173)超加工食品は寿命を縮める
体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術173
ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。
【糖化したタンパク質から糖化最終生成物(AGEs)ができる】
料理で食材を加熱すると、グルコースやフルクトースのような還元糖とアミノ化合物(タンパク質やペプチドやアミノ酸)が反応して様々な物質ができます。これらの物質は料理の味や香りや色とも関係しています。
この反応はアミノカルボニル反応、あるいは発見者の名前をとってメイラード(Maillard)反応と呼ばれています。このメイラード反応は非酵素的な反応で、加熱によって短時間で進行しますが、常温でも長い時間をかけて進行します。
生体内でグルコースやフルクトースなどの還元糖がタンパク質に結合する糖化反応も生体内で起こるメイラード反応です。
体内で生成した糖化タンパク質はその後分解して様々な低分子物質が生成します。これらの物質を糖化最終生成物(advanced glycation endproducts;AGEs)と言います。AGEsというのは糖化反応による生成物の総称で、多数の種類が知られています。このAGEsという物質が、さらにタンパク質を変性させ、炎症や酸化ストレスを高めて老化を促進します。
すなわち、AGEsはタンパク質を架橋して変性させ、正常な働きを阻害します。アルブミンなどの血清中のタンパク質にAGEsが結合します。マクロファージなどの炎症細胞や血管内皮細胞にはAGEsで修飾されたタンパク質が結合する複数の種類の受容体があり、これらの受容体にAGEs修飾タンパク質が結合すると細胞内のシグナル伝達系が活性化されて、増殖因子や炎症性サイトカインの産生が促進され、活性酸素の発生も増えてきます(図)。
糖質とタンパク質を一緒に加熱する料理では、食物中の糖化最終生成物(AGEs)が増えます。食物から摂取したAGEsも体内で上記のメカニズムでタンパク質を糖化し、老化を促進します。つまり、糖質とタンパク質を一緒に加熱する料理は老化を促進し、様々な疾患の発症リスクを高める可能性があります。
【食品加工が健康に影響する】
食事が健康に与える影響は、歴史的に栄養素の観点から考えられてきました。たとえば、総脂肪・飽和脂肪・コレステロール・カロリー・砂糖・塩分の過剰、食物繊維・ビタミン・ミネラルの不足などです。しかし、食品の加工度や配合は考慮されていませんでした。たとえば、野菜スープは、自家製、工業的に缶詰、または工業的に乾燥されているかどうか、食品添加物や香料が含まれているかどうかに関係なく、全て同様のものとみなされていました。
食品は栄養素の単純な合計ではないという証拠が増えています。体の対する食品の影響を検討する際には、加工や配合などの要素を考慮することが不可欠であり、これらは年々複雑になっています。
多くの食品は、ある程度加工されて食事に提供されます。人間は、食品が腐らないように保存するため、安全に食べられるようにするため、有害な微生物や化学物質を破壊するため、味を良くするため、その他多くの理由で食品を加工します。
肉、魚、多くの果物や野菜は、そのまま放置しておくと、ほとんどの環境ですぐに腐ってしまいます。しかし、冷凍、乾燥、塩漬け、缶詰、発酵食品にすることで、これらの食品を長期間保存することができ、年間を通じて食品を入手できます。
生で食べると毒になる食品はいくつもあります。例えば、ほうれん草は生のままだとシュウ酸が含まれており、体内でカルシウムと結合して腎臓結石のリスクを高めます。そのため、水に浸したり茹でたりしてシュウ酸を減らす方が安全です。生のカシューナッツには、有毒な成分が含まれており、ローストや乾燥などの加工が必要です。焼く、煮る、蒸すなどの調理は食品を食べやすく、また美味しくするための加工です。
乳製品のチーズやヨーグルトの製造、果物をジャムにするのは、食品の味や栄養価を変えるために行う加工です。
インスタントラーメンや冷凍ピザなどは料理を簡単にするために、加工食品として提供されます。
食品加工は、食品の保存性を向上させ、食べやすさや味を改善する一方で、加工度が高くなると、添加物や人工的な成分が多く含まれることがあります。
