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性欲、数、身体、詩 2020/07/19-22

7月19日(日)

久々の2連休がうれしい。目覚ましが鳴るより早く、いつもと同じ時間に目覚める。読むのを楽しみに取っておいた和山やま『夢中さ、君に』を読んでから、ヨーグルトと作り置きのコーヒーで朝食。24時間営業のダイエーに食材を買いに行く。日中の暑くて混雑している時間に行くより理にかなっている。

帰ってきて、炊飯器で沼を錬成する。鶏肉&鯖缶。

調理中に、予約していたfoufouのワンピースとAmazonで購入したフォームローラーを受け取る。foufouのワンピース、絶対似合うだろうと思って買ったけど、予想以上に着心地がよくてうっかり着たまま寝る。横になってもまったく皺にならなくて最高。

炊飯器に入りきらなかった具材を卵でとじて適当な昼食を食べる。

支度をして弟夫婦の家へ。二駅ほどしか離れていないのだが、うちの両親が車で行くというので私の家の前まで迎えに来てくれた。両親に会うのも久々だ。

正月ぶりに会った姪はぱたぱたくるくると家中を走り回り、パパやママやアンパンマンやごめんねなど、いろんな単語を発するようになっていた。

うちの母が手作りのフェルトのおままごとセットと布絵本をプレゼントすると、姪は最初こそいぶかしがっていたけれど、楽しそうに広げて遊び始めた。フェルトのポットからフェルトのカップに見えないお茶を注ぎ、カップを義妹に渡すことを繰り返す。弟が「くださいな」と言っても、渡すふりをして渡さなかったりする。弟、姪に遊ばれている。フェルトのホットケーキにはちゃんとフェルトのバターを載せて、ホットケーキの出てくる絵本を持ってきて指差してこれよ、と見せてくれる。天才かもしれない。

弟が得意げに、「なー、○○ちゃん可愛いだろー」と言ってきて、いやなんでお前が得意げなんだよと突っ込むも、実際に世界一可愛いのでまあ仕方ない。こんなに可愛い子見たことない、誰に写真を見せてもそう言われる、街中でもしょっちゅう声をかけられる、そりゃあそうでしょうねえこんなに可愛いんだから、と大人全員で言い合う。「パパだいすき」「ママだいすき」と発語している動画を弟が見せてきて、それを見ながらまたわいわいしていると、姪も自分の動画でみんなが盛り上がっているのがわかるのか自慢げである。

姪は、愛育ドールのネネちゃんにミルクをあげたり、おままごとのときに自分の横に置いたり、自分のオムツ交換のときにはネネちゃんも全裸にしておまるに座らせたりしていた。生まれてからまだ2年も経っていなくて、自分がお世話をされている側なのに、自発的に人形のお世話をしたがるのが本当にすごいなと思う。大人がしていることをただ真似ているだけとも思えない。手を洗ったり身のまわりを片付けたりも進んでやるらしい。

32年生きてきて、ケアワーク的な仕事が致命的に嫌いな上に、自分の面倒を見ることすら面倒くさいと思っている私は一体……。昔は姪と同じように人形を慈しんだりおままごとしたりしていたはずなのになぜなんだ。

夏のおわりに第二子が誕生予定なので、大人たちはそれについての打ち合わせをしている。私が物理的に役に立てることはないので、ハイブランド子供服の課金に精を出そうと思う。

帰ってフォームローラーの上で全身を転がしてみた。凹凸が多いものにしたのでかなり効く。膝裏や脇などは載せるだけでビリビリ痺れる。凝り固まった背中の下で縦横に転がすと、肩甲骨まわりがほぐれていってめちゃくちゃ気持ちいい。ぼこぼこと盛り上がっている背中が、整体やマッサージ直後のようにすっとまっすぐになっていて感動。今までゴルフボールやボールペンや電車の手すりで必死に圧迫していたのはなんだったんだ。1000円ちょいだしもっと早く買えばよかった。

