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箸を投げる

誰の声だろう。獣の咆哮か、と思えば、私だった。
持っていた箸を投げて、泣いた。
頭の中には、私が初めて10メートル泳いだ日の夜の父の顔とチョコレートケーキ。母が作るお弁当に入っていた甘い卵焼き。
私は悟る。
私は全く冷酷な人間ではなく、まだ心は壊れていなかったことを。
今日表れたのが真実の心なんだろう。でも私は少し前の“テトリス主義”でいた方が楽なので、自分を誤魔化し続けようと思った。
本当の気持ちを見失わないように気をつけながら。
この時期はナイーブになるから、本当の気持ちが顔を出してしまったんだろう。
でも同時に、気づいてよかったと思う。辛かったことには違いないけれど。
眠るのが怖い夜。あたしンちの1時間スペシャルに救われている。私はこういったものを心から愛している。
私は今夜のような苦しみを痛いほど知っているから、自分自身も眠れない誰かの力になりたいという気持ちがある。そのために今の自分ができることはなんだろう。
明日の苦しみが過ぎ去ったら、もう一度考えてみたいと思う。
明日こそは“テトリス主義”で全てを淡々とこなし、大好きな家に帰ってこよう。

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