お酒の勉強とお客様との会話

22歳でBARの仕事だけで生計を立てるようになった

それまでは様々なアルバイトをしていた

人生で一番はじめにお金を稼いだのは父親の代わりに父親の同窓会名簿をデータ入力するアルバイトだった。当時家にあったMacでポチポチと500名分くらいの住所と名前を入力して¥5000もらった

今思えばめちゃくちゃ割のいいバイトだ

その後高校時代フリーター期は飲食店、小売業、内装業、ちょっと黒い電話勧誘など

バーテンダーになり、マニュアルのないお客様との会話に困った

初めて本格的に働き出したBARはかなりカジュアルな店だったのでお客様はお酒を嗜むと言うより会話を楽しみにして来ている人が多かった

系列2店舗にシフト制で出勤していたのだが、どちらも所謂コンセプトバーでコンセプトに沿った深い話が出来れば何の問題もないのだが、某ロボットアニメバー(ロボットアニメというと怒られる)の方はそもそも観た事がない、ロックバーの方は人によって趣味趣向が違いすぎて自分の得意分野と合わないと全く話が分からない

これには困った

何を話せばいいのか分からないし、そもそも入りたての新人なんかにはお客様もあんまり興味がない

特に店長や他のスタッフを目当てに来ているお客様がお目当てのスタッフ不在の時などは顕著で、共通の話題もなく、そもそも僕に興味なんかないので同じ空間にいる事が苦痛でたまらない

その苦痛から逃れるために内容が薄く相手にとっては興味のない話を延々と続けるのだ、ずっと牽制しているだけで決して本題には入らない会話にもならない独り言

当時はどの話題でも良いからどこか引っかかってくれと願いながら壊れた扇風機のようにペラペラと生温い微風のような独り言を続けていた

そんな苦痛に耐えきれず、ある日店長に聞いた「お客様となんの話をしたら良いかわかりません。店長はどうしてるんですか?」

こともなげに店長は言う

「お酒の話すればええやん」

びっくりした、合点がいった、天啓だ、そりゃそうだ

僕が働いているのは酒場なのである、いくら会話を求めて来ているお客様にだって好きなお酒もあれば飲みたいお酒もあるのだ、その話をすれば良い

共通点なんか最初からそこに横たわっていたのだ

それから僕はやっとお酒の勉強を始めたのだ、本末転倒






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