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ずっと行きたかった場所たち 2020.08.20-24

8月20日(木) おいしい休日

起床。夕方から酒を飲むので、出かける前に筋トレをする私。えらい。この休み、歯医者に行ったことと毎日筋トレをしていること以外えらいところが一つもない。
昨日の買い物中、姪がパプリカを踊っている動画がかわいかったことを思い出したら無駄にパプリカを買いすぎたので、パプリカを卵と一緒に炒めて食べた。黄色いパプリカだったので黄色い炒めものになった。

六本木の森アーツセンターギャラリーへ。前回、52階まで行くエレベーターがわからずに盛大に迷ったのだが、今回は大丈夫だった。
そして入口で長々と注意事項の説明があった後「おいしい浮世絵展」に入場する。

食事シーンや屋台などの食にまつわる風俗が描かれた浮世絵を通して、江戸の食文化に迫るという試み。様々な美味しそうな食べ物が次々に出てきて生唾を飲み込む。白い四角はちゃんと豆腐に見えるし白い楕円はつきたての餅だし黄色のふわふわは天ぷらの衣に見えてどれもこれも美味しそうなのが不思議だった。国芳の描く、白玉やら西瓜やら食べている女が、めちゃめちゃ食い意地はった顔していて笑った。お猪口持って酒飲んでいる女もすっごい楽しそうで親近感。展覧会ポスターにもなってる、うなぎを食べている女の絵は後ろに虹がかかってるんだけど、たしかに、うなぎのたれのいい匂いをかぎながら口に運ぶと脳内に虹かかるわよね、と共感する。あとは、「一生に一度はお伊勢参り」と言われて一大ブームになった東海道行脚がテーマになった章があって、いつも18切符旅行では通過するだけの各地のいろんな名物を知ることができてよかった。徒歩の旅だと少し進む度にまた休憩したり宿泊するから、あちこちの名物料理や名勝で旅の疲れを癒していたのだなあと改めて実感する。一生に一度どころか年一で弾丸お伊勢参りしている現代の私だけれど、江戸時代のように道中を味わい尽くす旅が逆にうらやましい気がする。ああとりあえず旅行に行きたい。

美術展で浮世絵を見ると毎度絶対近所の蕎麦屋に行きたくなるのだけれど、一昨日行ったから大丈夫、かと思ったらやっぱり天ぷらや蕎麦と日本酒が恋しくなった。
けれど今日は蕎麦屋ではなく、新宿のパークハイアット一階カフェ・デリカテッセンのビアガーデン的催しに行くのだ!!
都庁前に出るため大江戸線に乗る必要があったのだが、大江戸線六本木駅の入口が見当たらず半泣きになって地上と地下を行ったりきたりした。行きに迷わなかったのに帰りに迷うの、私あるあるだ。やっとのことで都庁前にたどり着くとT氏が待っていたので、一緒にパークタワーに向かう。でかい建物がありすぎてどれがどれだかわからん(建築物としての高層ビルに興味がない)。

高級ホテルのカフェなのに居酒屋料金で三種類のビールが無限に飲めるという「チリ&クール」は17時から。少し早めにデリカテッセンに着いて、すぐ席に案内してくれた。テラス席もあったしそちらの方がビールが美味しいのはわかっていたのだけれど、暑すぎて涼しい店内の席を選択。初めて来るのできょろきょろしてしまう。ウェイトレスさんの制服がクラシックで超かわいい。内装もシックで落ち着くけれど、やたら高い天井付近の壁を見上げると謎の動物や顔が星の人間が磔刑になっていてこわかった。

出てきたお通し的なポップコーンがスパイシーでビールが進む。とはいえ私はここ最近、胃袋的な意味でビールがジョッキ一杯も入らなくなってしまったので、最初の一杯を三分の二ほど飲んだところでT氏に渡し、スパークリングと赤ワインを交互に飲んだ。私はビール飲み放題より、普段最初の一杯しか飲まないスパークリングがたくさん飲めたことの方が嬉しかった。おしゃれな空間でマンゴービールもシトラスのビールも爽やかで夏気分が味わえた(T氏に一口だけもらった)ので、好きな人はぜひ。

ポップコーンとおしゃれなワンプレートでは食べ足りない飲み足りない、ということで最寄り駅に戻ってよく行く焼き鳥屋へ。おしゃれな空間でちょっとの美味しい食べ物をじっくり味わって食べるのもいいけれど、次々好き勝手に頼んでどんどん出てくる焼き立ての串の手軽さも捨てがたい。みんな違ってみんないい。

