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米津玄師×UNIQLOの実現した世界で

喜ばしい衝撃

2020年8月14日、米津玄師とUNIQLOのコラボTシャツが発売された。

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SNSを追うと、公式オンラインストアでは朝8時頃に販売が始まっていたようで、購入できた人の喜びやサイズがない人の嘆きの声があふれていた。私は近所の実店舗に向かった。開店1時間前に到着したが店の前には既に30人ほどの人が並んでおり、お祭りに似た高揚感を微かに感じた。

さて、UNIQLOはコロナ感染リスク、あるいは熱中症リスクの軽減のためか、本来の開店時間よりも30分早く店を開けてくれた。冷房の効いた店内へ客を誘導した後には一人一人に検温を行い、手指消毒を徹底していた。開店時刻に合わせて始まった販売も人数を制限しながら行われ、私は無事に欲しかった商品を購入した。

わかっていた事態の発生

さて、ここまで読めば誰もが想像するとおり、その頃メルカリでは早速、転売が始まっていた。そこに勃興した裏対戦カード【転売ヤー×転売絶対許さないマン】!前者は購入したUTを高値で売って利ざやを得ようとする勢力。後者はツイッター上で転売を防止しようとする勢力である。具体的な防止策は以下の通り。

★転売防止策まとめ★
①定価を無視した高値の出品は転売!買わないようにしよう。
②転売目的の出品者をメルカリに“通報”しましょう。※
③SNS上で在庫のある実店舗情報を共有して定価で買おう。
④再販もあるらしい。ユニクロの続報を待とう!
⑤転売屋から購入するのも同罪だ!

※ここでいう通報とは、警察ではなく、メルカリに迷惑行為を報告すること。報告の根拠はユニクロの発信している以下のメッセージ2項目だ。

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お前はどうしたい、返事はいらない

さて、以上の顛末を経て、私が感じたのはまたしてもSNSのネガティブなパワーと同調圧力、そして分離と行動だ。順に書く。

1 SNSのネガティブなパワー
転売はやめて欲しい、それには賛同できる。しかし、最終的に売買するかどうかを決めるのは個人だ。法的に許容された経済活動の中で、他人が制御できることではない。それを正義の面で平然と言わせ、拡散する悪魔的パワーを、SNSはまたもや発揮してみせた。購入者(転売に加担した者)すらも断罪せよ、という論調は単純に監視社会然としていて恐ろしい。正義は我にありと確信し(てしまっ)た人は、どこまでも無慈悲になれるものだ。

2 同調圧力
この騒動に自分が巻き込まれていないか冷静に判断するには、SNSと時間的、物理的に距離を置く必要がある。タイムラインにどっぷり浸かっていると、

A 自分は持っていない(自己の不足)
B 買えた人が羨ましい(他者の充足)
C 転売買しているものが憎い(環境的要因)

ABCの負の感情3点セットが繋がる。
Cは行き止まりではなく、またAに向かうため、渦を巻き始めた感情が加速度的にマイナスに向かっていく。しかも、怒りには勢いがあるので巻き込まれやすい。安易に悪役を定め、断罪に加担してしまう。

3 分離と行動
“祭”と適正な距離を取るのは難しい。熱狂できるから祭なのだ。
しかし、運営側や関係者でない限り、メディアから物理的に距離をとれば、多くの人は祭の一員から個人へ戻ることができるはずだ。自分と状況を切り離そう。時が経ち、感情が冷めてもなお、自分がしたいと思える行動があるなら、やってみたら良いと思う。例えば、それが転売への怒りの表明である人もいるかもしれない。

ここまで読んでくれたあなたはどうしたいだろうか。返事はいらないけれど、選んだのか、選ばされたのかの間には、ゼロとイチの差がある。少なくとも、Tシャツを手に入れた安全地帯から、転売は買う方も罪!と発信するのは嫌だ。それじゃあお前のTシャツを定価で売っておくれよ、とすら思う。

今回の場合、誰かに我慢を強いることはしたくない。私はしない、それだけだ。

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