マガジンのカバー画像

映画『ホビット』EE版考察(二周目)

11
主人公側から観てしまうと分かりにくい裏ストーリーを主観的合理性とリアリズム(IR)の観点から掘り下げる。全11回。考察一周目⇒ https://www.nicovideo.jp/…
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

#11 トーリンもスロールも ”竜の病” ではない──おうのおしごと

では最後にドワーフたちを掘り下げてくね。 王の器ここまで、散々悪いイメージを振りまいてきたスランドゥイル、国家の敵となったギリオン、同族殺しのカードを切ったエルロンド、土下座外交のエスガロスの統領、と自分の肩に多くの命が掛かっていればこそ、なりふり構わずまい進する国家のリーダー揃いだった中、トーリンの多罰傾向はとても目立つね。 【拙訳】 トーリン「食べる物も住む所もなく助けが必要だった時に貴様は背を向けた。苦しむ我ら民族と火炎地獄から逃げだした! 貴様こそ竜の炎で焼け死ぬ

#10 ガンダルフと呼ぶレゴラス ミスランディアと呼ぶスランドゥイル──その情報はいつ?誰から?どうやって?

全てが終わって冷静になった時、レゴラスはやっと自分がやり過ぎてしまったことに気付いたところから第10回目。 【拙訳】 レゴラス「森へは戻れません」 タウリエルが追放なら自分も同罪であるとね。そして国王にその息子を追放させるようなことはしなかった。あくまで自分が先に王子としてレゴラスというエルフを追放した(そういう権限があるかは別として)。父にとって自分がどれだけ大切な存在かよくよく知っていたから。 【拙訳】 レゴラス「父上に伝えてくれ。タウリエルに居場所がない国なら、私

#9 タウリエルは森の向こうで何を見たか──ネオリアリズムの世界観

さて第9回の今日は映画の現在軸に戻って。 赤ん坊はパパの心配をよそにすくすくと育ち、今や守備隊を率いて蜘蛛退治──と思いきや、国王に報告にきたのはレゴラスではなくタウリエルだったね。 『命令一元性の原則』ってのがあって、直属の者をすっ飛ばして命令や報告は出来ない。もしタウリエルの上官がレゴラスなら、レゴラスが国王に報告する。レゴラスをすっ飛ばしてタウリエルが国王に報告することは出来ない。また国王もレゴラスを介さずに、直接レゴラスの部下であるタウリエルに命令することは出来な