「飲み足りない」とか言いつつ一軒目からがっつりワインを飲んでいた私は後半あまり記憶がない。気づいたら家のベッドで寝ていた。冷房はかろうじてつけていたので熱中症は免れた。


8月21日㈮ 文化的な休日(二日酔い)

明け方目覚めて、家のベッドに寝ていることに安心する。パンツしか履いていなくて体はとても冷えていたけど。エプソムソルトでつい長湯する。髪を乾かしてもちろん二度寝。次に起きたら昼前だった。早稲田松竹にケン・ローチ特集を見に行くという文化的な夏休みの一日を過ごそうと思っていたけれど、時間的にも体調的にも無理、というわけで早々に諦める。

昼過ぎ、昨日受け取れなかったLAMEDALICOさんのバングルを再配達で無事受け取った。

foufouのワンピース#11に合わせてつけてみると存在感があっていい感じ。スカート部分の布地のボリュームがあるので、アクセサリーにも存在感を求めたくなってしまう。長袖を着る季節になったら白いニットの袖の上に巻き付けたい。

下北沢BONUS TRACKの「日記屋 月日」さんで拙著『東京一人酒日記』を購入してくれた方が感想をツイートしてくれているのを発見。嬉しい。それを見たら「あたしなんでまだ月日行ってないんだろう?(By Chara)」という気持ちが抑えきれなくなり、思い立ったが吉日、ということで今日行って二日酔いなりに文化的な夏休みの一日を取り戻すことを決意。

水道橋のスリランカ紅茶専門店でランチをしてからJRで新宿に出て下北に向かおうと思い立つ。平日限定ランチが気になっていたので、夏休みの間に行ってみたかったのだ。

あれこれ混ぜて食べるスリランカカレーはスパイスが効いていておいしい。セットのシナモンティーもよかった。けれど、カレーを食べるとコーヒーや紅茶の味がわかりにくくなってしまう気がするので、次はポットの紅茶を頼んだアフタヌーンティーにしようと決意。

そして向かった下北沢。一番頻繁に下北に通っていたのが高校時代なので、駅が再開発によって当時と別物になっていて毎度混乱する。BONUS TRACKは遠くからでも目立った。色んなテナントが入った大きな倉庫のような建物を想像していたのだけれど、商業施設とか商店街というより一つの「街」のようなかんじだった。月日さんが「古今東西の日記に出会える&おいしいコーヒーやビールも売っている」のを筆頭に、それぞれのお店が「本屋」や「服屋」や「飲食店」というような枠組みにとらわれずいろいろなスタイルを提案していて、一人でも友達とでも、この街の住人になった気分で丸一日過ごせそうだなあと思いながらうろうろした。コロッケとか台湾料理とかかき氷とかおいしそうなものもたくさんあったので、次はお腹を空かせて来よう。

念願の月日さんは思った通りの素敵な空間だった。入って左奥の平棚がZINEのコーナーになっていて、棚の上には、白い「Diary」という筆記体の文字がバーのネオンサインのように躍っていた。かっこいい。そのイカした棚の二段目右端に『東京一人酒日記』を見つけてテンションが上がる。

店員さんに「この本の著者で…」と話しかけて(毎度これが恥ずかしい)ご挨拶させていただいた。五月文フリが中止になって読者の方と交流する機会が持てない中、月日さんで『東京一人酒日記』に出会ってくださった方が、ほかの本の通販を頼んでくださったり感想を伝えたりしてくださったことが本当に本当に励みになっていたので、そのことを(しどろもどろではあるが)伝えられてよかった。私も気になった二冊を連れて帰ることに。

同じBONUS TRACKの敷地内でこれまた気になっていた、本が読める店・フヅクエさんにお邪魔した。みんなが本を読んでいる無言空間の雰囲気に圧倒され、同人誌ばりに分厚く文字が多いお品書きを必死で読んでシステムを理解しようとしてテンパり、店員さんを呼び止めてコーヒーとチーズケーキを頼んでやっと人心地ついた。そこで買ったばかりの『次元上昇日記』を広げる。証明も室温も心地よく計算しつくされている感じで、落ち着いた空間でじっくり本に向き合えるのはとてもよかった。だから私の集中が続かなかったのは単純に二日酔いのせいです。コーヒーもチーズケーキもびっくりするくらい美味しくて、コーヒーのリキュールやらつまみやらも頼んでみたくなったけれど、二日酔いだったので思いとどまった。

今度は、「一日籠って本を読むぞ」と気合を入れてお腹を空かせて、酒飲む気も満々で来ようと思う。

というわけで、BONUS TRACKは近所にあってほしい、というか移住したくなる素敵な「街」だということがわかった初来訪だった。また来よう。一人もいいけれど、友人と一緒に行くのも楽しそうだ。

