グローバルM&Aはなぜ必要?どの位成功率するの?

日本の人口は、現在1億2,600万人。2030年には1億1,800万人になり、単純計算すると内需は7%近く縮小すると予想されます。

中国やインドなどの新興大国が急成長しており、特に、中国は、近年、携帯電話やIoTで中国がグローバル市場をリードするまでになりました。日本がグローバル市場でシェアを持っているハイテク市場も、中国等の台頭により、 2030年までには日本のシェアが下がっていくことでしょう。

他方、新規事業により、新しい時代に合った売上を作ることも大きなリスクがあります。

テクノロジーによる変化が、中国と米国を中心に急速に進んでいる中、グローバルでシェアを取るのは今まで以上に厳しくなっています。

もし、5年や10年、大きな投資をして新規事業がうまくいかず、既存の事業の売上が落ちてきた場合、会社にとって存続を脅かすほどのリスクとなります。

国内に良い買収ターゲットがあればいいですが、ない場合には海外企業を買収することが、2030年以降の状況を考えると、 待ったなしの状況になりつつあります。

一体、グローバルM&Aはどの位あるのか、経済産業省が2018年3月に調査した「我が国企業による海外M&A研究会」報告書を参考に、見てみましょう。

日本から海外企業を買収するIn→Outの買収は、ここ5年で年間499件から672件に増加しています。

金額としては、大型案件もありますので、年間5~11兆円となっています。エリアとしては、件数ベースで見ると、北米とアジアで7割位を占めています。


この金額は、対名目GNI(国民総所得)比で見ると、1.9%となり英国の3.3%に次ぐ高い数字になっています。

欧州各国は、英国、フランス、ドイツが2007年に約4%と、積極的にクロスボーダーM&Aを行うことで、市場拡大を図ってきたのがわかります。

一方、米国はIn-Inの国内M&Aが4.3%で、In-Outは1.2%しかありません。米国は、自国のM&Aだけでも、優良企業があり市場拡大できていることを示しています。

米国以外の国ではやはりクロスボーダーM&Aが成長には重要ということですね。

グローバルM&Aの成功率は37%

では、いよいよその成功率を見てみます。デロイトの調べによると、海外M&Aの成功率は37%。失敗は21%ですが、残りも実際は失敗に近いと言えそうです。つまり、年間3-8兆円を失っている、というのが現状です。

図:海外M&Aの成功率

最後に、その要因も見てみましょう。

これもデロイトの調べですが、「ターゲット選定」や「条件交渉・クロージング」はうまくできた、とする企業は多いです。

ところが、PMI(経営統合)は11%しか「うまくできた」としていません。つまり、買収するまでは評価しても、買収した後はうまくできなかったということです。

しかし、発想の逆転で、PMIから逆算して買収を行えば成功率はもっと高まるという実はチャンスとも考えれます。

次回は、どうすればグローバルM&A(クロスボーダーM&A)が成功するのか、見ていきましょう。

Global PMI主宰:山並 憲司 | マッキンゼー&カンパニーで多数のM&Aに従事後、楽天で執行役員として楽天市場の成長に貢献。その後、米国の買収先に赴任し、PMI及び事業変革を担当。楽天USAに移り、戦略及びM&Aを担当し、買収により米国事業の黒字化を実現。シリコンバレーからM&Aのデューデリジェンス及びPMIを支援。経済産業省出身。M.I.T. Sloan School修士、Duke Law修士、東京大学工学修士、シリコンバレー在住。

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