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地域における「関係の質」を高める共創プロジェクトの実践例〜寄居駅前妄想社会実験〜

2023年8月11日に、「寄居カオースメントまつり」という寄居駅前を舞台としたお祭りを開催しました。

このお祭りは、有志のメンバーが集まり、自分たちがゼロから考え、自分たちで企画したもの。結果、強いつながりを持つ「チーム」ができました。

ここでは、本取り組みのプロジェクトファシリテーターとして伴走した尾形が、そんな「チーム」ができるに至った約8ヶ月のプロジェクトのプロセスをふりかえり、地域活動で新たな可能性を覚醒させるソフト基盤づくりに関わる考察をしたいと思います。


もともとは「駅前の賑わいから、域内での自然・人・経済の循環を生みだすことを目指したプロジェクト」のプロトタイプの位置づけで実施したもの。

プロジェクト参加者が、「祭りをしよう!」と決めてから、駅前の空間を使って、個人またはチームで出店したいブースを自ら企画し、自ら出店。

当日は、天候にも恵まれ、全13のブースに、約200名の参加があり、思い思いに過ごした暑く熱い一日となりました。

会場となった寄居駅南口駅前拠点「Yotteco」
音楽ライブの様子
寄居に新醸造所を構えたVECTORBREWINGも出店した屋外Bar企画
ゆっくりくつろぐ来場者の皆さん
何もなかったところに、井戸水を使って、癒やしの空間が誕生!
Yottecoの屋上からみるキャンドルナイト

プロジェクトの参加者は、造園業、ガーデニング、イラストレーター、建築士、飲食関係者、などなど多様な職業の専門家が集合。

プロジェクトの成果が、ひとつの「お祭り」というイベントに集約された形ですが、得られた成果の大きな副産物として、寄居をフィールドに楽しみつくそうという「チーム」ができたのです。

プロジェクトでのワークショップ参加の皆さま

プロジェクト当初は結局何をやるのか見えないという不安はあったのですが、今では何だか、みんな集まると、この会は楽しく、このメンバーなら無理なことがないのでは?となっています!

やっていることはバラバラだけど、何か根底でつながっているような、共通認識を持っているような。

ここから、どんなプロセスだったのかをふりかえります。


STEP1 起点は一人の強い思いから

発起人の押田大助さんは、寄居町で造園業を営む、ご本人曰く「樹木バカ」。リニューアルされた駅前通りに設置されている街路樹の設計から現在の管理までを中心に担当されているキーマンのお一人。

本プロジェクト発起人の押田さん

その押田さん。せっかく駅前がリニューアルされても、町の空気感、雰囲気として、このままでは誰も街路樹や駅前空間に関心を示さないのではないかと危機感を抱かれていました。

そこで、みんながリニューアル後の駅前に継続的に関心を持ってもらえるようにするためにはどうすればよいか、町に広いつながりを持つ吉田さんを通して、私(尾形)が相談を受けました。
それが、年末から2024年の1月にかけてのことでした。

STEP2 プロジェクト企画案の作成

押田さんの思いをうかがい、どんな形で実行していくか?

当初はシンポジウムを開きたいとお話いただきましたが、その会が1回で終わってしまっては継続的な活動にはつながらない、関わる皆さんが自分ごととして関われるようなプロジェクトがやれるといいねと打合せをしながら方向性を見出していきました。

そこで、4回の共創プログラムを立案。しかし、この時点では、プロトタイピングで何をするかは全く決まっていませんでした。

駅前がリニューアルされてからの前例はないので、前例をつくる意味でも、どこまで遊べるか?とにかく関わる本人が楽しい!と思えることができることが重要でした。

そこで、アイデアに制限を設けず妄想からはじめる「寄居駅前妄想社会実験プロジェクト」として企画をまとめました。

STEP3 事務局の設置

この企画立案と並行して、実際に進めていくには、一人ではできなくチームとして機能する事務局の設置が必要だと考えました。
ビジョンを示す発起人。町や事業者とのつながりがあるキーマン、そして、この思いを広く伝えることができるデザイナー。このピースが必要だと思い事務局としてメンバーを構成し、メッセンジャーでのグループをつくり、やりとりが活発化されていきました。

地元デザイナーのturiai木島さん作成のチラシ

STEP4 参加者に思いを伝える第0回(プロジェクト説明会)の実施

事務局では、このプロジェクトにぜひ参加して欲しい人の候補者リストを作成。担当ごとに声をかけ、まずはプロジェクトの趣旨を説明するための第0回のミーティングを開催。

どうしても参加いただきたい方でもスケジュールの都合で参加が叶わなかった方が多数いたのは残念ではありましたが、事務局として改めて何をしたいか整理する機会にもなりましたし、集った人同士の関係性も深める機会に。