産業レベルでの食品加工は、家庭での食品加工、つまり食事の調理とは異なります。産業レベルの食品加工の場合は、比較的加工されていない食品であっても添加物(着色料、風味増強剤、保存料など)が使用されることがよくあります。
加工の度合いの高い食品(超加工食品)の健康への影響が問題になっています。近年、世の中に超加工食品が溢れており、超加工食品の摂取が多いと循環器疾患など健康リスクを高め、早死にする(寿命が短縮する)ことが明らかになってきたからです。
【食品加工の度合いによる食品のNOVA分類】
食品加工に関しては、よく使用される分類の 1 つがNOVA 分類システムです。NOVA分類は食品加工の程度と目的に基づいて食用物質を分類するための仕組みです。ブラジルのサンパウロ大学の研究者が2009年にこのシステムを提案しました。
NOVAの「NOVA」は、フランス語の「NOUVEAU」という言葉に由来しており、「新しい」という意味です。NOVA分類は、食品加工の新しいアプローチを反映しており、食品の加工度に応じてその影響を評価する方法として開発されました。食品を加工の程度と目的に応じて 4 つのカテゴリに分類します。NOVA システムのカテゴリは次のとおりです。
グループ 1: 加工されていない、または最小限に加工された食品(Unprocessed or minimally processed foods)
生の食品や物理的な加工のみを施された食品です。食べられない部分や不要な部分を取り除いた食品です。真空包装、乾燥、低温殺菌、冷蔵、冷凍、焙煎など最小限のプロセスによってのみ加工されたものも含みます。肉、魚、野菜、果物、ナッツ、豆類、卵、穀物、コーヒー、紅茶、無糖プレーンヨーグルトなどです。(下図)
グループ 2: 加工調理材料(Processed culinary ingredients)
グループ 1 の食品から抽出され、キッチンでグループ 1 の食品を準備、味付け、調理するのに使用される食品です。これらの加工プロセスには、製粉、粉砕、精製、圧搾、乾燥が含まれます。例としては、砂糖、塩、バター、油(オリーブオイルなど)蜂蜜、メイプルシロップ、精製された小麦粉などがあります。(下図)
グループ 3:加工食品(Processed Foods)
グループ 1 の食品にグループ 2 の砂糖、塩、油などの物質を加えて作られます。例としては、焼きたてのパン、チーズ、発酵アルコール飲料(ワイン、ビールなど)、缶詰の魚、瓶詰めの野菜、シロップ漬けの果物、ジャムなどがあります。(下図)
グループ 4:超加工食品(Ultra-Processed Foods and Drinks)
天然の食材からは大きく離れた形で製造され、保存料や調味料や安定剤や着色料など多様な添加物を含みます。例としてピザ、ドーナッツ、ポテトチップス、インスタントラーメン、加工肉(ソーセージ、ハムなど)、菓子パン、ケーキ、アイスクリーム、人工甘味料入り飲料、砂糖入りシリアル、電子レンジ調理食品、調理済み冷凍食品、チョコレートバーやエネルギーバー、乾燥スープ、魚やチキンナゲット、タンパク質分離物や色や風味を変える添加物などの物質を含む肉代用品などがあります。
超加工の全体的な目的は、美味しく、原材料費が低いため利益率も高い、耐久性のある製品を作ることです。超加工食品は通常、魅力的なパッケージで、熱心に宣伝されます。(下図)
【超加工食品はなぜ問題になるのか】
超加工食品は、工業的な加工が多く施された食品のことを指します。これらの食品は多くの場合、天然の食材からは大きく離れた形で製造され、複数のステップを経て作られます。
超加工食品の主な特徴は以下の通りです。
高度な加工:食品には複数の処理が行われ、多くの化学的・物理的なプロセスが含まれます。
多くの添加物:保存料、甘味料、着色料、香料、乳化剤、安定剤など、多くの添加物が使用されることが一般的です。
自然の食材からかけ離れている:元の食材が分からないほど変化しており、栄養価も大きく変わっている場合があります。
便利性と即席性:簡単に調理できるか、調理不要でそのまま食べられるものが多いです。
超加工食品は、過剰な消費が肥満、糖尿病、心血管疾患、その他の健康問題と関連しているとされています。そのため、食生活においてはできるだけ自然のままの食品や最小限の加工が施された食品を選ぶことが推奨されています。超加工食品が健康に悪いとされる主な理由は以下の通りです:
