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鬼平犯科帳、西部警察説

数年前から誰が買ったのかわからない鬼平犯科帳の文庫本・第1巻が引き出しの奥にひっそりとしまわれていた。その文庫本は本屋のブックカバーがついたままで真新しく、読んだ形跡はない。読書好きなので気にはなっていたが、時代小説にはなじみがなく敷居が高かった。
ある日、持っている本すべてを読み終わってしまった私はふと、あの文庫本のことを思い出した。

読んでみようか。

読み始めた鬼平犯科帳は、それはもうめちゃくちゃ面白かった。こんな面白い本を今まで放置していたとは。そこからはもう一気読みだ。読めば読むほど面白くなっていく鬼平犯科帳。
3巻まで読んだところで思った。
既視感。

これ、やってること西部警察と同じじゃないか?

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西部警察。
言わずと知れた石原プロモーション制作・伝説の刑事ドラマだ。
逆探知はたいてい失敗、前科を調べるのにやたら時間がかかる。
チンピラをなんの証拠もなくしょっぴいては取調室で自白強要。
「しらねえな!」と反抗的な態度のチンピラを殴る蹴る、挙句の果てに
「団長、シロでした!」と報告する大門軍団。
ピストルバンバン撃った上に車を壊しまくり、最後は爆破で大団円。
子供心においおいいいのかよと感じずにはいられなかった西部警察だが、鬼平もやってることはそう変わらない。

江戸の特別警察、火付盗賊改方長官・長谷川平蔵。
若い頃はかなりの不良で、飲む・打つ・買う、その上盗っ人の手伝いをしたり、義母を殺そうとしたりでもうむちゃくちゃ。元ヤンの経験を活かした柔軟さと人情味あふれる采配は、世が世なら理想の上司ナンバーワンだ。西部警察における団長・大門(渡哲也)ポジションだが、人柄は木暮捜査課長(石原裕次郎)か?
平蔵は勘がいいので、しょっぴいたチンピラがシロだったことはあまりないが、拷問はかなりエグい。手入れの際「刃向かう者は斬れ!」と斬って斬って斬りまくることもしばしば。むちゃするのでお偉いさんににらまれているところも西部警察との共通点だ。

あっという間に24巻読んでしまい、鬼平ロスな私。浅草の池波正太郎記念文庫にも行ってしまった。池波先生が絵を描かれる方だったのは妙に納得。鬼平の中にはまるで絵が浮かんでくるような文がたくさんあるのだ。
最終話は未完成で、続きが気になって仕方がない。
でも、それは池波正太郎先生の頭の中にしか存在しないのだな、と切なくなる私である。

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