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なぜプロファームからスタートアップに飛び込んだのか / GBキャリアイベントレポート(前編)

コンサルや士業出身の方がスタートアップで活躍されるケースは多く、グローバル・ブレイン(以下GB)の投資先スタートアップにも、プロファーム出身のCxOがたくさんいらっしゃいます。先日、プロファーム経験者の中でもどのような人材がスタートアップに向いているのかをテーマに、投資先スタートアップ5社のCxOをお招きし、LiigaとGB共同でキャリアイベントを開催しましたので、内容を再構成してお届けします。

※第2回のキャリアイベントを2022年6月29日(水)19:00より開催します。内容詳細とご参加についてはこちらをご覧ください

登壇者:カイゴメディア株式会社 代表取締役社長・向笠 元、株式会社リセ 経営企画統括/CFO・三宮 雅仁、株式会社JX通信社 取締役CFO兼コーポレート局局長・福井 隼人、株式会社OKAN 取締役COO・佐々木 勇介、ファインディ株式会社 CFO兼社長室室長・河島 傑
モデレータ:GB・慎正宗

慎:私自身がコンサルプロファームにいた頃のキャリアオプションとしては、PEファンドの投資先や事業再生中の会社などに、経営陣として転職することが多かったように思います。ただ、今はスタートアップに多くの人やお金が集まっている状況もあり、プロファームの方が活躍できる土壌が整ってきています。

また、キャリアの中で誰と働くかというのも重要です。今回ご登壇いただくCEO、CxOの皆さんは魅力的な方ばかりですので、直接お話を聞いていただき、よいご縁づくりができればと思っています。

では早速ですが、そもそもなぜ皆さんはスタートアップという成果が見えてないところへ移られたのか、また、その中でもなぜ今の会社を選ばれたのかについてお伺いします。

まずファインディの河島さんにお聞きしたいのは、リクルートという大きな企業から、どんなきっかけでスタートアップ業界に飛び込もうと思われたのか、そのきっかけや選択の理由について教えてください。

河島:その手前の話として、もともと監査法人で働いていたんですが、会計コンサルをしている中でお客さんに「事業会社のことを知らないのに」と思われている感覚を受けていたんですね。そのため徐々に事業会社で働いてみたいという思いが募っていき、事業会社を選んだ背景があります。グローバル志向もあったので、グローバル環境が整っておらず、中途でも活躍できそうという理由でリクルートを選びました。

リクルートではインディードアメリカに駐在し、M&Aに3年ほど関わりました。多くのスタートアップに触れる中で、できあがった組織ではなく、まだ未成熟だけども手触り感のある場所でどこまで自分の力が通用するか、またそういう場所で成長を感じたい思いが強くなったというのが、スタートアップ業界への転身のきっかけですね。ファインディを選んだ理由としては、エンジニアと働くことも多かったため、その事業領域に共感したことと、実際に知人を介してCEOに会い、その人柄に惹かれたというのがあります。

慎:そのときに迷った選択肢、他のオプションはなかったですか?

河島:(選択の判断軸として)もともと①グローバル軸、②マネジメント軸、③事業軸の3つで考えていました。1つ目のグローバル軸で考えれば、よりレイターステージの企業やマザーズ上場企業などの選択肢もありましたが、30代中盤のキャリアとして足りていないと感じたのがマネジメント経験だったため、グローバル軸よりもマネジメント軸を重視したというのがあります。また事業軸で言えば、自分が熱量持ってできる、共感できる事業であるかを考え、最終的にファインディを選択しました。

慎:JX通信社の福井さんにも聞いてみたいんですが、金融業界からまったく業態の違う今の会社に移られたきっかけや理由について教えてください。

福井:ひと言で言うと「プリンシパルとして事を成し遂げたい」と思ったからです。私自身の性格として、「1回きりの人生、困難なことにチャレンジして毎日ワクワクしたい」というスタンスで生きていています。新卒でメガバンクに入って4年間融資業務に携わりまして、ひと通り銀行業務を理解した後にエクイティサイドをやりたいと思い、M&A業務を選び異動しました。そうして約10年金融の世界にいる中で、次の10年をどう作るかを考えるようになってきました。

もちろんM&A業務は面白いですし、日々チャレンジがありましたが、(証券会社でのキャリアの)後半でディールヘッドとして案件をリードする立場になり、クライアントの経営陣の方々とお会いする機会が増えました。そこで強く感じるようになったのが、この10年間で「何を成し遂げた」のかという自分への問いです。

例えばA社がB社を買収する支援を、ファイナンシャルアドバイザーとして実行したという過去実績の説明をよくしていましたが、主語はいつもクライアントなわけです。これが非常に引っかかっていました。もちろんアドバイザーとしては事を成し遂げたわけですが、買収自体はクライアントがリスクを取って実行したものと感じるようになりました。そういった中で、「自分や自分の会社を主語にして事を成し遂げたい」という思いが日に日に強くなりまして。

(自分の定義として)「事を成し遂げる」というのは、買収ではなく新たな価値を作り、ヒト・モノ・カネに携わるということですが、「プリンシパルとして事を成し遂げる」ためには事業会社、中でも困難でチャレンジも多いスタートアップを選択し、転職の決意をしたという感じです。

慎:スタートアップって数多ある中で、福井さんのキャリアであればCFOとして採用したいと考える企業も多いと思いますが、その中でなぜJX通信社を選ばれたんですか?