行きはナビを見ながら歩いたからまっすぐたどり着けたけれど、帰りは気づけば違う道を通っていて、でもそのおかげで駅前の古着屋が何件か立ち並ぶエリアに出た。高校時代によく、下北沢のこういう古着屋で服や靴を見たなあと懐かしくなる。foufouのあずみさんのコーディネートを見て、今日着ているfoufou#11のワンピースに合わせるベルトがほしかったことを思い出し、立ち並ぶ古着屋の一軒に入ってみた。これからの季節にぴったりな、ベルベットのベルトとボリュームのある飾りに目を奪われ、試着したらいい感じだったので購入を決める。

黒無地のワンピースって、コーディネートを考えないでいい楽さに惹かれて買って着ていたけれど、中に重ねる服やベルトやアクセサリー変えると何倍も楽しめるな。

その後、甥の生誕祝いを買いに立ち寄った伊勢丹で、なぜか自分用のシルバーのバッグまで購入。強そうなのに保冷バッグみたい。

たしかにA4が入るトートを探してはいたけれど。今日手に入れた服飾品の全てが一貫して存在感を主張していて笑える。
連日の外食でお腹がぱんぱんに膨らんでいる。苦しみながら腹筋の筋トレ。最近、下半身ばかり鍛えていたので久しぶり。


8月22日(土) はちみつ豆乳ラテ

昼頃から仕事があるのでどこかの喫茶店でモーニングをしてから出社しようと目論んでいたのだけど、胃の調子が悪すぎて苦しいので断念。おとなしく家でレモン水を飲み、ヨーグルトを食べてから出社。
仕事自体はごくごく単純なものだし、特別手当で臨時収入も入ったのでよかった。9月半ばに楽しみな予定があるので、最近、臨時収入は家計に入れず別に取っておいている。額が増えるごとに楽しみな予定が近づいてくる感じがしてわくわくできてとても良い。
けれど、業務終了後に7月中の業績データを一足早く見てしまい、その数字の低迷ぶりに軽く吐き気を催す。落ち込みすぎて気づいたら1時間ほど経っていた。もうすっかり夕方。
朝行きたかったカフェは17時に閉まるので、諦めて帰宅することに。コーヒー欲を持て余したけれど、胃の調子が悪いことだし、というわけでハンドドリップではちみつ豆乳ラテを作ってみた。お腹に優しいし甘さも優しい。
『次元上昇日記』読了。


8月23日(日)雨上がりの喫茶店で

モーニングしに行きたかったのに、午前中雨と雷で出かけられず。気に入っている黒ワンピたちをまとめておうちクリーニングするなどした。

冷凍野菜とトマトホール缶とパックライスでマグマらしきものを錬成する。ナッツやバナナやヨーグルトや、朝食や空腹時の間食で食べている常備食品が何もなくて悲しかったが、ゼラチンがあることを思い出して無調整豆乳の豆乳ゼリー?プリン?を作った。甘味はつけず、食べるときにはちみつをかけて食べた。満足感があって良い。適当なサイズのタッパーに入れて職場に持っていけば、仕事中のクッキーやチョコのドカ食いを控えられるかもしれない。

先日、部屋中のを整理したことで積読が可視化されたので、その山の中でも読みやすそうな羽田圭介『ポルシェ太郎』に着手。主人公太郎、ただひたすらいけすかないと思っていたけれど、途中からどんどん愛着がわいていった。自分のポルシェに人が乗ってだんだん距離が離されていくエピソードとかめちゃくちゃ上手いと思った。読後感がとてもよかった。

晴れたので15時頃出かけることに。雨傘ではなく日傘をさす。行ってみたかったカンダコーヒーにやっと行けた。こじんまりした縦長の店内、開け放した入口の扉から光が入り込んで落ち着く空間。普段飲み物はホットしか頼まないけれど、冷房がきつくなくて扇風機の風が心地よかったので、アイスのゲイシャを頼んでみる。レジ横にあったアーモンドクッキーも。

美味しいアイスコーヒーをゆっくり味わいながら、日記屋月日さんで購入した三輪亮介『蒸し暑くなるひとつ手前の朝5時に』を読む。アンソロジー『生活の途中で』は読んでいたけれど、三輪さん個人の日記本は初。同じ映画を見ていたり同じイベント(文学フリマ)に出ていたりすると、お話ししたことはなくても親近感が湧いて嬉しくなる。
いい日記。本当にいい日記で読み終えるのもったいないと思いながら読み終えた。100円の桃と98円の梨についての記述が特に好き。