フォームローラーの使い方を説明する動画を漁っていたら、声と顔が好みすぎるお兄さんがいて、結局そのお兄さんの動画を見ながら2時間くらいフォームローラーを転がしていた。顔のたるみ改善動画は、フォームローラーに側頭部を載せて横たわるお兄さんの顔のドアップが写るので添い寝してるみたいな気持ちになる。そして床に手をつき、ローラーに前腿や尻を載せて前後に身体をゆするお兄さんを見ながら行為中のいろんな体位を想像してしまって、久々に自分の性欲を自覚する。

側頭筋や胸鎖乳突筋を緩めて顔はキュッと小さくなったし、筋トレと凝りでがちがちだった体は柔らかくなったし、たぶん無駄に女性ホルモンが分泌されて、エステ後のように身体の調子がいい。

7月20日(月)数が気になる日々

目覚ましが鳴る前、6時頃にぱっと目覚める。コーヒーを淹れ、ヨーグルトを食べる。
昨日無性に食べたくて買ったかつおのたたきを生姜醤油に漬けたものを、玄米に載せて食べる。久々に朝からお粥じゃない炭水化物を食べた。案の定お腹が重くなる。
洗濯をする。
TOLTAマイナンバープロジェクト『閑散として、きょうの街はひときわあかるい』を読む。コロナ禍の1ヶ月間、参加者の詩人が共有のグーグルスプレッドシートに匿名で書き込んだテキストを、編集部が詩集として構成した本。「数」について考えるプロジェクトで、それぞれのテキストに様々な数についての記述が出てくる。日付、今日までの死亡者数、カクヤスの電話番号、Apple Pencilの値段、遊具の対象年齢。
「私の葬儀は密葬なんかにせず、盛大なオンライン葬儀にして一〇〇人くらい参列してほしい」の直後にくる「セブンのマニキュア、四個で一三二〇円。本日の無駄遣い」という記述。どちらも自分が思考したこと体験したことではないのに、わかる、その飛躍のかんじを知ってる、と思う。得体の知れない病気がすぐ近くにあるかもしれないしないかもしれない非日常な日常の中で、自らの死を思ったり、その次の瞬間には近所のコンビニで散財したりする感覚がリアルだった。
私は、四月から毎日体脂肪計に乗って体重や筋肉量を連携アプリで記録し、六月から家計簿アプリもつけている。職場では毎朝出勤簿に体温を記録している。感染者数の増減を世間話感覚で話題にしたり、この状況下でも数字に表れる業績を競い合っている同僚が嫌いでそういう人たちから距離を置きながら、私自身も「数」を気にしている。そしてこの状況下でそれが加速しているのだった。

守秘義務があって職場ではなかなか進められない仕事をちょこっとやってから、3年ぶりにこちらに帰ってきたあげは嬢宅に遊びに行く。子が成長していてたくさん喋るので驚く。そして、子が話す幼児語を無意識に模倣して発している自分に気づく。「めんめん美味しい?」とか。まあでも普段の仕事でもそういうことをわりとやっているな。確固たる文体や喋り方なんてない。

子が自分の機嫌を自分でとれるのはSNSをやっていないからでは? という暴論。選挙と訃報と炎上案件の度に落ち込むからSNSはやらないほうがいい。
こういう状況下で、普段は気にしないよその家の金の使い方とか、いろんな業界の逼迫した財政状況とかが可視化されて云々(ぼやかし)、という話をする。ここでも数の圧力。その他にもいろいろSNSや日記に書けない話などをした。ぼんやり思い描いていたけど全部パーになったここ数年の人生プランなど。

あげは嬢が16時からイベントを走るというのでその前にお暇する。子に「ぐりちゃんはそろそろ帰るね」と告げるとそれまでシャボン玉したり絵本を読んだり楽しく一緒に遊んでいたのだが、あっさり「ばいばーいまた遊びに行くね」と笑顔でお別れ口上(別れ際の決まり文句らしい)を述べてくれた。直近二回会ったときはお別れを言ったらふいっと真顔になってしまって、それが妙に心残りだったので、今別れてもきっとまた会えるとわかってくれたのなら嬉しい。