福井:実は5社ほどスタートアップのCEOと話をしたんですが、事業については事前に内容理解できるものの、成長性や上場の確度は事前に計り知れません。結局、観測可能なのは「誰とやるか」だと思ってます。会社ではいいこともあれば悪いこともありますので、困難なときに助け合って乗り越えていけるんじゃないかと思えたのが、CEOの米重やJX通信社の経営陣だったというのが理由ですね。

慎:リセの三宮さんは比較的最近ジョインされたと思いますが、なぜこれまでのキャリアからスタートアップ業界に飛び込もうと思われたのかについて教えてください。

三宮:私が以前いたのはグローバル・ブレインのようなVCではなく、バイアウトのファンドだったんですが、そこのアセットマネジメントを簡単に言うと投資先の経営をするという仕事です。コンサル出身の同僚もいましたが、コンサルから(バイアウトの)ファンドに転職する人は、コンサルよりも経営に近いところで、最後の実行まで携わりたいという方が多くいました。実際できるんですが、投資家のための経営になるので、その次はどうしても自分でやりたいとなって独立していく流れが1つあります。

私もそういう思考が強くなり、自分なら何をやるかと考えるようになりました。ある時、もともとやっていた企業法務とテクノロジーが合わさる「リーガルテック」が注目され始めたのを知り、非常に時間のかかる法務業務が簡単になるなんてなんて素晴らしいんだというと、プロダクトに興味を持ったのがきっかけです。

今まで自分がファンドで経験してきた企業法務とファンドでの投資先経営を融合させたらうまくいくんじゃないかと思い、次やるのであれば「リーガルテック」かつ「契約書をAIでレビューする」リセで働きたいと考え、転職を決めました。

慎:「リーガルテック」といえばテレビなどにも出ている大きな企業がいくつかあると思いますが、なぜリセを選ばれたんですか?

三宮:前職が中堅中小企業を対象にしたファンドで、現場がどういうものかというのをずっと見てきたので、私としてもエンタープライズ向けより、中小企業向けにサービス提供できるところがいいと思ったのが1つです。あとはCEOが昔からの友人というご縁もあって、最終的に決めたという感じです。

慎:スタートアップへの転職において「ご縁」は意外と重要だと私も思いますね。

スタートアップ業界で8年と、経験として一番長いOKANの佐々木さん、アクセンチュアのような会社からスタートアップに転身した理由について教えてください。

佐々木:コンサルを8年くらいやっていて、コンサルを完全にわかったとは思ってなかったものの、先輩たちを見る中で大体のキャリアのイメージはできてきたタイミングでした。私もJX通信社の福井さんと同じように、自分でやりたいという気持ちが大きくなり、転職を考えるようになりました。

できるだけ振り幅の大きい転職先は何かと考えた結果、会社の規模が非常に小さかったり、短期的ではなく中長期で社会課題を解決したいと考えるカルチャーを持つ企業で働くとどうなるのかを試してみたいと思ったのが、スタートアップへの転職のきっかけです。

慎:カイゴメディアの向笠さんは他のCxOの皆さんと違って自ら起業された経験をお持ちです。プロファームから独立コンサルを経て、スタートアップへとフェーズを変えていかれていますが、どういう心境や環境の変化があったんでしょうか。

向笠:ひと言で言うと、「敷かれたレールの上から脱線したい」という(笑。ファーストキャリアはコンサルとして8年ほど働かせていただいたんですが、最初の会社もどうしても入りたかったとか、コンサル担当になりたかったというより、偏差値競争の延長線上という感覚でした。入ったあともコンサル担当として働かせていただきながら、何かしらの不全感というか、自分のキャリアの決定を後ろ倒しにしているような、モラトリアム期間の延長線上のような感覚だったんですね。

それで次第に「やりたいことをやりたい、やるべき」「(キャリアに)色を付けていくべき」という思いがモヤモヤと出てきて、起業というチャレンジを選びました。

当時不安もありましたが、なんだかんだでダウンサイドリスクはあまりないのではという結論にいたりまして。資金調達させていただいたので今はまったく思ってないですが、当時は最悪ダメでもコンサルに戻ればなんとかなると思い、チャレンジすることにしました。

(後編に続く)