#1-1「NODA・MAPとの出会い」
私が野田秀樹の作品にはじめて出会ったのは、今からもう10年前。高校に入学したばかりの15歳の時です。
私の地元には、国内でも有数の舞台芸術専門の劇場があり、近隣の中学校や高校を対象とした招待公演にとても力を入れていました。幸運にもその恩恵にあずかり、13歳ではじめて演劇に触れた私は、気がつけばすっかりその世界に魅了されていました。
2012年某日、NODA・MAP番外公演『THE BEE Japanese Version』の凱旋公演が地元の劇場で上演されました。「演劇の世界では有名な人だよ」という噂を頼りに、私は当日券を買うべく劇場に向かいました。
本作は、筒井康隆の短編小説『毟りあい』を原作に、アイルランド出身の劇作家コリン・ティーヴァンと野田秀樹との共同脚本によって制作された作品です。凶悪な脱獄囚によって、妻と子どもを人質に取られ立てこもり事件を起こされた平凡なサラリーマンが、反対に脱獄囚の妻と子どもを人質に立てこもりを行い応酬する。9.11、アメリカでの同時多発テロ事件に触発されて生まれた作品で、断ち切れない報復の連鎖を描きます。
指に見立てた鉛筆を一本一本切り落としていく場面など、残虐で暴力性の強いストーリー展開は、10代の私にはあまりにもショッキングで、ラストのシーンで地響きのごとく迫り響く蜂の羽音は、10年経った今でも強く印象に残っています。
ただし、当時の私は作品の下地にひかれている題材の意味も知らず…。ストーリーの衝撃さや難解さに呆気に取られているうちに、約80分弱の上演時間はあっという間に終わってしまいました。
それから数年後。偶然、映像でNODA・MAPの作品を観る機会があり(最初に観たのは『半神』『贋作 罪と罰』『オイル』などだったと思います。)、そこで「野田秀樹の世界」にどんどん引き込まれていきました。
相変わらず自分の中でうまく消化しきれない部分も多かったですが、言葉遊びにあふれた台詞回しや、意味合いが何重にも重なる緻密で多層的な物語の構成に度肝を抜かれました。「今の自分ならあの時よりも理解できるかもしれない」と自分の中で謎の手応えを感じた私は、熾烈なチケット争奪戦に臨みますが、さすがNODA・MAP。そう簡単にチケットは取れません。
2012年に観た『THE BEE Japanese Version』から約7年後。待ちに待った野田作品との2度目の再会は『Q:A Night At The Kabuki』でした。
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