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過去に炎上してしまった利用規約4選

どんなサービスも利用開始前に必ずと言っていいほど利用規約に同意を求めます。ですが利用規約をしっかりと読み、リスクを理解してから同意のボタンを押す人は少ない事が、定期的に弊社が行っているアンケートで明らかになっています。

そんな読まれることが多くない利用規約ですが、過去何度か炎上騒動があったことをご存じでしょうか?

今回は過去の炎上利用規約をまとめてみました。


mixi「規約改定騒動」

2008年4月1日施行の規約改定により、新たに下記のような条項が追加されました。

第18条 日記等の情報の使用許諾等

1「ユーザーが日記などを投稿する場合、ユーザーはミクシィに対して、その情報を国内外で無償・非独占的に使用する(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行う)権利を許諾するものとする

2「ユーザーはミクシィに対し、著作者人格権を行使しない

この条項に対してユーザー間では下記のような不安の声が相次いでいました。

「規約改定後はユーザーのmixi日記が勝手に書籍化されるのではないか」
「写真家がmixi内限定のつもりで公表している写真も勝手に写真集にして出版されるのでは」

これに対してmixi広報担当者は

「ユーザーの日記などの権利は従来通りユーザーが持ち、書籍化もユーザーの事前了承なしには進めない」

と釈明しその上で、新条項の追加意図を説明しました。

(1)投稿された日記データなどをサーバに格納する際、データ形式や容量が改変される(ユーザーの著作者人格権《同一性保持権》を侵害する)可能性がある
(2)アクセス数が多い日記などは、データを複製して複数のサーバに格納する(ユーザーの複製権を侵害する)可能性がある
(3)日記などが他ユーザーに閲覧される場合、データが他ユーザーに送信される(ユーザーの公衆送信権を侵害する)可能性がある

新条項の追加意図では厳密に著作権法を適用した場合に、ユーザーに無断で行うと法に抵触しかねないデータの複製や改変について、規約で改めて規定しました。


利用規約の改定をするだけでなくなぜその改定が必要なのかという意図が分からない事には、ユーザー不利に見える利用規約の改定は炎上に繋がりかねない。
利用規約の改定は「なぜ改定が必要なのか」「改定でサービスがどのように変わるのか」をユーザーに分かりやすく説明する必要があります。


ユニクロ「UTme!」

2014年5月19日に開始したTシャツ作成サービス「UTme!(ユーティーミー)」の利用規約に「著作物に関する全ての権利を株式会社ユニクロに無償譲渡する」とされた項目があることがネット上で炎上となった。

第9条(権利帰属)
・ユーザーは、投稿データについて、その著作物に関する全ての権利(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含みます)を、投稿その他送信時に、当社に対し、無償で譲渡します。
・ユーザーは、当社及び当社から権利を承継しまたは許諾された者に対して著作者人格権を行使しないことに同意するものとします。
・ユーザーは、当社が実施する各種キャンペーン等に投稿データが使用されることに同意するものとします。

「UTme!」はスマートフォンやタブレット端末のアプリを使ってTシャツを作りその場で購入できるサービスです。
ユーザーの持つ写真やイラストなどを使って自分だけのTシャツを作ることができますが、その投稿データの著作権はユニクロに無償で譲渡し、ユニクロのキャンペーンに使用される事や著作人格権を行使できない事に同意しなければいけません。

これに対してのユーザー間では下記のような声が上がりました。

「著作権全てが譲渡されるうえに人格権も行使できないからユニクロ側が量産・改変し放題だ」
「著作物に関する権利を譲渡したことになるから全然私だけのTシャツじゃないじゃん」
「著作権の中には、財産権と人格権と呼ばれる二種類の性格のものが入っている。前者の財産権に関するものは無償譲渡させ、後者の人格権に関しては行使しないことを同意させている。悪質な契約の見本」

この規約は発表翌日には利用規約を改正。「著作権はユーザーに帰属する」と表記しました。

会社を守る意識で利用規約を制定するときに「とりあえず会社側の権利は広めに規定しておこう」として、このような規約になってしまい、ユーザー側から見たらどうなるかを見落としていたのかもしれません。


テレビ朝日「みんながカメラマン」

2014年8月11日からスタートしたこのサイトは、視聴者が事件や事故・ハプニングなどの動画を撮影し投稿できます。その提供された動画をテレビ朝日は自社のニュース番組、ネットニュースなどで使用します。
ですが提供動画が採用されても謝礼などはなく、映像に対しての苦情・トラブルが起きた際に投稿者自らが対応させ、テレビ朝日に何らかの被害が出れば投稿者に賠償させるというものでした。

