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3分で読める眠りにつく前の話

『公園』

浪人時代は本当によく勉強していたと思う。予備校に通い、ひたすら机に向かっていた。参考書はヨレヨレになり手にはペンダコができた。目標は明確なのに、受験まで半年をきった頃から、不安に苛まれるようになった。

どうしても辛い時は近所の公園に行って寝ると少し気が楽になった。芝生に頭を預けて、空を見ている間はなんにも考えない。川沿いの公園は広くて、夕方になると子供たちがワーキャー言いながら遊んでいる。不審者に近づかないよう、学校でちゃんと指導されているのだろう。すみっこには誰も近寄ってこない。

ふと、何かが横を通り過ぎる気配がして目を開けた。起きて周りを見たが誰もいない。猫かな?と寝直そうとしたところに二人の男の子が現れ、「多分こっちの方」「どこ?」などと話している。つけているグローブで、さっきの気配はボールだったのだと推測できた。しかし“こっち”の先は川だ。

なんとなく気になって目で追うと、二人は草むらに両手を突っ込んでいる。もし、ボールが草むらでを通り過ぎて川に落ちていたら、少し先へ流されているかもしれない。なんて思うけど、少年たちはそんなこと考えてもいないようだ。彼らが探している地点よりもわずかに川下の方を探ってみると、果たして、白く濡れたものが、水面に浮いていた。

苦い顔をしている少年たちに近づき、「これ?」と見せると二人はビクッと驚き、顔を見合わせて頷いた。ほい、と手渡すと二人は頭を下げて公園に駆けていった。もうちょっと愛想よくすれば良かったかな、と反省しながら、なんだか自分の心がスッとするのを感じた。

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