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「元・研究者」のGPが語る、技術あるスタートアップを支えたいという想い【GB社員インタビュー】

グローバル・ブレイン(GB)で情報発信を担当している岡本です。

昨年、元・研究者としてのバックグラウンドを持つキャピタリストの木塚 健太さんが新たにGeneral Partner(GP)となりました。その木塚さんに、前職の経験をどのように業務に活かし、また今後GBにどう貢献しようとしているのか話を聞きました。


元・研究者キャピタリストだからできること

──三洋電機や日本ロレアルでの研究職を経てGBへ入社されたそうですが、その経緯を教えてください。

長年研究職を続けていたのですが、研究成果が社会に還元されるまでに時間が長かったり、よい研究成果でも製品にならなかったりすることも多く、個人的にはもどかしさを感じていました。もちろん重要な仕事ではあるのですが、1社の事業にとどまることなく、これまでの経験を社会に広く還元していくようなキャリアチェンジをしたいという思いが募っていたのです。

そんな時にご縁があり、2014年にグローバル・ブレインへ入社しました。当時は「ベンチャーキャピタル」が何をする会社なのかもまったくわかっておらず、検索をしても日本語では全然情報が出てこない時代。かなり大きなキャリアチェンジでしたが、なぜか大きなリスクを取った方がリターンが大きくなると直観的に感じて飛び込みました。

木塚 健太:国内外のスタートアップのソーシング、投資実行から投資後支援まで一貫して従事。

──研究者のバックグラウンドは、キャピタリストとしての仕事に活きていますか?

かなり活きています。ひと言で言うと技術開発の「肌感覚」が活きていると感じますね。たとえば、技術系の事業を展開されているスタートアップと議論をしていると「ラボスケールでは成功したけれど、パイロットスケールで課題がある」という類の話がよく出ます。そうした時に「こういう差分があるからこういうことが起きたのかな」という感覚が共有できる。私は化粧品や材料系の研究者でしたが、その他の商材や技術についても、スタートアップから話を聞けばどこに課題がありそうかなんとなく見当をつけられるので深い議論ができると思います。このあたりは研究職を経験したからこその肌感覚があるかなと感じます。

また自分が手を動かした経験をしていると、スタートアップとの会話を通じて、自分の専門領域とその周辺であれば技術のリスクを深く把握できます。投資検討では最後は「信じきる」のが大事だと思っているのですが、リスクを自分なりに把握できたからこそ、そのスタートアップの成功を信じられる。そういう意味で、研究開発型のスタートアップについては研究者の経験が深みのある投資検討につながっていると思います。

投資検討には「作れるのか」「売れるのか」「運営できるのか」という3つポイントがあると思っているのですが、研究開発型のスタートアップは売れるであろうものを「作れるのか」が本当に大事です。ここを解像度高く検討していけるのは自分の強みだと感じます。ちなみにGBには私以外にも各領域で専門性のあるベンチャーキャピタリストが多く在籍しており、厚みのある投資体制ができているのでとても心強いですね。

各ステークホルダーへの向き合い方

──そうした強みを活かしながら、ステークホルダーであるスタートアップやLP(Limited Partner:ファンドの出資者)の皆さんと関わる中で意識していることはありますか?

まずLPの皆さんに対しては「情報開示」と「一貫性」を意識しています。十分な信頼関係をつくるためにも、情報開示については意識しています。また、発言内容がバラバラと変わると信頼を得るのは難しいと思いますので、一貫性があるコミュニケーションを続ける必要もあると思っています。

はじめは私も経験がなく自分自身で理解できる業務範囲も限られていたため、情報共有が不足し、LPの皆さんとのコミュニケーションに自信が持てなくなってしまったことがあります。

ただ、ある時期からキャピタリストとして一定の自信を持ち始めたのもあって、明確に自分の開示スタンスを変え、より一層オープンにすることを心がけるようにしました。そこから少しずつ信頼をいただける感覚が得られたのを覚えてます。いい投資判断や意思決定も大事ですが、その土台には信頼関係があってこそだと感じます。

──スタートアップの皆さんに対してはいかがでしょうか。

スタートアップの皆さんにも情報開示と一貫性は重要です。加えて、私たちが貢献できるのは投資のプロとして「客観的かつ長期的な目線」を提供することだと思っています。

優秀な経営陣であってもスタートアップ1社が得られる情報量は限られますし、どうしても目の前の課題に対する優先順位が高くなってしまいます。私たちが他社の事例などを参考に必要な情報を伝えることができれば、よりよい経営判断や危機回避につなげることが可能なはずです