投稿に関する規約
4.テレビ朝日は投稿データを、地域・期間・回数・利用目的・利用方法(放送、モバイルを含むインターネット配信、出版、ビデオプライム化、その他現存し、または将来開発されるあらゆる媒体による利用)・利用態様を問わず、自由に利用し、またテレビ朝日が指定する第三者に利用させることができるものとします。当該利用にかかる対価は無償とします。
5.テレビ朝日(テレビ朝日指定の第三者を含みます)は、前項記載の利用のために、投稿データを自由に編集・改変する事が出来るものとします。投稿者はいかなる場合も、著作人格権を行使しません
6.投稿データの採用不採用、投稿データを第4項に定めるはんいで 利用するかいなか、投稿データの利用時期、期間および利用方法等の投稿データの利用にかかる詳細は、すべてテレビ朝日が任意に決めることができるものとし、投稿者は一切の意義を申し出ないものとします。なお、投稿データの採否に関する個別のお問い合わせには、回答できません。
7.テレビ朝日は、投稿データの利用に関して投稿者に何らかの損害が生じた場合でも、一切の責任を負いません。また投稿者は、投稿データの利用に関して第三者からテレビ朝日に何らかの意義・請求等があった場合、テレビ朝日からの要求に従い、投稿者の責任と費用において解決します。また、投稿データの利用が第三者の権利を侵害したとして、テレビ朝日が損害を被った場合は、これを賠償します。
8.投稿者が、本規約の一の条項に違反した場合、テレビ朝日は投稿者による本サイトの利用を停止することができるものとします。また、これによりテレビ朝日に生じた被害は、すべて投稿者が賠償するものとし、テレビ朝日は一切の責任を負わないとします。
9.本サイトの投稿に伴って投稿者からお預かりした個人情報は、以下の目的で利用させていただきます。
(ア)投稿データの利用にあたり、当区データの撮影当時の状況家、撮影内容の詳細を知るために、連絡させていただく目的
(イ)投稿データの利用に伴い、投稿者の氏名を掲載表示させていただく目的
(ウ)投稿データの利用後に連絡させていただく目的
その他、投稿者からお預かりした個人情報は、「テレビ朝日における個人情報の取扱いについて」に従い、取り扱います。
10.テレビ朝日は本規約を予告なく変更できるものとします。変更後の規約は本サイトに掲載した時点でその効力が生じるものとし、投稿者は変更後の本規約に同意したものとします。
11.本サイトへの投稿を行った場合、テレビ朝日は、投稿者が本規約について充分に理解し、承諾したものとして取り扱います。

この利用規約の条文に対してユーザーは、

「こんな規約を企業の法務部がOKだしてるって事自体が異常。」
「トラブル時に責任を押し付ける規約。こんな規約今まであった?」
「テレビ局側は投稿者を一切守りません、ってのがジャーナリズムなんか?保身しか考えてないだろって印象」
「投稿を利用する立場なのに、一方的に責任を押しつけている」

といった批判の声が上がりました。

これに対してテレビ朝日は、
12日に利用規約を削除し、サイトを閉鎖しました。広報部は「一部に誤解を招く表現があった。規約の改訂が終わり次第、サイトを再開する」と説明しました。

現在は利用規約は改定されサイトは再開されているようです。


モバゲー「一切の責任を負わない」

2020年11月5日
東京高裁が判決

DeNAが運営するモバゲーには各種ゲームのほか会員同士でやり取りするチャット機能がある。

DeNA(モバゲー)の利用規約では下記のような条項になっていた。

「他の会員に不当に迷惑をかけた」
「会員として不適格」
とDeNAが判断した場合、利用停止や会員資格の取り消しができると規定。
これらの措置で会員に損害が生じても「当社は一切損害を賠償しません

被害にあった消費者の主張

「課金をしたばかりでサイト内に2万円が残っているが、突然利用停止となった。問い合わせても返金しないと言われた」
「身に覚えがない利用制限を受けた。理由は『教えることができない』の一点張りだった」

原告の適格消費者団体「埼玉消費者被害をなくす会」(さいたま市)はこうした苦情を踏まえ、モバゲーの条項が事業者の不当な免責を無効とする消費者契約法に違反すると訴えた。

結果から先に言うとこの裁判の判決で「一切の責任を負わない」完全免責条項を消費者契約法違反とはっきり認めた事件について、控訴審判決が確定しました。

企業側が一方的に有利な規約にすると消費者契約法に違反するおそれの他、特にネット上で非難が強まり「炎上」してしまうリスクもあります。

今回の高裁判決はユーザーにとっては有利である一方、DeNA側にとっては厳しい判決となりました。
DeNA側が一部のユーザーの利用を停止したにもかかわらず理由の説明もせず支払った利用料の返還もしないという相談が複数されていたという事情があったようです。これにより、DeNAが自己に有利な解釈をする疑念を裁判所に抱かせたことがDeNAを敗訴させた1つのポイントであるように思われます。

しかし規約に違反したり、他のユーザーに迷惑をかけたりするユーザーや、運営に過度な要求をしてくるユーザーに対し、企業として唯一実効性のある対抗手段・ペナルティ策が「そのユーザーのアカウントを停止する」条項を定めていなければ対応できないこともあります。

事業者としては、利用停止等、ユーザーに対して厳しい対応を行う場合には、その合理的な理由を明確に説明できる必要があると考えます。これまで以上に、企業としての説明責任・透明性が必要かつ重要になっていると思われます。



まとめ

利用規約は、企業と消費者の双方を守る為にあると考えています。

しかし、企業有利になってしまう利用規約があるのも事実です。

悪質なユーザーを抑制する狙いもあるとは思いますが、その規約が健全にサービスを利用するユーザーにも影響を及ぼしてしまうこともあるかもしれません。

利用規約の要点をまとめたり、このような場合はどの条項が適用されるかを具体的に記述するなど、企業がなぜこの規約を制定しているのかを説明したりして、ユーザーの解釈が正しく行われるように、今まで以上に慎重かつ丁寧に作っていく必要があるのではないでしょうか?


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