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『幻影AP 空っぽの心臓』ドット絵と楽曲が彩る内気な少女の美しく儚い心象風景【スマホインディーゲーム】

美しい。このゲームをプレイして思ったのはまずその一言。ガールミーツガールのストーリーも、胸を締め付けられるような郷愁を感じさせるドット絵も、内気な少女の心象を投影させた楽曲も。全てが作品の美しさに昇華されている。プレイ時間2時間程の短い作品(その上無料!)ながら、非常に満足度の高い作品でした。

世界観を魅せる/聴かせる/体感させる

幻影AP 空っぽの心臓』はボカロP/イラストレーター/アニメーターの「はるまきごはん」さんの楽曲と世界観を、『アンリアルライフ』を手がけたゲームクリエイター「hako生活」さんがゲームとして表現したアドベンチャーゲーム。教室でひとり、イヤホンで耳をふさいでいる少女みかげと、その友人スピカのお話です。

「みかげちゃん、何聴いてるの?」「おすすめの曲はなに?」

みかげは、そう聞いてきた友人のために、スピカの今の気持ちに合った楽曲を渡すことがゲームの目的です。不思議なドアから行き来するさまざまな世界は、どれもが色鮮やかで、なぜか青春のなつかしさを感じるドット絵が魅力的。

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点在するスピカがいる場所や雰囲気に合わせた楽曲も素敵だ。

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ゲームがゲームである所以。それは画面に再生されている世界を、私たちが「体感する」ことにあります。相互作用(インタラクティブ)とも言う。

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ゲームの表現として特に素晴らしいと感じた瞬間は「歩いて曲を探す」であると思います。学校の廊下を歩く足音、レールの上を歩く足音、公園の砂を踏みしめる足音、水の上を歩く足、星々を渡り歩く足音。それらがBGMと重なり、まるで自分が世界の音を作っているような感覚が「このゲームの世界に没入してる」と体感させてくれます。

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あなたにとって、本当のわたしはどれがよかったの?

人生において一度くらいは「なんか面白い作品知らない?」と友人、あるいはそれ未満の人に声をかけられたことはあるだろう。

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そして往々にしてこう思うだろう。「何を言ったら正解なんだ?」と。本作のみかげも、スピカの質問に対しての「答え」を求めて世界をさまよう。

みかげという主人公の心情に共感しながら、見つけた楽曲の歌詞に思いをはせる。それが、私たちとみかげを更にシンクロさせる。そして曲を集め終えた先に待つ結末は……ここは言わない方が良いかな。

おわりに

『幻影AP 空っぽの心臓』には壮大な冒険も、衝撃の結末もありません。登場人物たちも多くは語りません。だからこそ、楽曲の歌詞に込められた想いやバックグラウンドのヴィジュアルの郷愁感が際立ちます。あんまり「泣いた」とか言うと陳腐になるのでイヤなんだけど、涙腺にきました。

『幻影AP』はシリーズ第1作目であり、5月27日にはCD、6月25日にライブという形で世界観の続きを魅せるメディアミックス手法。気になる人は公式サイトやYoutubeチャンネルを覗いてみてはいかが。



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