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その男の結末«コンセクエンス»を見届けろ『ジョン・ウィック:コンセクエンス』感想

復讐。ニンゲンが抱くその強くドス黒い感情は、古来より物語の動機として多用されてきた。誰しもが大なり小なり抱く感情ゆえに、人々は共感しつつも、時に行いの是非を議論する。復讐モノ、大好きです。闇属性が付与されるから自然とカッコよくなるし。現実の日常ではやってはいけない、だからこそフィクションで観る楽しさがある。

特にジョン・ウィックは、復讐の動機が良い。裏社会を無理して抜けてまで愛した妻の最期の贈り物である一匹の子犬を殺されたから、という他人から見れば「たかが犬(と車)だろ!?」思わずにいられない動機。その世間との考えのギャップが、逆にジョンがどれほど妻を愛していたか自然と理解できる。ただ単に妻を殺されたから、というプロットではここまでシリーズは続かなかったと思う。

前置きが長くなっちゃったけど、今作『コンセクエンス』の感想。
3時間近くある上映時間の半分…いや7割近くがアクションシーン。しかも序盤の舞台は大阪で、いわゆる「トンチキ日本」描写のオンパレードで既に面白い。ネオンライトがゴテゴテ光る大阪、桜、ヤクザめいたホテル従業員が日本刀と弓持って戦う、なんかゴツくて強い力士、聖印があるわけでもないのに友情に厚いシマヅこと真田広之、そこかしこにディスプレイされてる鎧兜と日本刀、忍殺に出てきそうなピッチリ戦闘服を着たチャンネー(割と強い)。そしてディスプレイされてたヌンチャク(なんで?)で無双するジョン・ウィックことキアヌ。もう序盤からフルスロットル。

ヌンチャク戦闘シーン、めっちゃ長かったし異様に強かった。

あまりのコテコテなトンチキ日本描写で笑っちゃうのに、出演してる全員がキレッキレのアクションをするもんだからまぁ~~~”絵”になる。あまりにカッコよすぎて、嬉しくて笑っちゃう。

ジョンとシマヅとの間に昔なにがあったか気になりすぎる…。

そこに敵としてドニー・イェン演じる盲目の最強暗殺者ケインが追加される。大阪コンチネンタルに来たと思ったら端っこでヌードルをすすって「真面目にやれ!」と怒られたら目にも止まらぬ速さでヤクザ従業員をバッタバッタと切り殺すわ、人感センサーを駆使して盲目なのに銃を当てていく。監督がパンフレットで堂々と「座頭市やりたかった」と書いてるくらいめちゃくちゃ座頭市で、もう1の頃からそうだったけど、監督の好きな物をのっけまくってて渋滞してる。その渋滞具合にも、また笑みがこぼれてしまう。

アクションが速すぎるドニー・イェンことケイン。盲目なのが一切弱点になってねぇ…。

そしてこのケインという男の設定が良くて、愛娘を人質に取られて仕方なく旧友と敵対しなくてはならない境遇で、それが「家族のため」戦うジョンやシマヅとも重なるのが趣深い。家族の愛を利用するなんて許せねぇ侯爵(今作の敵)…!と観客の感情が一致していくのも良い。
その後もフランス行ったりドイツ行ったり、あっちこっちでドンパチで休む暇がない。

ぜんぜん知らないんだけど、凱旋門ってあんなに車がグルグル回ってるんだ?

ジョンウィックはシリーズを通して”ゲームっぽい”
クラブでモブが踊ってる中ドンパチしてもモブが全然気にも留めず踊り狂ってたり、駅構内で血まみれのジョンが歩いててもスルーしてたり、サイレンサー付きとはいえ銃で撃ちあっていても誰も気づかなかったり。一般ピーポーは背景みたいなもん。今作はその極地とも言え、ドイツのクラブではどう考えてもヤバいドンパチと尋常ではない拳での喧嘩があっても全然動じないステージの背景演出って感じだし、フランスの凱旋門を周回してる一般車はもはやアクションゲーのステージギミック。