1)栄養価の低さ:超加工食品はしばしば栄養価が低く、ビタミンやミネラルが不足していることが多いです。これに対し、カロリーが高く、空腹感を満たすだけのエネルギーを提供する一方で、栄養的には不十分です。
2)高糖分:多くの超加工食品は砂糖が多く含まれており、過剰な糖分摂取は肥満、2型糖尿病、心血管疾患などのリスクを高めます。
3)高脂肪:特に飽和脂肪酸やトランス脂肪酸が多く含まれている場合があり、これらは悪玉コレステロール(LDL)を増加させ、心血管疾患のリスクを高めます。
4)高塩分:塩分(ナトリウム)が多く含まれていることが一般的であり、過剰な塩分摂取は高血圧や心血管疾患のリスクを増加させます。
5)添加物:保存料、着色料、香料、甘味料などの化学添加物が多く使用されており、これらが長期的に健康に与える影響についてはまだ完全には解明されていない部分もありますが、いくつかの添加物は特定の健康リスクを持つことが示唆されています。
6)食物繊維の欠如:多くの超加工食品は食物繊維が不足しており、これが腸内環境の悪化や消化器系の問題を引き起こす原因となります。
7)過食を促進:超加工食品は味や食感が工夫されており、過食を促進する設計がなされています。これにより、カロリーの過剰摂取が容易になり、肥満の原因となります。
8)消化器系への影響:加工食品にはしばしば消化の過程で炎症を引き起こす成分が含まれており、長期的な消化器系の健康に悪影響を及ぼすことがあります。
これらの要因が重なり合って、超加工食品の過剰摂取はさまざまな健康問題を引き起こすリスクを高めると考えられています。したがって、超加工食品はできるだけ避け、自然のままの食品や最小限の加工が施された食品を選ぶことが重要です。
こうした健康リスクにもかかわらず、米国、カナダ、英国などの高所得国の人々が摂取する食事エネルギーの半分以上は、超加工食品に由来しています。ブラジル、メキシコ、チリなどの中所得国では、食事カロリーに占める超加工食品の割合は20%から33%と推定されています。さらに、これらの食品の売上は、高所得国では年間約1%、中所得国では年間最大10%増加しています。
【超加工食品は中毒になりやすい】
ハンバーグやフライドチキンやドーナッツなどのファーストフードが健康に悪い食品であることは常識です。健康寿命を延ばしたければ、このような超加工食品の摂取を止めることが重要です。
しかし、そのような事実を理解しても、ファーストフード店に並ぶ人は減りません。私の自宅の近くのドーナッツのチェーン店はいつも長い行列ができています。健康に明らかに悪いファーストフードを好む人が多い、あるいは増えているのが不思議でなりません。しかし、超加工食品には中毒性があることを理解すると、その事情が少しは理解できます。
超加工食品は、家庭の台所では手に入らない材料を含む工業的に生産された食品であり、現代の食料供給における精製糖質と添加脂肪の主な供給源です。
天然または最小限に加工された食品には通常、糖質か脂肪のどちらかが含まれますが、両方が含まれていることはめったにありません。たとえば、リンゴ100グラムには糖質から55 kcal、脂肪から1.5 kcal(約36:1)が含まれ、サーモン100グラムには糖質から0 kcal、脂肪から73 kcal(約0:1)が含まれます。
肉や魚には脂肪やタンパク質は豊富ですが、炭水化物はほとんど含まれません。果物は炭水化物が多く、脂肪とタンパク質はほとんど含まれていません。アボカドは脂肪とタンパク質が多い果物ですが、糖質はほとんど含まれていません。つまり、天然の食物は脂肪と糖質を同時に多く含むことは稀です。
対照的に、多くの超加工食品には、より均等な割合で糖質と脂肪の両方のレベルがはるかに高く含まれています。たとえば、チョコレートバー100グラムには、糖質から237kcal、脂肪から266kcalが含まれています。1:1です。
超加工食品によく含まれる糖質と脂肪の組み合わせは、どちらかの栄養素単独よりも脳の報酬系に相加効果以上の効果をもたらすようで、これらの食品の依存性を高める可能性があります。つまり、糖質も脂肪も脳内報酬系を刺激して、依存性(中毒性)がありますが、この2つが同時に摂取されると、相乗的に脳内報酬系を刺激すると言えます。
超加工食品が糖質と脂肪を腸に届ける速度も、依存性にとって重要である可能性があります。脳にすばやく作用する薬物と投与経路は、依存性が高くなります。ニコチンを急速に脳に届けるタバコが、徐放性ニコチン経皮パッチよりも依存性が高い理由と同じです。
