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疫病の歴史

この記事では下記のことをまとめています。
1. 国際協力が実を結んだポリオ感染の減少
2. 気温の高い発展途上地域に多いマラリアってなに?
3. デング熱について知っておくべきことはなに?
4. エボラウイルスって何?
5. コレラに感染しないためにすべきことはなに?
6. なぜ日本はコロナワクチンの運用が遅かったの?

[国際協力が実を結んだポリオ感染の減少]

主な感染対象

Polio(ポリオ)を引き起こすウイルスは、5歳以下のこどもに主に感染し、神経システムを攻撃します。

主な感染経路

感染経路としては、感染した人の喉や腸に数週間残っているウイルスが、人から人へ、口や便を通じて感染していきます。

主な症状

70%の人は無症状、20%の人はインフルエンザのような症状を経験し、数日で自然回復することができます。しかし、少数の人は感染によって麻痺を引き起こし、これが一生続いてしまうんです。この一番深刻な症状が Polio(ポリオ)と呼ばれています。

主な予防法

Polio(ポリオ)になってしまうとその麻痺症状を軽減することしかできないのですが、Polio(ポリオ)の予防体制は国際協力によって大きな発展をしてきました。

the Global Polio Eradication Initiative という Polio(ポリオ)対策組織が 1988年に設立され、それ以来ワクチンの開発や予防法の浸透を通じて、今ではほとんどのPolio(ポリオ)感染の予防に成功しています。

参考: Centers for Disease Control and Prevention, World Health Organization
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[気温の高い発展途上地域に多いマラリアってなに?]

主な感染経路

マラリアに感染している人の血を吸ったAnopheles mosquitoという種の蚊が、寄生虫をほかの人の体内に運ぶことによってマラリアは広まっていきます。そのため、インフルエンザのように人と人との接触などでは感染しません。

主な症状

感染後は数週間から一年かけてインフルエンザと同様の症状を発症することが一般的なのですが、
マラリアの影響が少ない地域から来た旅行者や幼児、妊婦などはマラリアに対する免疫が弱いため、重症化しやすいんです。

主なマラリアの種類

マラリアの寄生虫には

1. Plasmodium falciparum (most dangerous)
2. Plasmodium vivax (relapsing)
3. Plasmodium ovale (relapsing)
4. Plasmodium malariae
5. Plasmodium knowlesi
などの種類があって、

Plasmodium knowlesi は動物から人へ感染することがあったり、

Relapsing となっている種は、感染後数年のあいだ体内に残り続け、無症状でも状態が悪化することがあります。

主な治療法

しかし、医療の発展のおかげでマラリアは基本的に薬の服用により治療可能です。

マラリアの寄生虫は複雑で変異を繰り返すのですが、最近では治療薬に加えて最も危険なPlasmodium falciparum に対応したワクチンも開発されています。2019年にはアフリカの数か国でワクチン接種が実施されています。

なんでマラリアは発展途上国に多いの?

こうした医療の発展があっても、
医療機関へのアクセスの欠如やマラリア対策プログラムを施行できない不安定な政治体制なども、発展途上国にマラリアが残り続ける理由の一つなんですね。

実際、ヨーロッパやアメリカ南部などではマラリアがかつて広がっていたのですが、医療インフラの向上によってマラリアを排除することができたんです。

マラリアの多い地域などでは、マラリアがインフルエンザのような感覚でとらえられていることもあり、生活が不便になるような防蚊対策は広まらないこともあります。

国家体制の発展状況、現地の生活感に加え、アフリカ大陸ではマラリアの寄生虫が治療薬への対抗を強めていたりするんですね。こうした理由からマラリアと人類の戦いは今だに続いているのです。

参考: Centers for Disease Control and Prevention, Healthline, World Health Organization
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[デング熱について知っておくべきことはなに?]

