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託すことの幸福【日記:2023/3/31】

進撃の巨人で一番好きなシーンの話がしたい。
原作で言えば20巻81話、アニメで言えば3期の16話、獣の巨人の投石攻撃を前に絶体絶命になった調査兵団、最終作戦実行前のエルヴィンとリヴァイの会話部分です。

悪魔と呼ばれ、今まで自分や他人の命をも冷酷に消費してきた超人エルヴィンが初めて見せる人間的な苦悩と欲望。
調査兵団団長としての責任感、罪悪感、それとせめぎ合う自分と父の夢。
手が届く所まで来てしまったが故の悩み。
それまで常に即断即決だったのは、まさか夢が叶うまで自分が生き残るとは思っていなかったから。
彼もまた、優秀で運が良いだけの人間にすぎなかった、そんなことが明らかになるシーン。

最終的に彼は、調査兵団団長としての責任を全うする道を選び、新兵達を伴って死に向かって特攻することになるのですが、その直前のこの表情がどうしようもなく印象的でした。
ずっと自ら選ばなくてはいけなくて、大切な仲間の命を物のように勘定しなくてはいけなかったエルヴィンにとっては、最後に最も信頼できる男に命令してもらえて、思いを託すことができたことはこの上ない幸せだったんでしょうね。

妻や子を得る道を捨て、そして自分を導いてきた夢すらも捨てたエルヴィン。その末期を引き継ぐのが、かつて彼を殺そうとしたリヴァイだというのも不思議な話です。
リヴァイにとっても、この場面は冷静ではいられなかったはず。
彼にとっては、冷静な策略家こそがエルヴィンで、こんな子供のような事を言う人間ではなかったでしょうし。
普通なら怒る場面、だがむしろリヴァイはエルヴィンを労い、敬意を表するかのように膝をつく。
それは長年の悪魔としてのお勤めに対する敬いか、死にゆく友への弔いか。
リヴァイは寂しげな顔を一瞬で消し、強い口調で断言をする。
エルヴィンが今まで告げてきたように。

このシーンには、そんな無言の交錯があるような気がして本当に好きなんですよね。アニメなんかこの話前後だけ、数十回見ています。
一ファンとして、エルヴィン・スミスを最後まで、エルヴィン・スミスとして死なせてくれたことには本当に感謝しかありません。

家族や子供などの血の繋がりではない、技術や作品そのものでもない、自分が消えても残る何か。
それを誰かに託して死ぬことが、私の理想の死にざまなのですが、目下リヴァイみたいな友達がいないので困っています。
どなたか、一人で一個旅団並みの戦力があるよ、という方いらっしゃいましたらご連絡お待ちしております。


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