帰りに近所のスーパーに寄る。もちろん桃が買いたくなったけれど、2個で598円だったので諦めていつも通りバナナを買った。

夜も昼間作ったマグマを食べた。久しぶりにしっかり筋トレをした。冷房をかけても汗だく。一週間ほど前まで冷房をつけずに筋トレしていたのが信じられない。5分のメニューを3セットこなすのにインターバルで倒れて一時間くらいかかっていたの、今思えば脱水でばてていたんだな。

今日をもって私の夏休みは完全におしまい。明日から仕事が本格的に始まる。ベタに「夏夜のマジック」と「夏が終わる」と「若者のすべて」を聴いてしんみりするなどした。10日後にはSeptember祭りをしているに違いない。基本的にサブスクをそういう使い方しかしていないんだけど何かが間違っているような気がする。


8月24日(月)香水と映画

始まってしまった仕事。行きたくなさすぎて朝、家でコーヒーを飲みながらひたすらだらだらした。出社してからもひたすら憂鬱すぎる。
こうなることを見越して、今日は夕方からヒューマントラストシネマ有楽町でT氏とブックスマートを観る予定を入れていた。

早めに職場を出て、行ってみたかった香水屋に向かった。もちろん一人で。香水を選ぶのに男がそばにいたら邪魔なだけだ。めずらしくヒールを履いて、久々にちゃんとしたハンドバッグ。

おっかなびっくりどきどきしながら訪れた銀座の香水屋の店員さんは、お高くとまった感じは全然ないのに、配慮に満ちた素敵な接客をしてくれた。いくつか薦めてもらった中から、自分の肌にのせたときにすてきだなと思える香りがあったのでそれを購入した。

もちろんネットで前情報を多少仕入れてから行ったのだけれど、そのブランドは一人一人に先入観なく香りを楽しんでもらいたいということでトップ〇〇、ミドル〇〇、というようなデータは非公開だった。試させてもらった香りについて感想を言ったときに、店員さんが蘊蓄を語るのではなくて「〇〇とお感じになったんですね」と言ってくれるのが、香りの楽しみ方に正解はない、というスタンスを体現しているようでとても素敵だなと思った。今、私は詩の教室に通っているけれど、目に見えない香りを楽しむのは詩の鑑賞と近いのかもしれない。頭で考えたり背景知識を持っていなくても自分なりに味わっていいし、人によっても時間の経過やその日の体調によっても感じ方が変わるという意味で。

買った香水とは別のものだけれど、「この香りはなんだかとても好きかもしれないです」って私が言ったときに、「これは強い女性をイメージして作られたものなんです」って言ってくれたのはちょっと泣きそうになった。

ここ数年、香水についてはかなりネガティブな思い出が多くて香水ジプシーになっていたので、それを塗り替えることができて嬉しい。「香水の匂いがきつい」って言いがかりクレームつけてきた男(そいつの母親の方が全然きつかった)のことも、初対面で人格否定してきた某カウンセリング香水屋のことも全部どうでもよくなったわ!!!(じゃあ書くな)

その後T氏と落ち合ってブックスマートを観た。前評判通りのいい映画。公立校のあの雑多な個性が入り混じる感じがとても懐かしい。主人公と似た感じの、優等生的なぽっちゃりした同級生を思い出す。
主人公の二人の、ドレスアップしたときにお互いをめちゃめちゃに誉めあって、相手が自分を卑下したら本気で怒る関係が本当に本当に最高。スクールカースト前面に押し出してヒエラルキーが同じくらいだから仕方なくつるんでますみたいな感じとか自意識ゆえの自虐とかもう飽き飽きなんですよね。自分や友人を大切に思っていて、そこが揺らがないからこそパーティーに行く勇気が持てて、そこで受け入れられて、クラスメイトたちとちゃんと向き合えるっていうの、本当に希望があってよかった。あとニックとライアンは多分そんなに深い仲じゃないと思うよ! 多分その場のノリ的なやつだよ!
教師とか親とか「大人」の描かれ方にちょっと思うところがあった。みんな個性的というかユーモアある人で、基本的にみんな最初から最後まで主人公たちの味方なんですよ。いや、「大人はわかってくれない」みたいなのも食傷気味ではあるから、それはそれでいいんだけれど、女教師は最初から最後まで肩入れしすぎだなあとか。あと生徒とヤッちゃだめ。

香水を買って、いい映画を観たら完全に仕事がどうでもよくなった。ステーキハウスでいい肉を焼いてもらって赤ワインを飲んで帰宅。眠る前に買った香水を手首に吹きかける。服やメイクでは身につけることのないオレンジ色の液体が、あっという間に肌に馴染んでいく。うっとりと、眠る。

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