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美術館で価値観の相対性に対面する【日記:2023/3/24】

近頃まで閉館していた「国立西洋美術館」に行きました。
平日の昼間でしたが賑わっており、チケット売り場には長蛇の列が。
普段から美術館に行くような高尚な人間ではないのですが、最近読んだ
美術展に関する本が割合に面白かったので、興味が湧いてしまいました。

まずは企画展として行われていた『憧憬の地 ブルターニュ』という展示。
こちらはブルターニュ地方という、フランス北西部の地方に焦点を当てて、
その地方に集った芸術家の当時の作品を集めて紹介するという建てつけ。
19世紀初頭のロマン主義の画家から始まり、1920年代ごろまでの画家がおおよそ時系列順に並べられていましたが、メインとしては印象派や後期印象派、それらに影響を受けたナビ派の人々などが中心かなという感じ。
思ったよりも狭い時代を集めてきたなという印象ですが、その分画風の変化やグループごとの特色などが分かりやすい気がして良かったです。

気づいたら2時間ほど展示を見ていたので、休憩がてらお土産コーナーに。
美術館の土産物は凄い、と聞いていたのですが想像以上でした。

詳しい品目はこちらから見ていただきたいのですが、下手なアニメイトよりも充実したグッズ数です。
ポストカード、絵葉書、クリアファイルや本など、美術館らしい品に始め、
マスキングテープ、ボールペン、付箋、イヤホンジャックにネクタイなど、あまり関連性が見られない雑貨が中継ぎを務め、果てはもはや美術館に関係がないフランスの土産物、エッフェル塔のフィギュアやミニチュアのティーセット、トートバッグから入浴剤までなんでもありでした。
特に推されている美術品「考える人」などは35品目も売られているもよう。
炭治郎……は厳しくても、不死川実弥さん辺りとはいい勝負になるかも?

個人的に良いなと思った「ドアサイン
誰にも邪魔されたくないときに、部屋の外に引っ掛ける用らしいです。
部屋を開けて入って同じポーズされていたら少し笑う。

少し足を休ませ、続けて向かうのは常設展
企画展に比べると、分かりやすい”これ”というテーマはないので一言で形容するのは難しいですが、15世紀のキリスト教美術の時代から、20世紀のキュビズムや抽象絵画まで幅広い時代の絵や彫刻が飾られていた印象です。
企画展にはなかった、古典主義的な絵や前衛芸術的な多くてかなり雰囲気が違いました。
通して見て最初に頭に浮かんだのは、『絵上手すぎ』という感想。

例えばこちらは、バン・デル・アメンさんという17世紀スペインの画家が描かれた絵なのですが、果実のつや感がえげつない。
ブドウなんか一粒毎に細かく描き分けられており、現実のスーパーで売られている巨峰なんかよりも断然美味しそうに見えるぐらいです。

日本では印象派は人気で、私も実際好きなのですが、こういった絵たちを順々に眺めていると、当時のサロンの人々が強烈に批判をしたことにも得心がいきます。
印象派を認めなかった人々と言うと、頭の固い権威主義者というイメージがあったのですが、それ以前の歴史に浸かってから見たことで、印象派が持つぱっと見の稚拙感を再確認できたような気がしました。

クロード・モネの睡蓮。
もちろん、筆触分離などの技法や光を描こうと思った心意気、
美術史上の意義などは素人ながら勉強させてもらいましたが、
仮に小学3年生の雄二君が描きましたと言われたら「子供にしてはよくできている」
と言いたくなってしまうぐらいには難しい絵。

そんなこんなで常設展も一通り周って外に出ると、時刻は17時になっていました。12時ごろに来たので、およそ5時間ほどいた計算になりますね……
色々考えながら見たので、少し疲れましたが楽しかったです。

普段美術品なんて見ない、もしくは見ても単発で見るだけがほとんどなので、こうやって歴史と共に順番に見て行けるのはいいですね。
移り変わる画風と評価、当時は下手くそ扱いされていたものが時代を下っていって名作と呼ばれるようになる。美的感覚、価値観そういったものは所詮すべて相対的であると言ってくれているようで救われます。
変わらないのは自分の中の価値基準だけ。
いつでも自分の中の美の信念を信じて生きていきましょう。
そんなことを思わせられる、ひと時でした。
国立西洋美術館、オススメです。


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