが妥当だったのか否か、5年越しに振り返ってみたい。また当時見落としていたが重要なスキルについても検討してみた。 取り上げたスキル語学(特に英語以外の国連公用語) 過去5年間ほとんど勉強しなかった。JPO2年目にWPRO管内に異動してしまったので、英語以外の国連公用語を学ぶインセンティブが失われてしまったのだ。また専門知識を増やすこ

国際機関における専門性の構築:直線的が良い?回り道が良い?

ツイッターでたまたま↓のような興味深い投稿を見つけたので、本稿でも少し考察してみたい。 要は専門性を構築するプロセスとして、特定領域で直線的に積み上げるパターン(左側)と、周辺領域も含めて多様な経験をする中で積み上がっていくパターン(右側)の2つがある、という話である。実際には右側のパターンが多いよね、というツイ主の意見には同意できる。そんな私も右側のパターンである。 一方でWHOには(他の国際機関は知らないが)左側のパターンの職員も、それなりにいる。例えば、WHO本部で

グローバルヘルス業界でサバイブするためにPhDを取得するべきか?

私もまだ若手であるつもりなのだが、グローバルヘルスを志す、特にWHO等の国際機関で働きたい若者からアドバイスを請われる機会がある。頂戴する質問の中で頻出なものの1つが「PhDは必要なのか?もし必要であるなら、いつ、どこで、何を取得するべきか」である。僕も悩んでいたので気持ちはよく分かる。そして僕が選択した道が正しい保証は全くない。ただ昔よりは語れることがそれなりに増えてきたので、現時点でも自分の考えをまとめておこうと思う。 もちろん大前提として、PhDがないよりある方が良い

グローバルヘルスで専門分野ってどう決めるの?

3月は日本が春休みだからなのか、グローバルヘルスに関心がありジュネーブを訪問しに来た大学生・若者と話をする機会が多かった。現役WHO職員との懇談の場がセッティングされ、彼らのキャリア形成に関する悩み相談を聞くことになる。そこで気づいたのだが、彼らの、特に大学生の悩みの8割は「専門分野として何を選んだらよいか分からない」なのだ。まぁ確かに難しい。私自身も30半ばで、ようやく専門としたい分野がクリアになった。私が大学生の頃を振り返ると、キャリア構築に対する考えがいかに浅かったか(

世界保健機関(WHO)の保健システム分野における求人情報の記述統計的分析

私自身がJPOとして国際機関で生き残らなければならない立場であることを踏まえ、WHOの、特に私の関心領域である保健システム分野の求人情報を分析してみた。残念ながら商業誌に投稿する程のものではないのだが、将来はWHOで仕事がしたい!という方には有益な内容であり、本noteにひっそり公開することにした。 公開から年数が経ち多少データが古くなっている点は否めないが、採用に関して同様の傾向は今でも続いている。有料記事ではあるが、ぜひお手に取って頂けると幸いである。 追記:記事投稿

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地域医療を経験することは国際保健の仕事をするにあたって役立つのか?

日本国内で域医療に従事することと国際保健は、しばしば抱き合わせで語られる。国際保健をやりたいのであれば日本国内の生活困窮者やへき地にも目を向けるべきだ、という議論も耳にする。確かにそうだと同意する一方で、それって僻地の労働力確保のためのお題目なんじゃないの?という反論も聞こえる。こうした議論の背景には、地域医療の経験がどう国際保健に役立つのか、具体的に語られたことが少なかったという問題があると思う。その両方を経験した身として、私見ではあるがメリット・デメリットについて考察した

ジェネラリズムを再考する

過去5年間僕は家庭医の研修をしてきて、当然ジェネラリストを目指してきた。ジェネラルマインドは良いことだと考えていた。ただ最近、そうした価値観を変えなければいけないのかなと思うようになってきた。 なぜなら仕事がないからだ。例えば国際機関の求人には「◯◯の学位やスキルを持っている」「〇〇の分野で△△年以上の経験がある」「〇〇語が読み書きできる」と明確に書いてある。インタビューでも「◯◯をやってほしい」と明確に言われ、過去の経験や興味が合致しないと雇ってもらえない。求人が専門ごと