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132)ビタミンB群はホモシステインを減らし、動脈硬化や心臓病を防ぐ

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術132

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【ホモシステインはメチオニンの中間代謝産物】

メチオニンとシステインは硫黄(イオウ)を含むアミノ酸です。メチオニンは必須脂肪酸で、システインはメチオニンから体内で合成できるので非必須脂肪酸です。メチオニンとシステインはタンパク質を作る材料になります。
 
メチオニンとシステインは、共にアミノ酸の側鎖に硫黄原子を持っており、これにより、タンパク質内で特定の立体構造を形成するのに重要な役割を果たすことがあります。特にシステインは、タンパク質の安定性を高めるジスルフィド結合の形成に関与します。

メチオニンは、メチオニン自体の他にも重要な代謝物質であるS-アデノシルメチオニン(SAM)の前駆体となり、メチル基の供給源となることから、メチル化反応において重要な働きをします。
 
ホモシステインはメチオニンがS-アデノシルメチオニンに代謝されたあとに生成されます。ホモシステインはメチオニンに再生され、システインの合成に使用される中間代謝産物です。体内の代謝が正常であれば、ホモシステインの濃度は低く抑えられています。
メチオニン、システイン、ホモシステインの構造式を下図に示しています。


メチオニンはメチオニンアデノシルトランスフェラーゼによってS-アデノシルメチオニンに変換され、これはメチルトランスフェラーゼによるメチル基移動(メチル化)に用いられます。メチル基の移動後は S-アデノシルホモシステインとなり、さらにホモシステインに変換されます。
 
ホモシステインの行く先は2つあります。1つはメチオニンに戻る経路で、この経路ではビタミンB12と葉酸が必要です。
 
もう1つはシステインに変換される経路で、この経路ではビタミンB6が必要です。

つまり、ビタミンB12と葉酸とビタミンB6が不足すると、ホモシステインが体内に蓄積することになります。(下図)


図:メチオニンはS-アデノシルメチオニンに変換され、S-アデノシルホモシステインを経てホモシステインに変換される。ホモシステインに5-メチルテトラヒドロ葉酸のメチル基が転位してメチオニンに再生される。この反応ではビタミンB12も必要となる。ホモシステインはシステインに変換される酵素反応ではビタミンB6が必要となる。




【ホモシステインの血中濃度が増えると動脈硬化が進行する】

ホモシステインは、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞などのリスクを増やす要因として知られている物質です。前述のように、必須アミノ酸のひとつであるメチオニンの代謝における中間生成物で、ホモシステインの代謝には、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸が関与しています。
 
血中のホモシステイン値を低下させるには、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸の摂取が役に立ち、日本循環器学会の虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2006年改訂版)でも、「血中ホモシステインレベルが高い場合、動脈硬化が進展することが証明されており、高値の場合には、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の摂取が必要となる。」と記載されています。
 
ホモシステインが多いと骨折しやすいという報告もあります。ホモシステインは、骨形成に必要なコラーゲンの網目構造形成を阻害するといわれています。ホモシステイン高値は骨粗鬆症を促進します。ホモシステイン値を下げることは、強い骨を作ることになり、コラーゲンの質の改善にも役立つので、肌の張りにも良い影響を与えることが期待されます。

ビタミンB6が不足すると、ホモシステインからシステインへの代謝が阻害され、ホモシステインが蓄積し、血中ホモシステイン値が上昇します。 ビタミンB6は、約100種類の酵素の補酵素として働きます。特に、アミノ酸代謝に関与し、その必要量は、たんぱく質の摂取量の増加に依存して高くなります。

ビタミンB6は、牛レバー、鶏肉(ささみ)、ニンニク、ごま、玄米などに多く含まれています。
 
ビタミンB12が不足すると、ホモシステインからメチオニンへの代謝が阻害され、血中ホモシステイン値が上昇します。ビタミンB12は、造血やアミノ酸、脂質などの代謝の補酵素としても働き、不足症状には、悪性貧血、神経障害、感覚異常、うつ病、慢性疲労、運動時の動悸や息切れなどがあります。ビタミンB12は、牛レバー、牡蠣、しじみ、海苔に多く含まれている。
 
葉酸(Folic acid)はビタミンB9とも呼ばれます。葉酸は細胞の成長と分裂を助け、DNAとRNAの合成に必要です。そのため、特に成長期にある胎児や子供にとっては特に重要な栄養素となります。妊娠初期に葉酸を適切に摂取することは、神経管欠損症と呼ばれる重大な出生前の欠陥を防ぐことが証明されています。

葉酸は豊富に含まれている食物には、深緑色の葉野菜(ほうれん草やケールなど)、豆類、シリアル、オレンジジュースなどがあります。
 
ビタミンB複合体は、さまざまな種類のビタミンB群を含んだ栄養補助食品や健康補助食品のことを指します。ビタミンB群には、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、およびビタミンB12(コバラミン)などが含まれます。(下図)


図:ビタミンB群のビタミンの化学構造


ビタミンB複合体は、これらのビタミンが相互作用することで、エネルギー代謝や神経機能の正常化、赤血球の生成など、さまざまな身体機能に関与します。それぞれのビタミンBは独自の役割を果たす一方で、相互に補完し合う関係もあります。

ビタミンB群欠乏が倦怠感を引き起こす理由は、ビタミンB群がエネルギー代謝に関与しているためです。これらのビタミンB群のビタミンは、食品から摂取した炭水化物、脂質、およびタンパク質をエネルギーに変換するための補酵素として機能します。ビタミンB群は細胞内でエネルギー産生の過程で重要な役割を果たし、糖や脂肪の代謝を促進します。

ビタミンB欠乏症では、エネルギー代謝が妨害され、その結果、体内のエネルギー産生が低下し、倦怠感や疲労感が生じます。また、ビタミンB群は神経系の正常な機能にも関与しており、不足すると神経機能の低下が引き起こされる可能性もあります。
 
特にビタミンB6、ビタミンB12、葉酸(ビタミンB9)の欠乏は、ホモシステインの代謝異常を引き起こし、血中のホモシステイン濃度が上昇する可能性があります。高いホモシステイン濃度は、血管内皮細胞の損傷や炎症を引き起こすことにより、動脈硬化や心血管疾患のリスクを増加させると考えられています。そのため、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸の適切な摂取は、ホモシステイン濃度を正常範囲に保つために重要です。
 
ビタミンB群は体内で貯蔵されにくい水溶性ビタミンなので、定期的に摂取する必要があります。

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