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ファッション視覚心理考: 「牡蠣柄」

秋、9月、September、"R"のつく季節。夏でも美味しい牡蠣は食すことができるが、やはり秋。
と言いつつ、今回のテーマは食べ物ではない。ファッションにおける牡蠣。

以前ファッション視覚心理考:「ストライプ柄」というタイトルでポストしたところ、過去記事の中でもっともビューが多く、未だお読みいただいているという驚き。

今回はその続きというには突飛すぎるが、この秋Burberryから出ている「牡蠣モチーフ」「牡蠣柄」に思うことの考察。

これを見て「Burberryはなんと大胆なことを!どういう人が身につけるのだろうか?」と想像を巡らせてみた。

上の記事を書いた方は、無類の牡蠣好きとのこと。そういう方は諸手を挙げて受け入れてくれることだろう。そして、これを身につけて愛する牡蠣を食しに行き、牡蠣に溺れ、いつか牡蠣の貝殻で貝塚を作ることを誓うのだろう。

とはいえ、そこまでの牡蠣ラバーが世の中にどれくらいいるだろうか?またその中でこのピアスを受け入れる存在は、どう考えてもそれほど多くはないだろう。

なのに牡蠣。

食欲の秋に、ファッションで人間の三大欲求のうちの一つである「食欲」を刺激し、大人の食通な人の購買行動を起こさせる戦略だとしたら、人間の原始的な部分にアプローチするやり方。「大人の食通食欲刺激型マーケティング」というところだろうか。

確かに昔から存在する、綺麗で美味しそうなフルーツ柄や、子供用のものに多く見るキャンディやビスケットなどの柄は、楽しそうでふんわり甘い感じがして、思わず手にしてしまうことがある。

空腹の時とそうでない時の購買欲求の比較をしたことはないが、きっと爽やかなものが食べたい気分の時や、小腹が空いて甘いものを求めている時、これらのモチーフのアイテムを選んでしまうことが多いのかもしれないと想像する。(実験してみたいな)

通常、貝モチーフのアイテムは夏限定。そして夏の終わりとともに来年までサヨナラ。しかし、牡蠣はまさにこれから。それに、この仕様なら冬も全然いける。

ということで、実際にBurberryのウェブサイト上ではどのようになっているのか覗いてみたら、このような感じ。

最初に見た記事の写真よりも金色の濃厚さは少なく、サイズは結構大ぶりではあるけれど、それほどつけるのに難儀することはなさそう。

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photo: us.burberry.com より

そして、上の写真を見て既にお気づきかと思うが、牡蠣プリントのブラウスとスカーフ(中綿入り)もある。

好む好まざるは別として、シックな配色、水彩画のような描き方、シルク素材へのプリントということで、牡蠣柄は思いの外いい具合に落ち着いているように見える。ビッグシルエットのブラウスはそれなりに成立しているし、着る人が着ればアリなのでは。

しかし、スカーフ(中綿入り)に関しては、子供用のお昼寝布団か、おしゃれな防災頭巾、否、おしゃれ褞袍(ドテラ)にしか見えないのは、筆者がNY在住とはいえ日本生まれということに所以しているのだろう。ドテラなど知らない方々には、おしゃれで軽くて暖かい、ふわっとした素敵なマフラー以外の何物でもないのかもしれない。こういう時に先入観が邪魔をする。ピアスにパールが付いているのと同じく、ドテラ、もとい、スカーフの生地上にプリントされてる貝にも、同じ位置にパールが縫い付けられているという可愛い細工もあるのだが。

これらのアイテム、自分で購入するか?というと、そこまで牡蠣ラバーではない上に、金色系ジュエリーも服のベージュ・茶系の配色もあまり得意ではない筆者の答えは「いいえ」。

では、もし頂いたら身につけるか?それを考えてみた。

まずピアス。思いのほか金色が強烈ではないこと、サイズ的に結構好きな大きさとボリュームのようなので、きっと使う。会食やレセプションの際、前菜をいただく前の前菜的会話のネタに仕込んでいくだろう。

ブラウスは・・・この柄と素材、シルエット、この組み合わせはどう考えても筆者には適さない。だったらドテラの方が面白いアクセサリーとして使える率が高そう。やはり体に直に纏うブラウスよりも、面積は大きくともアクセサリー(スパイス)であり、取り外しができ、形がシンプル(ただの長方形)なものの方がどういう場合にもチャレンジしやすいのだ。それがどこかでドテラ・・・と思っているものであっても。

前述で「大人の食通食欲刺激型マーケティング」と書いたが、この反対の状況が容易に想像できる。

お腹が満腹の時や、体調がすぐれずお腹の調子がすぐれない時など、この牡蠣パターンのブラウスやスカーフは見るのが辛い。自分のクローゼットにあるものだったとしても、まず身につけない。やはり食欲の度合いと物の選択には、購買だけでなく自身の物としての利用に際する心理が大きく影響する。

ピアスは、つけてしまったら鏡の前に立たない限り、自分には見えない。「耳元は人のため」だから(それに関連する記事は以下にリンクを)。なので、このようにテーマ性の高いアイテムは、もちろん自分がそれを好きで、自分に合っていることも前提の一つにあるが、場に適していることとエンターテイメントの目的も持ってつける。

しかし、ブラウスもスカーフも、身につけていると常に自分の目線の中に入ってくる。当然自らの心理や体調に大いに影響を与え、食欲がわかない時はどんどん具合が悪くなる可能性も・・・

反対に、ダイエットしたい時はかなりリアルな食べ物柄の服を全身身につけていると、視覚刺激で満腹になっていられるのか?

牡蠣モチーフ、牡蠣柄から思うことが多岐に渡ってしまったが、ここで一つ言えるのは、牡蠣柄に限らず、食べ物モチーフや食べ物柄のアイテムを自らすすんで身につける人は、「寝る」「食べる」どちらを取る?と聞かれて迷わず「食べる」と答えるか、人生の中で好きなことのベスト3の中に食べることが入っているか、何をするよりもこれが好きという食べ物がある人だと思われる。

ちなみに筆者は「寝る」と「食べる」を選べと言われたら、迷わず「寝る」派。睡眠を貪りたい。「睡眠」派がどのようなものを選ぶか?自分基準に考えると、柄とかはあまり関係なく、触感と温度(いわば肌感覚)・一定の安心する香りというのが大事。これはまた別の時に。

いやはや、人の心理や根本的な嗜好は、選択という行動に明らかに反映されるものだ。

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