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生きることと幻想の間

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#詩

雪の日の湖

雪の日の湖

雪が。降ってくる。周囲には誰もいない。木々がまどろみの中で。口ずさむ音。沈黙。沈黙という音――。狐の足跡が湖から続いている。湖から生まれた狐、を想像する。品のいいその尾は黒く、そして銀色に艶めくだろう。雪の降り止まない日の、湖に落ちた、木の影のような黒。晴れた日の、凍えるほどに寒い夜の、星の光。

幻影を追いながら歩く。動物になったつもりで、ひそひそと、足跡をつけていく。防寒具に包まれた身体は寒く

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