加工が最小限の食品に比べて超加工食品は消化吸収が速くなります。超加工食品では食物繊維が少なく、糖質や脂肪は精製した状態で含まれるため、消化管内での消化と吸収が簡単で迅速になり、生物学的利用能が高くなり、脳にすばやく作用する可能性があります。
吸収の速さは、消化管の下部ではなく上部腸 (十二指腸) からのシグナルが線条体のドーパミンを誘発するため、特に重要です。したがって、超加工食品が生物学的に利用可能な報酬物質を迅速に送達する能力は、中毒性を高める可能性に寄与している可能性があります。
添加物も中毒性の一因となっている可能性がある。多くの超加工食品には、甘味や風味を増す香味添加物や、口当たりを良くするテクスチャー調整剤が含まれています。砂糖、ココア、メンソール、アルカリ塩など、風味や口当たりを良くすることを目的とした添加物も一般的です。
超加工食品に多く含まれる人工甘味料は腸内の受容体に結合し、グルコーストランスポーターアイソフォーム 1 (SGLT1) およびグルコーストランスポーター 2 (GLUT2) の発現を増加させ、グルコースを吸収する能力を高めることが報告されています。
つまり、超加工食品は摂取を止められなくする依存性(中毒性)を有すると言えます。実際に、超加工食品中毒という用語も使われています。
【超加工食品の食べ過ぎは早死につながる】
超加工食品の摂取量が多いと死亡リスクが高くなることを示すデータが報告されています。特に、心臓病や糖尿病に関連した死亡のリスクが顕著に上昇する可能性があると報告されています。以下のような報告があります。
この研究では、米国11州の女性正看護師コホートと米国50州の男性医療従事者コホート中、心血管疾患・糖尿病歴のない女性7万4,563例と男性3万9,501例(計:11万4,064例、男/女比:0.53)を対象として、超加工食品摂取(4年ごとに実施された食物摂取頻度調査を使用)と死亡の関係を中心に調査・検討しました。追跡期間中央値それぞれ34年と31年の間に、女性30,188人、男性18,005人の死亡が記録された。
超加工食品の最低四分位数群(摂取量が少ない下位4分の1)vs.最高四分位数群(摂取量が多い上位4分の1)比較では、全死亡リスクは最高四分位数群で4%有意に高という結果でした。がんや心血管疾患以外の原因による死亡率が9%高い数値でした。
超加工食品サブグループ別解析では、肉/鶏肉/魚介類ベースの調理済みインスタント食品(加工肉)が全死亡と最も強い関連(ハザード比:1.13、95%CI:1.10~1.16、傾向のp<0.001)を示し、砂糖または人工甘味料入り飲料(ハザード比:1.09、95%IC:1.07~1.12)、乳製品ベースのデザート(ハザード比:1.07、95%IC:1.04~1.10)、超加工パン・朝食用食品(ハザード比:1.04、95%IC:1.02~1.07)(ただし、全粒穀物を除く)も、全死亡リスクの増加に関連していました。
そのほかの研究でも、超加工食品の摂取増加は心臓病、肥満、2型糖尿病、がん、肺疾患、精神障害(うつ病など)らの有害アウトカムのリスク増に関連している可能性が報告されています。その結果、寿命が短縮するという結果が報告されています。
NOVA分類ができたきっかけは、ブラジルでは肥満が経済的に裕福な人に比べて貧困な人々に多いという観察でした。裕福な人々の方が栄養の高い食事ができるので肥満が多くなるという予想に反して、肥満は経済的に貧しい人の方が多いという結果でした。その理由として考えられたのが、安価で肥満を起こしやすい超加工食品の摂取が貧困層に多いからという理由です。
超加工食品は便利で安価で美味しく、利便性は極めて高いのですが、様々な理由で健康にはマイナスになるという事実を知っておく必要があります。
最近は、食品加工の技術が進歩し、調理済みの冷凍食品が人気です。利便性や安さや美味しさなど良いことばかりが宣伝されていますが、現在の超加工食品が寿命を短くすることは確かなようです。
添加物フリー、食物繊維が豊富、糖質をカット、ビタミン・ミネラルが豊富など寿命を延ばす食品加工がそのうち出てくると思います。そうならないといけないくらい、超加工食品の消費が増えており、健康リスクの重要な要因となってきています。
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