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【短編小説】『自由を奪われた人間は必ず誰かを憎むようになる』

むかしむかし僕が大学生だった頃、バイト先で知り合った女の子とお花見をすることになった。笑顔がとても素敵な彼女で、それでいて、ふとした仕草にどこかしら陰があり、僕はそんな彼女がすごく気になってお花見に誘ったのだった。  彼女は、僕の誘いに少し眉間に皺を寄せ、それなら京都の円山公園の祇園しだれ桜を夜に観てみたいと、了解してくれた。 梅田の紀伊國屋前で待ち合わせ、阪急電車に乗り、河原町駅から歩いて円山公園に着いた頃には、太陽は頼りなく沈みかけていた。 おでん屋の前に空いている

    • 働き方改革の敵は高倉健⁉︎

      とあるうらぶれた居酒屋でおでんをつつく。懐かしい歌声が聴こえて来る。 義理と人情を秤にかけりゃ、義理が重たい男の世界〜♪ そう。高倉健の唐獅子牡丹。 平成世代以降の若者には何のことやらなのだろうね。きっと。 でも、私ら昭和世代の人間には、日本刀を手に血まみれになりながら唐獅子牡丹を背負う高倉健の容姿がはっきりと瞼に張り付いているのである。 私もお正月の深夜テレビでみかんを頬張りながら手に汗をかきかき家族と一緒に見入ったものだ。私ら昭和の人間は必然的にこの唐獅子牡丹の影響を

      • 椿

        早春の柔らかな風に誘われ目的もなくふらりと歩いていると、突然足元に現れる真紅の椿にはドキリと驚かされる。 花が首からポロリと落ちる様から縁起が悪いとされたのは、実は貴族の間で高貴な花としてもてはやされた椿の花を、庶民の間で流行らせないよう、そうした情報をわざと流布したんだよと祖父から教えられた。 たしかに、くすんだ鼠色のアスファルトに踏みにじられたその奇抜な花を見ると、戦の後の光景のようでなんだかおどろおどろしくもあり、じわーっとその光景が記憶として残り続けるから不思議。

        • 社会が変わってしまう

          野党が国会で追及したのは、2月1日、同性婚をなぜ認めないのかと聞かれた際の岸田首相の発言だ。 自宅のコタツに入ってまだ酸味が強いいいちごをかじりながらニュースを見ていたら、岸田さんが野党に責められていた。 2月1日 野党の「同性婚をなぜ認めないのか」との質問に首相は「全ての国民にとっても、家族観や価値観や、そして社会が変わってしまう、こうした課題です。」と答えたのである。 僕はこの答弁が好きだ。 もちろん、僕はアライであるので、このネガティブな答弁を肯定しているわけではな

        【短編小説】『自由を奪われた人間は必ず誰かを憎むようになる』

          アンディー・ウォーホル

          「アンディウォーホルのすべてを知りたければ表面だけを見ればいい!」 アンディウォーホル、カッケー! と、思わず年甲斐もなく今どきの言葉を発しさせてしまうほど刺激的でオシャレな言葉。 これまでアート作品に対峙する時、その作品の背景に潜む深い精神性やその意味を必死になって探っていた僕にとっては、パチパチキャンディを袋ごとまるまる口に含んでしまったくらい衝撃的な言葉でした。 それだけ自分の作品に自信があるのだろうなぁと。 でも、一方でアンディの作品を通じアンディの生い立ちや

          アンディー・ウォーホル