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2022年2月の記事一覧

ギンリョウソウと父親の話

ギンリョウソウと父親の話

あの子の心の、奥深く窪んだところに、硬質な何かがひっそりと息づいている。それは、清らかでうつくしい。あの子の祖父も持っていたものだ。何者にも属さない、孤高のもので、同時に、ギンリョウソウのように、生きている存在の、あらゆるものを腐食させ、溶かし込む大地から析出されてくるものだ。生き難さのしるしのような何か。どうかそれが潰れてしまいませんように。行く先々で、小さな奇跡が虹のように起きて、あの子の道を

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world

world

家と庭(とその周り)で完結してしまうなんて、そんなこと許せないような気がしていたけれど、家と庭の中って見方によってはほんとうに広くて、ひとつの森と宇宙があって、エミリー・ディキンソンもこういう気持ちだったのかもしれない、とふと思った。

広い世界を見に行かなければいけないと思っていた。海を飛び越えて、もっと遠くへ。

でもいまはここで、遠方を見る方法がわかってきたから、「そこ」に行けなくたってだい

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過去の日記3

過去の日記3

噛み砕いた夜の、片隅の白い星、散り散りになった祈りのなり損ない、痛み、痛みだけがわたしを鮮明にする、命を燃えあげる、残酷、蹲り祈る、祈る、いまわたしを支配するものは何だ、それを誰かが神と呼んでも、わたしは首を振る。

絶望は雲一つない青空のもとに与えられる。わたしはわたしがどこへも行けないことを知っている。知っている。それは破壊される。生きろ、生きろ、生きろ。血反吐を吐いて痛みに呻き神による支配を

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過去の日記2

過去の日記2

巨大な川を渡った。

夢の中で私は革命家だった。仲間は数匹の猫。「鏡の間」に着けばゴール。私たちは走り、叫んだ。傷つき、死にかけ、仲間は斃れた。それでも生き残った仲間と先へ進んだ。

生きろ。走れ。傷ついても前へ。世界を革命しろ。
あなたが生きて呼吸するだけで世界は変わる。蝶の羽ばたきが嵐を呼ぶように。あなたの鼓動が世界を変える。

「鏡の間」は白い空間だった。そこには癒しの術を持った人々がいて、

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