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グローバル商品開発の基本②「世界の食品ルールを知る:CodexとGFSI」

~食品グローバル開発に関係するCodexとGFSI~

食品を世界で売ろうと考えるとCodexと食品安全の第三者認証のグローバルスタンダード(GFSI-Global Food Safety Initiative-による食品安全第三者認証スキーム)について基本的なことを知っておく必要があります。

Codexと食品安全第三者認証のグローバルスタンダード、今回はこの2点について説明します。

食品を世界で売っていくには、世界の食品のルールを知っておく必要があります。それがCodex(コーデックスと読みます)です。Codexは「コーデックス規格」とも言われ、世界で唯一通用する食品規格です。

1962年、国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で、国際的な食品規格をつくることが決まりました。そして誕生したのがCodexです。正式にはコーデックス・アリメンタリウス(Codex Alimentarius)というラテン語からきた言葉で、食品規格という意味を持ちます。現在、世界的に通用する食品規格はこの規格だけで、これを普通「コーデックス規格」と言います。

『グローバル商品開発の基本』編やその後の実務編には、Codexという言葉が何度も出てきます。例えば、日本は日本の行政が認めた食品添加物を使用しており、各国はその国が認めた食品添加物を使用しています。

モノ作り国家である日本は、世界でも突出して食品添加物を828も認めています。日本以外の世界の主要18ヵ国と地域の平均が307なので、いかに日本が認めた食品添加物が多いかが分かります。ということは、日本で普通に食品を作ったら世界で認められていない食品添加物を使った加工食品が出来上がることは簡単にご理解いただけると思います。その国毎に認められている食品添加物は異なるのです。

世界で広く売るには、世界で広く認められている食品添加物を使用すれば良い訳ですが、日本だけで認められている食品添加物をどうやって世界でも認められるようにすることができるのでしょうか?

そんな世界レベルでの食品のルールを作り、その組織を管理運営しているところが、Codex委員会(国際食品規格委員会)という組織です。(Codex委員会について詳しく知りたい方は、こちらから)英語では、CAC(Codex Alimentarius Commission)と呼ばれていて世界185ヵ国及びEUが加盟しています。

Codexの目的は2つあって「国際的な食品基準を定めることで消費者の健康を守ること」と、「基準の共通化により貿易の公正さを図ること」です。事務局はイタリアのローマのFAO本部内に設置されています。総会と執行委員会と事務局の下に、4つの部会が置かれています。詳しくCodex委員会を知りたいかたは、リンクを貼っておきますので確認ください。その4つの部会の1つに「一般問題部会」があり、その中の1つに「食品添加物部会(CCFA)」があります。CCFAはCodex Committee on Food Additives の略で、食品添加物の議論はそこでされています。

食品添加物を簡単に世界中に認めれもらうのは非常に困難なので、世界で広く認められている食品添加物で商品開発をすれば手っと早く世界中に売れる商品が作れます。その情報は、商品開発編でもご案内しますが、こちらを参考にしてください(食品添加物海外対応ガイドライン)。


次に食品安全の第三者認証のグローバルスタンダードについて説明します。ISO22000は食品安全のグローバルスタンダードではありません。それは、GFSIが承認していないからです。ISOが国際的なスタンダードだという人が多くて、その通りなのですが、食品安全の第三者認証の世界では全く異なります。その食品メーカーも小売りも飲食チェーンもISO22000を採用していないのです。

GFSIとは、世界中の民間企業が集まり、食品安全の第三者認証のグローバルスタンダードを作ろうという組織です。ウォルマートやカルフルール、日本ではイオンや生協などの小売業、ネスレやダノン、味の素や伊藤園などの食品メーカー、スタバやマクドナルドやケンタッキーなどの飲食チェーンが集まり、食品安全の第三者認証のグローバルスタンダードを作り、関係者で共有するという活動をしています。

私は、2005年に日本初・アジア初のGFSI技術委員となり、パリの本部に何度も会議に行っていました。日本人は、もちろん私1人だけで、アジアからも私1人でした。会議では、『中国・ロシア・インド・日本』という食品安全の新興国をどうやって取り込んで、GFSIの活動を世界に広めていくかという話と、食品安全第三者認証のベンチマーク作業が行われていました。(GFSIについて詳しく知りたい方はこちらから

当時、日本の食品安全第三者認証のレベルは完全に新興国の扱いでした。アジアからはそういう国際会議に出る人は誰もいないので、孤軍奮闘状態でした。そこから味の素さん・花王さん・伊藤園さんなどを引きずり込み、イオンのジェンク・グロルさんを理事になってもらい、ついには理事長までなってもらい、日本は食品安全の第三者認証の新興国ではなくなりました。

私がGFSIの技術委員をしているときに、中国の毒餃子事件が起こりました。GFSIのメンバーは、欧米は関係ないという考えを持っていました。その理由は、その毒餃子事件を起こした工場はISO22000を取得していましたが、GFSIが認める食品安全の第三者認証を取得していなかったからです。日本では大騒ぎでしたが、彼らは、極東のほうで食品安全第三者認証のグローバルスタンダードを取得していない工場がまた食品事故を起こした・・・という程度の認識でした。

