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【GK Reprt 寄稿:海外視察レポート】欧州における公共交通調査団

 GKデザイングループでは、社員のデザイン研修の一環として例年海外視察を行っています。本稿では、GK設計スタッフの近藤がコロナ禍以前の2019年10月に参加した「欧州における公共交通調査団」(公益社団法人日本交通計画協会による視察ツアー)から欧州の公共交通の現状について報告致します。 

欧州における公共交通調査団(公益社団法人日本交通計画協会)        このツアーは、デザイナー以外にも研究者、都市コンサルタント、鉄道会社、電気設備・器具メーカーなど多彩な分野から集まった参加者との交流や現地鉄道会社や行政機関への公式訪問に加え、自由行動時間も設けられていることが特徴です。

1.「欧州における公共交通調査団」の調査ルート  

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 今回の調査中、特に私が感じたことは、移動時のスムーズさでした。私が今回の調査で訪問した国や都市は、スイス(チューリッヒ、ベルン、ローザンヌ、バーゼル)、フランス(ミュルーズ)、ドイツ(ヴィトラキャンパス)、ルクセンブルク(ルクセンブルク)、ベルギー(ブリュッセル)と盛りだくさんで、トラムに乗って国境を越えるという日本では出来ない貴重な体験もしました。

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 公式訪問では各都市が直面する交通問題解決のために、企業や行政が行う最新事例(トラム、電気バス、自動運転、シェアリングサービス等)の説明を受け、自由行動時間では各自で実際に車両に乗車したり、まち歩きをしました。これらを通して現地における交通計画の現状を知り、その都市を体感しました。 

1.都市体験と信用乗車方式 

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 今回は、短期間で多数の都市を乗り換えもしながら巡りましたが、その移動はスムーズでした。この要因の1つとして、「信用乗車方式」に注目致しました。信用乗車方式とは、乗降の際に改札や検札が求められず、乗客が乗車券を自己管理する方式です。

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例えばトラムやバスの本数の多いチューリッヒの都心部では、乗車時にはほぼ待ち時間がなく、降車時はどこのドアからでも降りることができます。この方式は乗降の自由さという点で、公共交通と乗客、また都市との親和性を高めていました。 

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ただし、無賃乗車の発生や、切符の買い方を間違えた人が、抜き打ち検査で多額のペナルティを支払うなどの問題点があります。また信用乗車方式を取り入れる国や都市では、不採算路線を公金で補填することが前提となっている背景があり、そのような制度のない日本ではほとんど取り入れられていない現状があります。 

2.新しい乗り物や仕組みは、公共交通に新しい価値を与える

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 レンタサイクルや電動キックボード等、よりパーソナルな乗り物がたくさん街で活用されていることにも気づきました。

“パーソナルなスケールの乗り物でありながら誰の所有でもない”これらの乗り物によるシェアリング・エコノミーが、新たな公共性を生み出しています。 

また、シェアと関連して語られ、さまざまな分野に波及している「サブスクリプション※1と呼ばれる仕組みがあります。例えば「公共交通のサブスク」ができたなら、従来の公共交通である電車やトラム、バスなどを1回の移動で複数利用するシーンではより便利に使えるのではないかと感じました。 

※1:様々なサービスを定額で受けることができる仕組み

まとめ:デザインの力と都市の体験 

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 私は前述のような試みがさまざまなサービスに発展し、それが都市の新しい風景を作り出すことを期待しています。そしてそこで必要となるのがデザインの力です。今回訪問した都市では、優れたデザインによって移動の満足度を上げ、その都市の風土や魅力を顕在化させた事例がいくつもありました。私が「楽しかった」や「また行ってみたい」と感じるのはそれらの影響が大きいと思います。新たな仕組みやデザインによって新陳代謝した都市や交通は、私たちに感動を与えてくえるはずです。 

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 MaaSをはじめとするIT技術の発展と集積によって都市や交通など、分野がクロスオーバーし、デザインの領域がどんどん広がっていく今日、この視察が大きな視点で都市や交通のデザインについて考える非常に良い機会となりました。(近藤洋輔) 


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