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【地球列車旅第1章】ユーラシア大陸横断鉄道の旅 #3 万里の長城

3日目 北京

 今日も一日北京を観光するが、まず目指すのは中国最大の観光地・万里の長城である。
 北京の近くで万里の長城を観光できる主要な場所はいくつかあり、ほとんどが市内からバスなどで簡単に行くことができる。
 しかしせっかくなら列車に乗りたいので、地図を見比べていろいろと検討した結果、北京から約70kmほど離れた懐柔という街にある「慕田峪長城」と言う場所へ行くことにした。

 早起きして7時過ぎに北京駅に向かう。
 朝の北京駅は、各地から到着した夜行列車から降りてきた乗客たちで非常に賑わっている。
 荷物検査を通って駅構内に入ると、天井は広い吹き抜けになっていて、大きな発車標が様々な行先を示している。北京には、「北京駅」「北京西駅」「北京南駅」などターミナル駅が複数あり、この北京駅は主に瀋陽やハルビンなど東北部へ向かう列車が発着している。
 僕が乗るのは7時56分発の承徳行きの快速列車で、「2階第7待合室」で待てと書かれている。指示されたとおりにエスカレーターで2回に上ると、思いのほか店が充実しており、スターバックスやマクドナルドまである。

北京駅の巨大な駅舎が朝日に照らされる
北京駅を発車する列車がずらりと電光掲示板に並ぶ

 7時30分、改札が始まりホームへ降りる。5番線に停まっている承徳行きの快速列車は、二階建ての客車をつないでおり、乗り込む人たちの荷物はそこまで多くない。
 この列車の終点承徳は、北京の避暑地として名高いところで、どうやらこの列車に乗り込む乗客たちは、休日を承徳で過ごそうとする北京市民らしい。走行距離が短いので寝台車もつないでおらず、座席定員が多い二階建て客車を連結しているようだ。
 指定された「9号車55番」に乗り込み、乗り合わせた人たちの荷物を棚に上げるのを手伝ってたりしていると、列車は静かに走り始めた。

図体の大きな中国の二階建ての列車

 北京駅を発車した列車は、家々や道路に囲まれた北京市内をゆっくりと走り、針路を北に変えた。少し郊外に出ると次第に空き地や建設中のマンションが目立ち始める。
 しかしわずか70kmの道のりなので、ゆっくりと走る列車に揺られるのは1時間ほどで終わり、9時04分、定刻通り懐柔駅に到着した。

のどかな懐柔駅へ到着

 懐柔駅はホームに大きな木が立つのどかな駅で、地元の人とスーツケースを持った旅行者が十数人下車した。
 ここからバスで慕田峪長城を目指す。スマホでバスを調べると、駅前からまず市街地へ向かい、そこで乗り換えると長城へ行けると書いてある。
 駅前のバスターミナルでICカードを買い、市街地へ向かう。バスの運賃はわずか2元(≒32円)で格安だ。

 市街地のバス停で長城行のバスを待っていると、突然大きな爆発音がする。何事かと身構えあたりを見渡すと、目の前の道路を走行していたトラックがやや傾きながら停車した。どうやらタイヤがパンクしたらしい。走行中にタイヤがパンクするトラックなど日本では見たことがないが、中国は車検がいい加減なのだろうか。

 市街地を抜けたバスは次第に山の中へ入っていき、1時間足らずで慕田峪長城に到着した。
 慕田峪長城はれっきとした観光地で、立派なビジターセンターの建物が建ち、飲食店も多い。
 ここでチケットを買うと、しばらく進んだ先にリフト乗り場がある。山の上にある万里の長城へ向かうにはリフトで上るらしい。

結構高さがあり、なかなか怖い

 今日は晴れて陽射しが強くなかなか暑いが、緑豊かな森の上を進むリフトに乗ると、時おり風が吹き抜けて心地よい。次第に高度が上がっていくと、左の山のほうへ延々と続く長城が見えてきた。

だんだん見えてきた万里の長城

 万里の長城は、秦の始皇帝が北方民族の侵入を防ぐために建設を始めた長大な壁で、現存する大半の部分は明代に築かれ全長6,000キロに及ぶという。ここから見えるのはそのうちのごくわずかな区間だが、遠くの山まで延々と続く光景は圧巻だ。
 慕田峪長城のように観光地化されたところは長城の上を歩くことができるため、国内外からやってきた観光客が思い思いに歩いている。僕も一番近い山の上までは行ってみようと思い何十段もの階段を上っていく。重機もない時代にこんな高い山の上にこんな立派な壁を築くなんて、昔の人は屈強なもんだと思う。しかし、21世紀の恵まれた時代に生きる貧弱な僕は、30度の暑さにたちまちやられ、日陰で休みながら歩いていく。

はるか向こうの山まで長城は延びていく
階段と坂が続き、結構大変

 1時間ほど長城を歩きまわって堪能したところで、下山することにする。下山の際はリフトではなく、そりに乗ってすべり台を下る。日本の夏のスキー場などでもたまに見かける代物だが、ここのすべり台は全長1,600mもあり、5分間も下り続けるからなかなか乗りごたえがある。
 童心に帰った思いで楽しみ、麓に着く。懐柔の街にいても特に見るものはないので、軽く昼食を済ませた後、北京市内へ戻る。

すべり台で一気に麓へ

 帰りも懐柔駅から列車に乗っても良かったのだが、本数が少ない路線で夕方まで列車はない。そこで帰りはバスと地下鉄を乗り継いで戻ることにした。もっとも、一般的な慕田峪長城観光客はこのルートを使うらしく、本数の少ない国鉄を使う人はあまりいないらしいが。

 時刻は15時。思っていたより早く市内に戻ってこれたので、どこか見物しようかと思い、天壇という公園に向かった。
 天壇は、歴代の皇帝が天に祈りを捧げた聖なる場所だが、現代では北京市民の憩いの場となっていて、暇を持て余す老人たちやベビーカーを押す家族連れ、旗を持ったガイドに引率される観光客など、様々な人が思い思いに過ごしている。
 2時間ばかり公園で時間をつぶし、この日の夕飯は北京名物の羊肉のしゃぶしゃぶを食べた。

この日は朝から晩まで良い天気だった
北京には「1人しゃぶしゃぶ」を楽しめる店が結構ある

○3日目 2018/8/31 北京→懐柔 68km
北京7:56【K7711快速承徳行き】懐柔9:04


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