帰りに北千住ルミネに。せっかくボーナス出たのに感染増加が怖くて、池袋新宿を回避して全然買い物していなかったので、セールで可愛い色柄物の服でも買いたかった。けれど何も買えず、結局近所にもあるユニクロで白シャツとスマートアンクルパンツを購入する。

『文藝』を読み進めて寝る。書き物はできなかった2連休。メイちゃんごめん(原稿的な意味で)。

7月21日(火)身体について語らないとダメになる

フォームローラーを使い始めてから、腕や足が柔らかくてほわほわで触ると気持ちいい。パソコンに向かう仕事が増える時期だけれど、向かっているとだんだん肩周りがこわばってくるのがわかって、体勢変えなきゃ、緩めなきゃ、となる。ガチガチに凝っているときには凝っていることにも気づかないので、緩んだ状態をデフォルトにするのは大事。
テレワーク明けから続いたレギュラーな仕事は一山超えた感がある。あとは体調管理に気をつけてイレギュラーな仕事を緻密にやっていくだけ。
都知事が4連休は不要不急の外出を控えろだって。連休でもないしどこに行く予定もないとは言え、本当に腹が立つ。
ほんとうにわたしたちは何を楽しみに生きたらよいのでしょうね。
もっと痩せたいとおもいつめているわけじゃないんだけれど、身体改造の行方についてずっと考えていて。何度も体脂肪計の連動アプリの数値を見てしまうし、昼間どか食いしては罪悪感で夕飯ヨーグルトだけとかになっちゃうし、道行く人の体型まで気になったりして、多分精神状態としてあんまり良くない。ここらで一回自分の状況を言語化しておいた方がいいような気がする。というわけで今度の日曜夜は「身体」をテーマにツイキャスしようと思う。


7月22日(水) 詩の教室二回目

朝、creemaで、在宅期間中からずっと気になってほしかったけれど書いそびれていた個人作家さんのリュックを思い立って購入した。完全受注生産で、完成まで2ヶ月かかるのがネックだったのだけれど、先日ワンピースの到着を待っていて、未来の自分への贈り物があるのはわくわくして良いなと思ったので思い切った。色的にも秋の服に映えそうだし、涼しくなった頃に手元に届くのを楽しみに待ちたい。

仕事をこなす。10回は見直したはずの書類の数字が間違っていて笑える。自主的にやっている仕事は誰にチェックしてもらうわけにもいかなくて、とても困る。

18時に退社して詩の教室に向かう。最近の感染者数増大を受けてzoom開催になるかも、という話だったが、今日は対面で行われることに。
冒頭で、大崎清夏さんの詩が紹介されて嬉しい。
参加者が事前に提出した課題の詩の合評会。気になった三作品を選んで投票し、時折自分が選んだ詩についての感想を求められる。大学院のゼミに少し近い雰囲気。
先生が一つ一つの詩を講評してくれて、自分が何気なく読み飛ばしたフレーズを丁寧に解釈しているのを聞いて、そういう読みができたのか! と感動する場面が多々あり、今日もメモを取る手が止まらない。
私の詩は、普段なら日記にみっちり書くような印象的な出来事を、比喩やオノマトペを用いておとぎ話的に仕上げたもの。先生は、「書かれていることの全部を読み取れなかった」としながら、皮膚感覚が表れた印象的な表現をあげてくれた。参加者の中にも、この詩を選んでくれた人がいて、とても丁寧に読み込んで解釈してくださっていて、興奮で全身の血の流れが早くなった気がした。全部伝わらなくていいと思って、ただわかりやすいだけじゃない表現を模索していたけれど、伝えようとしたことか伝わったり、伝えようとしていたことを超えるものを感じとってもらえたことがとても嬉しかった。詩の全体に魔法をかけてしまうと、それがイメージなのか現実の出来事なのかわからなくなる、という言葉を心に刻む。今日もらったアドバイスを生かして次の課題もがんばろう。

#日記 #エッセイ #詩 #読書 #漫画

写真は、ダイエーに買い物に行ったときに遭遇した猫三匹。

日記を読んでくださってありがとうございます。サポートは文学フリマ東京で頒布する同人誌の製作(+お酒とサウナ)に使わせていただきます。