STEP5 フィールドワークおよびワークショップの実施

いよいよ、プロジェクトでのフィールドワーク/ワークショップのプログラムが開催。

しかし、なんと第1回のフィールドワークは台風接近に伴う大雨。急きょ、集まった方々同士を深く知る自己紹介、自己開示を中心とした対話のワークに切り替えました。

ただ、結果的にこのワークが、相手を深く知ることができ、チームとしての土壌づくりにとても有効だったと思います。

STEP6 プロトタイピングでの実施計画を参加者自らが立案

2回目のワークショップが終了した時点では、結局4回目のプロトタイピングで何をする?はまだ決まっておらず、参加者の中には不安の声も。

さて、どうするか?

駅前通りを封鎖すれば、あれができる、これができると妄想からのアイデアは膨れ上がる一方、それ本当にやる?誰がやる?

そんな中、ワークショップの中では、リニューアル前の寄居駅前の歴史を紐解き、大事にしていたことをふりかえるワークから「昭和のカオス感」というキーワードが出てきました。

リニューアルされる前は、小さな居酒屋、飲食店、旅館などが立ち並び、町民がそれぞれ好きなお店に入り浸っている、といった歴史があったのです。

当時の寄居駅前のマップ。お店が密集していた

まさにカオス!

それを大事にしたいね、との思いと、楽しいことをしたいとのことから「アミューズメント」というキーワードも出てきました。

さらに、参加者の中からそれらを組み合わせた「カオースメント」という造語が出てきて、「それいいね!」とすくい上げるイメージでみんなに共有。

いま思えばやや強引だったかもしれませんが、参加者の中では同じ後方を向く言葉としてはしっくりいっていたようです。

そこで、そのイメージを絵として共有したかったので、グラフィックレコーディングをもとに、精緻化し、ビジョンとして描いたものを共有しました。

ビジョンとしての寄居駅前のイメージ

その上で、具体的にプロトタイピングとして実践するには、はじめての取り組みで、有志でやっている、ということを考えると、今回の場合は、何らかの枠がないと何もきまらないと判断。

事務局で開催する「場所」は決めました。当初は通りを封鎖して大々的にやることも考えていたのですが、ここはミニマムに「駅前拠点」と「敷地内の広場」「公園」と場所を特定し、ここでできることを考えましょう!と設定しました。

場所を設定しタイムライン上にやりたいことをマッピング

この場所で「出店」したい人、チームでもよいし、個人でもよいし。
カオースメントを実現する1日、これをプロトタイプとしてやろう!
これが、まつりとしての設定に至った背景です。

STEP7 プロトタイピングとしての「祭り」を開催

8月11日。寄居カオースメント祭り当日。

出店内容は、各チーム、個人に委ねました。
出店にかかる費用はそれぞれのチームで持ち出し。

持ち出してでも、自分の時間を使ってでも、本来ならやらなくてもよいことを皆さんなぜやっているのか?

それは、自分がやりたいことを試したい、やってみたい、という本能レベルで楽しさを求めているからではないだろうか?
寄居駅前でのカオースメントパークの妄想を、みんなと楽しみたいというのもあるのではないか?

いろいろな思いが交錯するなか、冒頭の通り、無事、お祭りを開催することができました。

※文脈は異なりますが、テレ玉で祭りの様子を取材いただきました。


課題は山積しておりますが(開催までの期間が短すぎた、広報がもっと必要、など)、これら一連の活動を通して、チームでは「来年も実施しよう」とだけは決めました。

また、スピンオフ企画として、事務局が何も言わなくても、参加者同士で里山への訪問交流やツーリング企画などが開催され、自立分散的な活動の広がりが生まれています。

これらの現象をメタ的に捉え、ダニエル・キム教授が提唱する組織の成功循環モデルを参考にすると、結果的に「関係の質」を高める活動を行ってきたのではないかと考えています。

今後、このチームをもってすれば、アイデアは無限に広がりそうだし、その実現が無理だと思えないような期待感があります。
また、今回参加が叶わなかった方々も交えることで、より新たな視点での活動を考えることができ、また実践につなげられるのではないかと思います!

興味を持った方は、ぜひ一緒に活動しましょう!
また、企業の方も共創の実験フィールドとして試せる余白は多くありますので、気になった方はぜひお問い合わせください!

来年、どのようなカオスが生まれるのか、今から楽しみです。
と同時に、ここから域内循環に向けた活動にもつなげていきたいと思います。
(尾形)





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