ISOの認証の問題は、ある意味民主主義国家でなければ、国の意向に逆らうことができず、国の要請があればどんなレベルの工場であれ認証されてしまう、という問題があり、食品安全の分野でそのようなばらつきがあるISO22000をグローバルスタンダードにすることはできないというのが当時の世界の食品メーカー・飲食チェーン・小売業のコンセンサスでした。そして真の食品安全の第三者認証グローバルスタンダードを作ろうとしたのでGFSIです。

その活動が今や非常に大きくなりました。今や安倍晋三首相がメッセージを出されるようなくらい日本でも活動が盛んな状態ですが、日本人では私1人が活動していた2005年くらいとは、活動は大きく様変わりました。(阿部首相のメッセージはこちらから

GFSIが認めている食品安全の第三者認証は、日本ではポピュラーなFSSC22000や、BRC・ISF・SQFやGlobal GAPなどがあります。スキームオーナーが独立していて、認定機関(Accreditation Body)を兼務して、認証機関(Certification Body)を認定し、監査員のレベルを一定に保つ・・・という仕組み(要求事項)を作って、食品安全の第三者認証のスキーム自体を審査・認定しているのがGFSIです。当時、その活動の仕組みを作る作業をしていました。

日本で有名な、FSSC22000はISO22000にPAS220という英国規格協会の作ったOPRPがプラスされた食品安全の第三者認証スキームですが、このPAS220には私の意見がかなり反映されています。英国の規格制定に関わったという感じです。というかそれが技術委員で一番やった仕事のような気がします。

食品安全の第三者認証のグローバルスタンダードがなぜ、必要なのか・・・それは、食品工場は、OEM先の食品メーカーや、小売業や、飲食チェーンが工場にそれぞれやってきて、みんな同じような調査をしていることが、耐えられなくなったからです。年に100回以上も、偉そうな食品安全の担当者が工場にやってきて、同じような監査をするは、もうやめよう・・・というのがGFSIの考えです。実際、いい迷惑ですよね。食品工場からすると・・・色々言い放題言って帰る・・・それに従っても、クレームが減る訳でも不良品が減る訳でもないのです。クレームや不良品を減らす品質管理上のアドバイスは歓迎されますが、手を洗う方法や施設(ハード)の改善や、髪の毛の混入リスクの削減をみんな言って帰ります。農水省管轄の食品安全の専門家は、経産省管轄の品質管理のことを全く学んでいない人が多く、閉口します。工場監査に来るご本人に自覚がないので・・・

話す言葉を聞いていると、その人は食品安全のプロなのか、品質管理のプロなのか、両方分かっている人なのか分かります。食品安全のプロの国から出る言葉は、『食中毒・HACCP・ハザード・異物混入・リスク』といような言葉です。品質管理のプロから出る言葉は『4M・工程・ばらつき・標準偏差・検査・n』などの言葉です。話す言葉が全く違います。全然違うので注意して観察されると、食品業界では品質管理担当という名刺を持っている人が、実は品質管理の仕事をしていなくて食品安全の仕事しか経験していないことが多いです。

話を戻します。2019年には、日本発の食品安全のグローバルスタンダードが誕生しました。JFSMです。その背景も説明しておきます。それは、リオデジャネイロオリンピックです。2016年のリオ五輪で、選手村で提供される食材は、全て食品安全のグローバルスタンダードを取得した食材で提供されました。

そして、2020年の東京オリンピックは?となって、当然、同様な対応が決定されました。ところが大きな問題があって、それは日本で食品安全のグローバルスタンダードが普及していなかったため、東京オリンピックの選手村の食材がほとんど輸入食品になってしまう・・・という話になってしまったのです。それはまずい・・・ということになり、日本発の食品安全第三者認証のグローバルスタンダードが必要だという話なり、そしてスキームが誕生しました。

現在GFSIは12のスキームを認めていて、日本から2つ採用されています。(GFSIが認めている食品安全の第三者認証グローバルスタンダードについてはこちらから

GFSIが認めた食品安全第三者認証グローバルスタンダードを持っているということは、大手企業は工場を審査しないということです。それが食品メーカー側にとっての取得最大のメリットです。OEMをする食品メーカーや飲食チェーンや小売業からすると、いちいち見に行かなくて良くて、一定レベル以上の食品安全が担保されることが、現地に行かなくても分かるのがメリットです。

日本の食品安全第三者認証はもう完全に世界に追いつきました。2005年には、誰一人参加していなかったのですが、日本は既に食品安全第三者認証の後進国ではなくなりました。

詳しくは「食品輸出の学校」で解説しています。ぜひご確認ください。

「食品輸出 実務と実践塾Eラーニング」2021年10月食品新聞社様で開講予定です。

図8

株式会社グローバルセールス 代表取締役 山崎次郎
食品輸出の学校 学校長

GFSI元技術委員(アジア第1号・日本第1号)

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