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コンビニ人間、家族人間、仕事人間、恋愛人間【日記:2023/4/24】

あの名作「コンビニ人間」をようやく読みました。
普段は漫画、ラノベ、アニメとオタクBook、オタクMovieばかり見ているので一般文芸は久しぶりです。
(たまに読んでもカッコつけた古典文豪の作品ばかりだったりしますので)

感想としては「さすが芥川賞受賞作!」って感じです。
エンターテインメント系とは違って出来事的には大したことは起こっておらず、キャラも魅力があるというよりはむしろ嫌な感じなんですが、読ませてくる引力が非常に強い。
面白いというよりは興味深いというタイプですが、非常にオススメです。
(excitingよりもinteresting寄りの内容というと伝わりやすいか)

話としては、コンビニという場所と普通という概念を中心にして進む。
主人公はコンビニ勤務歴18年、実のところ感情というものを何も分かっていない結構特殊な人間です。変だと周りが治そうと構ってきて面倒なので、普通を取り繕う。ファッションや言動は同僚のコピーで、コンビニで働くことのみが行動原理。コンビニのためにトレンドをチェックして、コンビニのために早く寝る。同僚とのコミュニケーションも円滑な業務のためで、周囲が怒っているときは、なんとなく表層的な同調だけして結束を高める。
主人公は、コンビニを唯一自分が社会に参加できる場所、コンビニ店員になったことは自分にとって第二の誕生であるということまで言っています。中々ぶっ飛んだ主人公ですよね。言峰綺礼以来の衝撃かも。
そんな一般的には異常と言える主人公が、世間の普通に対して足を踏み入れていきつつも、結局自分はコンビニ人間以外の何物でもないことを再度認識するという着地なのですが、まあ細かいところは読んでみてください。

こういう破綻者的なキャラクターに対して、安易に共感したなどと言うと、変人ぶろうとしている感が出てしまってダサいですが、個人的にはちょっと分かるなと思ってしまったり。
作中で主人公は地元の友人たちとのバーベキューに行き、そこで「36歳なのに結婚しないんですか?」というようなひと悶着に巻き込まれるエピソードがあるのですが、こういうのは現実にも結構あって面倒だったりしますし。

そういう時、私は「中々いい人いないんですよね。たはは……」などと適当に誤魔化していますが、いつも疑問に思っている。
恋愛、結婚がまず前提になっていることが。よしんばそれは良いとして、愛が先ではなく、彼氏彼女が欲しい、結婚したいが前に来ることが。
二次元の恋愛だと先に大事件が起こったりして、ヒロインの命を救ったり心を救ったりするからそういう関係に進むのは理解できるんですがね。
周囲がそうであるから、規範に急き立てられて恋愛・結婚をしようとするのは、別の形のコンビニ人間でしかないのではないかと思ってしまいます。・

そうやって考えると、意外とコンビニ人間の亜種は身近なところに一杯いると言えるんですかね。
家族のために生きよという規範にしがみつく「家族人間」。
仕事にしがみついて、他の大事だったものを置き去りにする「仕事人間」。作中で主人公のコンビニ人間には、一度コンビニを退職して抜け殻のようになるのですが、子供が家を出て行って、定年になって同じように無になってしまう人間がいるとはよく聞きます。
これもある意味で、規範を失ったコンビニ人間と同じなのかもしれません。

哲学者サルトルが残した言葉に「人間は自由の刑に処せられている」という物がありますが、皆それを無意識に察知して自由の幅を狭めているんでしょうかね?
まあ一から全てを揃えるのは大変ですから、フランチャイズも止む無しなんでしょうけれども。ただ私としては、自分の心は自分で直営してたまには変な商品を大量発注してしまうような、そんな生き方をしたいと思ってしまいますが……


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