具体的な事例ではお伝えしづらいのですが、たとえば、支援先のスタートアップがCFOを採用できずに悩んでいるとします。メディアなどでは投資銀行などの専門的なバックグラウンドを持つCFOが多数取り上げられているので、そうしたキャリアを持つ人を採用しなければいけないのかなと思ってしまいがちです。しかしGBの既存支援先の中には、社内の経理のご出身で活躍されているCFOの方も複数いらっしゃいます。必ずしも最初からファイナンスにおける高いスキルを持っていたり、プロフェッショナルファーム出身であったりしなくても、カルチャーフィットしていればその後に必要なスキルを身に付け専門職として成功できることもあるという実例です。

もちろん、これは事例の1つでありすべてに当てはまるものではありません。ですがこうしたケースを通じて、求職者を経歴だけで除外してしまう危うさやカルチャーフィットを重視する大切さなどを知っていただき、よりよい意思決定をしてもらえたらと思っています。

GBはシード期向けのアクセラレーターからグロースファンドまで抱えており、Exitも100件を越えているので、いろいろなスタートアップの状況や成功事例を知っているのが強みです。そうした立場から客観的で長期的な支援をこれからも提供していきたいですね。

「黒子」が集まっているという強さ

──会社についても聞かせてください。木塚さんから見て、GBはひと言で言うとどのようなカルチャーの会社だと感じますか?

なかなかひと言で表すのは難しいですが、「黒子」ですかね。優秀な方ばかりですが「自分が自分が」と目立とうとする人が少なく、地味で真面目な人が多いです。やはりスタートアップやLPの皆さんが主役だという意識が全社にあるんだと思います。また、何をするにもチームで動くことが基本となっており、経験のないメンバーが他のメンバーを参考にしたり、チーム内で対話をしたりすることで議論を深めています。これは私が入社したころから変わっていないカルチャーですね。

1人の頭では思いつかないことがたくさんあります。チームとして対話を続け、そのスタートアップに対して何ができるかを考えるからこそ「これをやろう、これもできる」とソーシングや投資検討、事業支援やその後のExit支援なども進められると思います。

いまもGBでは、新入社員に相談できるメンバーがつく「メンター制度」や「バディ制」を取っていますが、これはかなり効果的な制度だと思っています。一匹狼が少なく、個々の力を集めて乗り越えていく文化になっている。投資には正解がないので、いろいろな頭を使って対話しながらよりよい答えを見つけていくのが大事だと思います。

──そのカルチャーが功を奏した場面はありますか?

はい。私は消費財分野で研究をやっていたのでFood Techスタートアップの投資に注力してきたのですが、その中にすでに上場したベースフード株式会社があります。ベースフードには合計4回の投資をしていますが、最後の投資ではファンド管理チームやDDチームのみなさんに大きく支えられました。

当時は投資難易度が一定ある状況でしたが、両チームに相談しながら丁寧な財務分析を進める中で、あるKPIを追って投資実行すればさらに事業が伸びるという気づきがあり、追加投資につなげられました。

もちろんベースフードがその投資を活かしてさらに大きく成長された結果ではありますが、GB内にいるプロフェッショナルたちとの対話を通じて生まれた発見や分析、リスクの定量的な把握によって前に進められた事例だったと思っています。

技術ある日本のスタートアップを、世界へ

──今後GPとしてGBの組織づくりにも関わっていかれるかと思いますが、どのように取り組んでいきたいと考えていますか?

私自身、前職が研究職であったこともあり、VCとして必要なスキルのキャッチアップにはとても苦労しました。そのため現在は定期的な勉強会を行ったり、自分なりに投資のガイドラインを言語化してみたりしています。過去の経験を整理して、私が5年くらいかけて学んだことを1年くらいで身につけられる仕組みを作っていきたいです。

現在GBは社員も120名を越え、リモートワークでも働けるので、どうしても悩んでいるメンバーの存在が見えづらくなってしまいます。そこを解消できる体制や、コミュニケーションの仕組みを整えていきたいですね。

──キャピタリストとして、スタートアップやLPの皆さんにどう貢献していきたいかについても教えてください。

私は出自が研究職なので、研究開発型スタートアップの成長を支援して、日本のエコシステムを盛り上げていきたいです。これは国の「スタートアップ育成5か年計画」の方針にも合致していますし、日本経済にも必要な動きだと思っています。

いまの日本では研究開発型スタートアップの数がまだ少なく、投資されるお金も潤沢とは言えません。ですがGBには、キリンやエプソン、日揮、三菱電機、三井化学、島津製作所など、技術分野で評価したりそのリスクを取ることができる多数のLPの皆さんとご一緒しています。そうした方々と研究開発型スタートアップを盛り上げていきたいですね。

良い技術は国境を越えることができます。海外展開していける力を持つ技術スタートアップを支援して、日本の社会に貢献できたらなと思います。また将来的には研究開発型のスタートアップを生み出していきたいです。創業後のスタートアップのみならず、研究開発型スタートアップをクリエイトする段階から支援できたら、こんなに嬉しいことはないですね。


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