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過去の日記2

巨大な川を渡った。

夢の中で私は革命家だった。仲間は数匹の猫。「鏡の間」に着けばゴール。私たちは走り、叫んだ。傷つき、死にかけ、仲間は斃れた。それでも生き残った仲間と先へ進んだ。

生きろ。走れ。傷ついても前へ。世界を革命しろ。
あなたが生きて呼吸するだけで世界は変わる。蝶の羽ばたきが嵐を呼ぶように。あなたの鼓動が世界を変える。

「鏡の間」は白い空間だった。そこには癒しの術を持った人々がいて、彼らは私たちを快く迎え入れてくれた。彼らは微笑んでいた、と思う。

私は誰かに「生きろ」と言ってほしかった。たぶん、ずっとそうだった。そうしたら季節の変わり目の夜に、贈り物のように、夢を見た。魂が、それと他の誰かが、「生きろ」と言ってくれているのがわかった。特別な夜だった。感謝。


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雑音から耳を塞げ。触れたくないと思うものには触れなくともいい。向き合うべきものは雑踏の中にはなく、あなたそのもの、あなたといういのちに、まずあなたは向き合わなければいけない。

あなたの瞳には凪いだ海が広がり、広がり続け、時に海底から火を噴き上げ、星々が落ち、光る魚の群れが泳ぎ、空には鳥の影が渡っていく。豊かだ。あなたの心は、魂は、世界は。あなたが誰かを自分を傷つけるときでさえ、あなたの瞳には海が凪ぐ。鷗の鳴き声が聞こえるか?

あなたはひとりではなく、ひとりであるときでさえ、その身に、瞳に、世界を抱いている。海を抱いている。そこに息づくものたちがいる。

鷗の鳴き声が聞こえるか?


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肌を刺すような陽光に白い浜辺を思い出す。砕けた珊瑚が美しい骨のように積み重なっていた。裸足で踏むととても痛かった。黒い岩場を抜けると見える透明な海、透明な空、透明な心、透明な距離、透明な過去。

わたしたちは指先ひとつ触れ合うことなく、白い浜辺をただ歩いた。植物の生命力は強く、交感は絶えず行われ、浅瀬は楽園まで続いていて、岩場には猫の死骸が横たわっていた。向こう側に。そのまま歩いていけそうだった。繋がっていると思った。

生も死もそこにはなかった。ただあるべきものがあるべき場所に在った。それはわたしたちの眼には見えず、感覚として顕在していた。

あのとき。

ただ幸福だったあのとき。