日本の寄付の系譜:⑦現代の寄付
普段の生活の中で、たくさんの寄付の機会があります。購入した音楽は復興支援のチャリティソング。チョコは児童労働の問題に取り組むNPOへの寄付付き商品。ヘルシーランチは途上国の子どもたちの給食1食分の寄付に、自動販売機は1本購入するごとに寄付される寄付型自動販売機。居酒屋では1杯飲むごとに寄付になるカンパイチャリティ。ブランドもののチャリティTシャツで、ショッピングサイトのポイントはネット募金へ。というように普段の日常の中で身近に寄付をしていることもあります。
ここ数年で、こういった寄付付き商品やチャリティにつながるサービスが数多く生まれています。自分が直接寄付をしなくても、普段の生活が間接的な寄付につながります。他にも、航空会社のマイレージやクレジットカードやポイントサービスの各種ポイントで寄付が出来ます。SNSをやっている人なら、SNSの投稿1件につき10円を企業が代わりに寄付するというSNSの寄付キャンペーンに参加することも出来ます。
インターネットによるチャリティオークションや、東京マラソンなどに見られるチャリティランナー制度など、自分の楽しみがチャリティ(寄付)につながる機会もあります。
手軽な寄付といえば、コンビニのレジ募金もあります。コンビニの店舗数の増加にあわせて寄付金額が年々増加しているようです。1990年代に始まったコンビニ募金も、あるコンビニチェーンでは年間4億円を超える寄付額を集めるようになっています。勤めている企業が従業員募金を実施しているようなら、給与天引きで毎月一定額を寄付することができます。さらに嬉しいのは、その寄付額と同じ金額を企業が上乗せしてくれるマッチングファンドの仕組みがセットされています。
さらに、この10年で、NPOを寄付で直接支援する方法も増えています。2000年以前は寄付といえば、募金箱、現金手渡し、銀行や郵便局の振込がメインでした。2000年代にはクレジットカードによるオンライン寄付の仕組みが生まれ、2010年代はネット上で不特定多数の方から支援を募るクラウドファンディングが生まれました。従来の方法とあわせて、以前に比べて、寄付がしやすい環境となっています。ツールの変化だけでなく、市民とNPOの接点が増えていることも大事なポイントです。SNSの発展で、NPOの代表や社会起業家と呼ばれる人がインターネットを通じて直接寄付の呼び掛けを行うことができるようなりました。また、NPOの信頼性の証しとして情報開示もWebで積極的に行っています。これまではメディアを通じてのPRでしたが、支援者側である寄付者や企業が直接情報を入手することができるようになりました。寄付のお願いから寄付による活動の報告まで、NPOの情報発信が重要な時代になっています。
最後に、令和時代の新しい寄付の形をご紹介します。芸能人やアスリート、YouTuberなどの有名人による寄付の進化です。今までも社会貢献活動に熱心に取り組まれ、積極的に自ら寄付を行ったり、チャリティイベントなどを開催する方も数多くいらっしゃいました。新型コロナウイルスに関する取り組みで注目を浴びたのは、有名人の方々が自らの寄付を積極的に発信するととも、ファンのみなさんに寄付の呼び掛けをしたことです。YouTuberのヒカキンさんやサッカー選手の長友佑都さん、「新しい地図」の香取慎吾さん、稲垣吾郎さん、草彅剛さんなどは基金やクラウドファンディングを立ち上げ、ファンに対して寄付を呼び掛けていました。自分が持っている発信力・影響力を活用して、社会問題に関心を持ってもらうことを意識した取り組みです。自ら広報マンも兼ねる寄付者として、新しい寄付者像を提示してくれました。(終わり)
(寄付月間共同事務局 事務局長 山田泰久)
【日本の寄付の系譜】
①寄付の潮流
https://note.com/givingdecember/n/naf8e996de880
②勧進から続く寄付の軌跡(奈良時代から鎌倉時代)
https://note.com/givingdecember/n/n9290f125f478
③共助と互助に現れる寄付の実践(江戸時代)
https://note.com/givingdecember/n/n7f85d80acd7d
④慈善と社会事業の寄付(明治)
https://note.com/givingdecember/n/n4bcd947193b0
⑤制度による寄付(明治・大正・昭和初期)
https://note.com/givingdecember/n/nf428db9df0e8
⑥戦後復興期と昭和の寄付(昭和)
https://note.com/givingdecember/n/nc4695eff6328
⑦現代の寄付
https://note.com/givingdecember/n/n34a268796955
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?