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閃輝暗点だかなんだか知らないけど

8月27日(火)
旅行疲れもあることだし、ここらで絶対休みが必要だと思って予定を入れなかったので、今日は完全オフ日。
起きてすぐ、紹介された総合病院に精密検査の予約電話をする。9月下旬以降しか予約が取れないと言われ、結局10月頭に。そんなゆったりしたスケジュールでいいのね。
要精密検査の不安と、ポメラ紛失の痛手から立ち直れないけれど、気分転換に本屋とサウナに行くことにする。まだ行ったことのないサウナがいいと思い、担当美容師さんが通っていると教えてくれた鶯谷「ひだまりの泉 萩の湯」に狙いを定める。

最寄駅の本屋に到着して宮本輝『流転の海』第四部を手に取った。シリーズものは積ん読すると読む気をなくすので、1冊読み終わるごとに1冊買っている。
新刊の棚に移動して本を物色しているときに、視界の右側が暗く、その闇の中にきらきらした万華鏡のようなものが見えていることに気づいた。不思議なことに右目を閉じても左目を閉じても万華鏡は消えない。太陽の光を直視した後みたいだ。なんだかわからないけれど綺麗だなあと思っているうちに、そのきらきらした輪がゆっくりと回転し始めて、かすかに目眩がして視界全体がかすんだ。慌てて本の会計をしてトイレの個室に駆け込む。少し吐き気もしたけれど吐くほどではなさそうだ。
怖くなってスマホでググると、目の内側のチカチカは偏頭痛の前兆らしい。目の中の万華鏡が邪魔なのでスマホの画面の見るにも頭を左右に振って視界を確保する。同じ症状になった人がたくさんいるらしいことに少し安心。
十分ほどじっとしていると少しずつ視界が元に戻ってきた。その間にゴルフボールみたいな大便が出て、普段ちっとも出ないくせにこんな緊急事態選んでわざわざ出てくる? ちょっとは空気読まない? という気持ち。
便の勢いで服のポケットにしまったiPhoneが床に落ちて、見ると液晶が右下から中央にかけてバキバキに割れていた。完全に泣きっ面に蜂だった。
この日記に割れたiPhoneの写真を載せたくてiPhoneでスクショしたけれど、画面のヒビは映らなかったよ。当たり前だよね。脳に障害出てるかな? 大丈夫かな?

とりあえず症状が落ち着いたので、予定通り地下鉄で鶯谷に向かう。万華鏡発生からきっかり30分で偏頭痛が来て、現実の痛みがネット上で得た知識の答え合わせと化す。あーはいはい来るんだよね偏頭痛、知ってた知ってた、みたいな。

ずきずき痛む頭を抱えたまま、萩の湯に向かう途中にあった「花家」というレトロな喫茶店に入る。入店時すでに3時近くてとっくにランチタイムは終わっていたのに、恐る恐るランチセットを頼めるか聞いてみたら笑顔で承諾してくれて優しかった。本日のランチセットは手作りコロッケ。原因不明の体調不良の心細さに、お味噌汁とふろふき大根がしみわたって泣きそう。

ツイッターで泣き言を言ったところ、去年から同じ症状に悩まされているらしい伏見ふしぎちゃんが、件の万華鏡は「閃輝暗点」という名前だと教えてくれた。なんだその中二くさいネーミングは!! とキレながら再びググると、芥川龍之介「歯車」に出てくる歯車は閃輝暗点のことだという情報が。ああ、あれ、幻覚じゃなかったんだね。
私は大学院時代に「歯車」を発表で取り扱って、おじいちゃん先生に修論口頭試問で「歯車の発表の方が面白かった」と褒められ(disられ?)たり、仕事でもあの小説を使う機会があったりしたので勝手に思い入れがあるのだが、まさか自分があの語り手と同じ症状になるとは思わなかった。十代の頃なら、「やっぱり私には芥川のことわかっちゃうんだ」とうっとりしたり、「ああ私もぼんやりした不安にとらわれて死ぬのかしら」と悲嘆に暮れたりしたかもしれない。しかし今は、クッソ生きてやる!! としか思わない。閃輝暗点だかぼんやりした不安だか知ったことか。

おいしい喫茶店ごはんを食べたり、中二ネーミング・閃輝暗点にキレたり、生への執着を確認したり、コーヒー飲んでカフェイン摂取したりしているうちに、頭痛もすっかりどこかへ行った。喫茶店を出て萩の湯に向かう。サウナ&タオル付き時間無制限650円なのだが、施設もきれい、サウナは二種類、外気浴可、お風呂も種類豊富と本当に本当に素晴らしくて、こんなに安くていいの?という気持ち。ああここに住みたい。
90度のドライサウナと水風呂を4往復した後、半露天のベンチで寝そべる。四角く切り抜かれた夕方の空の真下でそっと目を閉じる。秋を運んでくる涼しい風に裸の体が溶け出す感覚があって、このまま息が止まって死んでもいいと思う。さっきと考えていることが完全に矛盾している。
最後に塩サウナに入ったとき、首回りの肌荒れの上にも容赦なく塩をのせてしまい、傷口に塩を塗るってこれかああああ! と悶絶する羽目になった。どれだけ運悪い日だ。しかし、たっぷり汗が出るまで耐えてから洗い流すと、旅行疲れと二日酔いでがさがさになっていた肌がびっくりするほどつるつるになって生き返った気分。
サウナの帰り道は足取りも軽い。心も体も、一日のうちに何度もだめになったり大丈夫になったりするけれど、こうしてなんとかやっている。

#日記 #エッセイ #サウナ #サ活 #歯車

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元早稲女同盟編集長。文芸サークルChambreBlancheとして主に文学フリマ東京で活動中。同人誌『早稲女×三十歳』『東京一人酒日記』など。noteは日記用にしています。
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