ちなみに日本語発音だとデングですが、英語だとデンギとかデンゲみたいな発音をします。

主な感染経路

Dengue fever(デング熱)もマラリアと同様に蚊を媒介とする感染症ですが、Aedes aegypti と Aedes albopictus といった黄熱病を引き起こす別の種の蚊によってウイルスは運ばれます。

主な症状

症状としては、Dengue fever(デング熱)に感染している蚊に刺されて数日後に、インフルエンザのような症状が一週間ほど続きます。
デング熱感染者の4人に1人くらいにこういった症状がみられるのですが、20人に1人くらいは症状が重症化することがあるんですね。

過去に一度 Dengue fever(デング熱)に感染したことがある人や幼児、妊婦は、内出血やショック症状などの重症に発展する可能性が高く、病院での治療が必要になります。

また、Dengue fever(デング熱)感染者は症状が出始めてから一週間ほどは、血液内にウイルスがいることがあるので、Dengue fever(デング熱)に感染している蚊を増やさないためにも、他の蚊に刺さされないことが大事になってきます。

主な処置

Dengue fever(デング熱)に対応しているワクチンも開発されているのですが、Dengue fever(デング熱)に特化した治療というのは特になく、症状の大きさに応じて医療機関と相談するというかたちがとられています。

参考: Centers for Disease Control and Prevention, Healthline, World Health Organization
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[エボラウイルスって何?]

エボラウイルスの歴史

Ebola Virus(エボラウイルス)は1976年に、コンゴ民主共和国に流れる the Ebola Riverという川の付近で発見され、起源は定かではないものの、動物から人間、人間から人間へとアフリカを中心に感染が広がっていったんです。

エボラウイルスの種類

Ebola Virus(エボラウイルス)には種類があって、

人へ感染する
1. Ebola virus or Zaire ebolavirus
2. Sudan virus
3. Taï Forest virus or Côte d’Ivoire ebolavirus
4. Bundibugyo virus   

人に感染しない
5. Reston virus

新しく発見されて不明な点が多い
6. Bombali virus

などが確認されています。

主な感染経路

Ebola Virus(エボラウイルス)に感染しているヒトや動物の体液や血に直接触れたり、服などの物体を介して体液や血に触れることでウイルスが体内に移動します。

主な治療法

Zaire ebolavirus が一番危険かつ一番多く確認されている種で、2019年の12月にアメリカでZaire ebolavirus の感染を予防するワクチンが承認されました。

主な症状

Ebola Virus(エボラウイルス)感染後、数日から最大21日までのあいだにインフルエンザと同じような症状がでるのですが、内出血を伴うこともあり、高い致死率であるために感染源に注意を払うことが大事になります。

参考: Centers for Desease control and prevention, Medical Centric
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[コレラに感染しないためにすべきことはなに?]

主な症状

Vibrio cholerae というバクテリアに感染することで Cholera(コレラ) という病気にかかってしまうのですが、10人に1人が深刻な症状にいたると言われています。

症状としては、激しい下痢と嘔吐によって脱水症状になってしまい、はやい段階での治療が必要になってきます。

主な治療法

それでも、多くの人が Cholera(コレラ) になっても無症状であったり、oral rehydration solution (ORS) という方法で水分や塩分をおぎなうことで、治療することができます。

主な感染経路

Cholera(コレラ) が広まってしまう原因としては、きれいな水へのアクセスと安全な下水施設が確立されていないことです。

症状がなくても Cholera(コレラ) に感染している人は感染力をもっていて、その人が用を足した時に含まれているバクテリアが川や水源に流れて汚染をおこし、その水を使用したり川の魚を生で食べることで感染が広がります。

ちなみに、Cholera(コレラ) に感染している人に直接触れたりすることで感染することはありません。

主な予防法

国家規模の予防法としては、国連の The Sustainable Development Goals にも含まれているように、きれいなの水へのアクセスを増やしたり、下水処理のインフラ整備などがあり、Cholera(コレラ) を予防するワクチンも開発されています。

