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【GK Report 特集:東京BRT 】 都市のアイコンをつくる

1. 新たな都市の幕開けの象徴

東京BRTが走り出す。

高層ビル、ビルとビルの狭間の意匠を凝らした町家、都市の発展を支えてきた運河や橋梁と、リズムよく変化する街並み、沿道の公園で遊ぶ子どもたち。テーマパークのような、しかし、生き生きとした江戸東京のまちの風景が目の前に映し出されていきます。

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 勝どき、晴海、豊洲、臨海副都心などの臨海地域は、国際的な観光や経済活動を担う地域として、都心近接の住宅地として、また東京オリンピック・パラリンピック大会後の選手村のまちづくりも控え、今後も様々な変化が待っている東京の重要な地域です。一方で、都心に近接していながら、直通の鉄道がない交通不便地域となっており、将来の発展を見据えた都市開発の重要な軸線として、新たな輸送システムの整備が必要とされていました。そこで、これらの臨海地域と虎ノ門、新橋等の都心を結ぶBRTの導入が決まりました。2015年に東京都が基本計画及び運行事業者の募集要項を公表し、同年京成バス株式会社が運行事業者として選定されました。

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 東京BRTは、都心と臨海地域を結ぶことで地域を活性化し、常に先陣を切って新しいシステムや基準を創る「新しい交通機関」として、新たな都市の幕開けを象徴するデザインが必要とされました。そこで、2016年度にトータルデザイン検討の企画提案応募が実施され、これをGK設計が獲得し、GKインダストリアルデザイン、GKグラフィックスとともに「東京BRTトータルデザイン」に参画しました。

2. 都市の成長を牽引する

BRTとは、バス高速輸送システム(Bus Rapid Transit)の略称です。大量輸送を可能にする連節バスの運行、道路空間の有効活用、車椅子利用者等様々な利用者がスムーズに乗降できる車両と停留施設側相互のバリアフリー、そしてPTPS(公共車両優先システム)等の技術を組み合わせることで、速達性、定時性の確保や輸送能力の増大を可能とする、次世代交通システムです。

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 東京BRTは、住宅開発やインフラ整備といった臨海地域のまちの変化に寄り添うため、段階的に整備されます。開業時はプレ運行で運行距離や運行ルートは少ないですが、2022年度以降速達性・定時性が十分に確保された本格運行に移行します。

 変化し続ける沿線の都市空間とともに拡張しゆく路線。ここに「新しい都市の幕開けを象徴する」BRTを走らせるため、これまでにない強い牽引力が求められました。

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3. 路線を創る─レインボーの展開

私たちは、この強い牽引力が求められる東京BRTを、レインボーのリボンで象徴させ、車両や停留施設などを包むように連続的に展開することで、路線沿線を顕在化させました。

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 常に新しい変化を創出し続ける都市、都心と臨海地域をつなぎ、新たな価値を生み出す路線、人と人とのつながりや多様性。東京BRTは変化を伴いながら成長します。これを、レインボーのリボンが色の変化を伴いながら緩やかに推進するデザインとして表現しました。また、このレインボーのリボンで東京BRTの「B」を象り、シンボルマークとしました。

 車両、停留施設、サインのほか、ウェブ、パンフレットなど、利用者とのタッチポイントとなる多様なアプリケーションをレインボーのリボンで包みました。そうすることで利用者の体験をつなぎ、また利用者、BRT、まちとのコミュニケーションツールとして活用されていくことを狙いました。

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4. 拠点を創る─サインビームが生む場

シンボルマーク「B」に迎えられ、利用者は停留空間を訪れ、約18メートルの連節バスがゆっくりと停留施設に止まります。すると、連節バスと停留施設双方のレインボーのリボンが重なり、背景のまちと佇む人、行き交う人、レインボーによる唯一無二の空間が生まれます。

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 都市空間を構成する要素は、施設や道路など土地に帰属するものは「地」、地の上に彩られる自動車等の動的な対象を「図」として認識することが定石です。しかし、東京BRTでは、「地」の領域に「図」の領域をオーバーラップさせ、停留施設をもレインボーで巻き込むことで、路線を顕在化させました。

 路線を顕在化させるために「図」側の役者が連節バスをはじめとするBRTの車両とするならば、「地」側の役者となるのが「サインビーム」です。停留施設の柱の上部を、道路と並走するように貫く20メートル程の梁状のサイン、これが「サインビーム」です。

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 サインビームは、長手方向にレインボーのリボンで包まれ、停留施設名及び方面が表記された記名サインとしての役割を担います。またこの部分は、板状のステンレス鋼によるダクト形状となっており、内部には照明や配線が内蔵されています。

 風除けガラスにもレインボーのシルエットが施され、ガラス前面に案内サインやベンチ等の什器がまとめられた設えとなっています。そしてこれらの設えは、今後のバスロケーションシステムやデジタルサイネージ、券売機等の機器の導入や、更新等を見据えた設計となっています。

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 私たちは、サインビームが生み出す場が、まちの変化と多様な人々の出会いによる新しいコミュニケーション、新しいまちづかいのきっかけが生まれる拠点へと成長することを期待しています。サインビームはきっかけに過ぎません。今後の多様なサービス展開や空間の拡張を受け止める、意志表示です。

5. 都市のアイコンを創る

「機能、設備を集約し、景観を美しく統合する」考え方として「サインリング」を思い浮かべる人も少なくないと思います。

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 1994年、西新宿に現れたサインリングは、林立する西新宿の高層ビル群の中で、標識、信号、道路照明を複合した大リングをかけることで、雑然としがちな交差点において、アイレベルでの都市的な風景、上空からの象徴的な景観を創出しました。西新宿の副都心計画の中でストリートファニチュアの一要素として設置されたサインリングは、映画やドラマの中で重要なできごとが起こるロケーションとしても度々用いられ、長く土地に愛される西新宿の道しるべ、都市のアイコンへと成長しました。

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 東京BRTのサインビームは、都心と臨海地域を結び、まちや人とともに成長し続ける東京BRTの象徴であり、新しいまちの動きやしくみが生み出される「まちしるべ」として、新たな成長段階に入った東京の変化の中で、記憶を継承していくアイコンとなることを期待します。

 私たちも、都市の成長を牽引し、寄り添いながら、移動によって生まれる価値、移動との連携によって得られる新しい体験を創出するべく成長し続けていきたい。(櫻庭敬子) 


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