2ではジョン自身の防御力が特殊スーツによって爆上がりし、3では敵も防御力がかなり上がった。今作でも敵は全身防弾装備かジョンと同じ防弾スーツを着て完全対策していて、遠距離からの撃ち合いではなかなか死なない。なので衝撃値の高い銃でスタッガー(怯みによる硬直)を取って超近距離で防弾出来ない首を狙って確殺する姿はもうアーマード・コア6の戦闘スタイル。

一部戦闘では見下ろしタイプのアングルの戦闘があり、完全にそれ系のシューティングアクション。Twitterのフォロワー情報曰く『THE HONG KONG MASSACRE』というゲームに影響されているらしい。その時使ってい銃も火属性付きのショットガン(ドラゴンブレス弾というそうな)で完全に一致。

もうここまで来たらジョン・ウィックの全ストーリー追体験できるゲーム作ってくれよ!めっちゃやりてぇよ!

監督が好きな物全部詰めた、と言うところでは一つ挙げるとドイツのクラブでポーカーをやるシーンが面白かった。ジョンとケイトと犬を引き連れた名も無き新キャラ暗殺者トラッカーと中ボスのキーラが同じテーブルでポーカーをする一幕がある。

古今東西、映画漫画アニメあらゆるコンテンツで見られる「敵対してるキャラ(強キャラだとなお良い)たちが一色即発の雰囲気でテーブルを囲んで賭け事をする」という本来ならカッコよくて雰囲気のあるシーン。…なんだけど、あまりに擦られすぎてどうやっても「うわw」って思われる(実際ちょっと思った)シチュエーション。でも頭の中で何百周して、これが監督が好きだったもので、どうしてもやりたかったんだなと、ある種のいとおしさを感じる。なんだかんだで、好きだよあのシーン。キアヌ・リーヴス主演だからこそ、こんなコテコテでもやっぱり絵になる。誰だってキアヌ主演に使えるならやるよ、あのシーンは。

コンセクエンス。訳すと「報い」。3の時点でちょくちょく使ってた単語。公開1年くらい前「日本語が付けられるかも?」みたいなネット記事読んでそうなったらちょっとヤダなぁって思ってたので、ラストにふさわしい副題が付いて良かった。
映画のストーリー的に因果応報のニュアンスが近いようで、これまでの沢山殺してきた報いを受ける場面もあれば、犬を助けて救われる場面もあり「よい行いをすればよい報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがある」まさに因果応報。ラストは特にそれを感じた。映画館なのに飛び上がりそうになったよ。己の行いには、必ず因果応報が付いて回る。ましてや殺し屋稼業なんて…。

因果応報は、初期から割と一貫して描かれている。
子犬を殺したロシアンマフィアのドラ息子は殺せたけど、その父親に危険な場面を助けてくれた友人マーカスを八つ当たりで殺されてしまうし、復讐を終えたと思ったらイタリアンマフィアに妻との思い出の残る家を燃やされて、イタマフィ殺せたと思ったらなんか殺し屋協会のトップに結婚指輪を取られる、自分を匿ったせいで旧友であるシマヅ(真田広之)を同じく旧友のケイン(ドニー・イェン)に殺される。

一番大切なものを守るために、戦えば戦うほど一番以外の大切なものを失っていく修羅の道。大切なモノが壊されていく表情が非常に愉悦…ではなく感情が揺さぶられる。イケメンが尊厳破壊されていくのが好きなのかもしれない。

ジョン・ウィックシリーズってちょくちょく「トンチキ世界観のハチャメチャアクション」みたいな、ともすればB級映画みたいに茶化されてる(まぁそう見てる面もある!)けど、「復讐という行為には善悪に関わらず因果応報が付いて回る」って思想が根底にあって、あの世界観も物語の描き方もジョン・ウィックという男も、そのあたりすごく真面目だと思ってる。そしてその真面目さを「カッコいいなぁ…」と毎シリーズ嚙みしめてきて、その評が自分の中で変わらずに完結したことがとても嬉しい。このシリーズが好きでよかった。そう思わせてくれた作品でした。

ホントにカッコいいよなぁ…ジョン・ウィック。
めっちゃカッコいい表情してるけど殺ししか能が無いので
内心「やばい…どうしよ…」くらいしか考えてなさそうな感じ。
そういうとこも4作目までいくともはや愛おしい。
本当に良い映画でした。
日本語吹き替えの方も近いうちに観に行きます。


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