しかし、このワクチンは感染を完全に防げるものではないので、個人の対策が一番効果的になってきます。

個人でできる対策

1.料理前、食事前、トイレの後にせっけんでの手洗い、もしくは60%以上のアルコールを含んだ消毒液で手を殺菌すること

2.料理、飲み水、歯磨き、手洗いには水道水を避け、煮沸などで消毒した水やボトルの水を使う

3.ハエが Cholera(コレラ) のバクテリアを運ぶことがあるので、食べ物の保存方法に気を付ける

4.皮をむいていない生の果物や野菜、その他生ものを避ける

5.幼児が用を足した時にきちんと処理する

Cholera(コレラ)が流行している地域へ旅行に行くときなどは、上記のことに気を付けてコレラに感染しないよう予防しましょう。

参考: Global Health Media Project, Centers for Disease Control and Prevention, World Health Organization
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[なぜ日本はコロナワクチンの運用が遅かったの?]

日本のコロナワクチンの運用が遅かった理由1

まずは、日本人の国民性です。
ワクチンなど新しいものには、安全性に慎重になりがちですよね。もちろん慎重になることは大事で、”ワクチンを取り入れるべきだ” という意見と ”ワクチン反対” という意見の双方が議論しあうことで、民主主義が成り立ちます。

日本だけでなく、”ワクチン接種による副作用を懸念する人たち” と、"感染症の発生や重症化を防ぐことを優先する人たち" がいるのは世界共通です。

"副作用のコストよりも感染収束のメリットの方が大きい” と判断した多くの国がワクチンの普及を優先する中、日本は副作用のコストに重点を置いていたわけです。

日本のコロナワクチンの運用が遅かった理由2

しかひこの副作用に重点を置く傾向は、日本人の国民性だけに起因しているわけではないんですね。

コロナウイルスのワクチンの安全性を調べるために治験がおこなわれるのですが、当初この治験対象の多くが白人なんですね。アメリカなどは感染者数が日本に比べて非常に多かったこともあり、その分多くの治験のデータが取れたわけです。

世界的にみると日本は感染者数を抑えることに成功していたため、その分ワクチンの安全性をはかるだけの治験データの収集に時間がかかってしまうのです。

”人種が違えばワクチンの副作用も変わってくるのではないか” という見方から、日本は海外から遅れをとってでも安全性を重視していたのですが、特例を認めたりしてワクチンの早い実用化も目指していました。

ワクチンの安全性や副作用に関してはこれまで、国と製薬会社に損害賠償を求める訴訟などが起きてきた歴史があるため、慎重になっている部分もあるようです。

日本のコロナワクチンの運用が遅かった理由3

日本は、感染症などの希少医薬品を開発できる企業が少なく、新規医薬品の治験をおこなうための医療機関の体制が弱いんです。

この背景には、ワクチン接種対象の子どもの数が減った少子化や、上記のような訴訟が起きてきた歴史が関わっているんですね。

また、感染症は流行や収束の動きが速いうえに読みずらいので、余裕がある企業でないと感染症ワクチンを手掛けることが難しいのも一因です。

こうした事情から、輸入ワクチンに頼る部分が大きくなり、国内でのワクチン開発に遅れが出ていたのです。

日本のコロナワクチンの運用が遅かった理由4

戦争など緊急事態に対応する制度を整えている国では、ワクチンの薬事承認の制度なども緊急事態として扱うことができます。

軍のなかで感染が起きた際や、戦地で化学兵器が使用された際に対応できなければ国がやられてしまうので、アメリカなどでは、時間をかけずに開発と量産ができるように治験を進めておくなど、軍事的にワクチン運用の準備に投資がされていたんですね。

ワクチンと政治

コロナウイルスによるロックダウンをいつまでもおこなっていては、国の経済に大ダメージになります。

外交を再開する時に同じワクチンを使っている国を優先することが、感染を再拡大させないために重要になってくるため、外国にワクチン提供を進めることで経済を元に戻すような取り組みをしている国もあるんですね。

参考:朝日新聞、nippon.com, 日経ビジネス、東洋経済

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