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161)若年者の老化が進んでいる

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術161

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。


【老化の速度は人為的に遅くできる】

同じ日に生まれた二人が70年間の時が経過すれば、二人とも70歳になります。これが実年齢(暦年齢)です。しかし、この二人の肉体年齢には差があるかも知れません。一人は平均より若々しく病気も無く50歳代の肉体で、もう一人は老化が平均より進行し複数の病気を持ち90歳代の肉体かも知れません。このような年齢を生物学的年齢と言います。
 
生物学的年齢とは、個体の体の生物学的な老化状態を指す指標です。これは、個々の健康状態や生活習慣などが反映された年齢であり、単に生まれてからの時間(暦年齢)とは異なります。
生物学的年齢は、細胞のテロメアの長さ、心血管系の健康、代謝機能、脳の機能など様々な生物学的指標に基づいて測定されることがあります。

たとえば、同じ年齢の人でも、運動習慣がある人、健康的な食事をしている人、十分な睡眠を取っている人などは生物学的年齢が若く見られることがあります。逆に、喫煙や過度のアルコール摂取、不健康な食生活、運動不足などのライフスタイルは、生物学的年齢を加速させる要因となり得ます。


図:平均的な老化は暦年齢(生まれてからの経過年数)と生物学的年齢がほぼ一致する(①)。暦年齢が90歳でも生物学的年齢が60歳のような人は老化速度が低下していることを示す(②)。逆に、生物学的年齢が暦年齢より高い人は老化のペースが加速していることを示す(③)。
 
 

生物学的年齢は体内の老化速度であり、細胞がどれだけ機能しているか、どれだけのダメージが蓄積しているかを反映します。生物学的年齢が暦年齢(生まれてからの経過年数)よりも高い場合は、老化のペースが加速していることを示しています。生物学的年齢は将来の健康状態を適切に予測することができます。
 
日本を含む多くの国で、高齢者は暦年齢65歳以上と定義されています。しかし、この定義には医学的あるいは生物学的な根拠はありません。老化の速度は個人差が極めて大きいので、一律に暦年齢で定義すること自体に意味がないためです。
 

例えば、多くの国で寿命が延びています。過去1世紀において、工業先進国では経済の発展に伴い、医療の進歩と、生活環境や公衆衛生の改善によって寿命は顕著に延長しました。
 
日本の場合の平均寿命の推移を見ると、1900年頃は男性42歳、女性44歳でした。それが、1960年頃には男性65歳、女性70歳になり、1980年頃は男性74歳、女性80歳、そして最近(2019年)は男性81歳、女性87歳となっています。

つまり、この120年間で男女とも40歳代から80歳代に寿命はほぼ2倍になっています。栄養状態や衛生状態の改善や医療の発達が寿命の延長に寄与していると考えられています。
 
炎症は老化を促進しますが、公衆衛生の改善と抗生物質の進歩によって感染症が減少すると、人類の老化速度は遅くなります。このように、老化速度は人為的に変化できるのです。



【若年世代の老化が加速し、発がん率が上昇している】

がん研究の領域では、近年、若い世代でのがんの発症率が上昇していることが多くの研究で指摘されています。
 
さらに、若い世代で老化が加速していることが報告されています。つまり、実年齢(暦年齢)より生物学的年齢が高い(より老化した)若年者が増えているという調査結果が報告されています。
 
米国ワシントン大学医学部の研究グループによる今年の米国がん学会年次総会(AACR 2024、4月5〜10日、米サンディエゴ)で発表された報告によると、1965年以降に生まれた人では、1950年から1954年の間に生まれた人に比べて老化が17%加速している可能性を報告しています。
 
この研究では、14万8,724人の血液データを用いて、9種類のバイオマーカー(アルブミン、アルカリホスファターゼ、クレアチニン、C反応性蛋白、グルコース、平均赤血球容積、赤血球分布幅、白血球数、リンパ球比率)を基に、それぞれの参加者の生物学的年齢を推定しました。

生物学的年齢が歴年齢を上回っている場合は「老化の加速」と定義されました。その結果、1965年以降に生まれた人では、1950年から1954年の間に生まれた人に比べて老化が加速している可能性が17%高いことが示されました。
 
次に、老化の加速と若年(55歳未満)発症型のがんとの関連を検討したところ、老化の加速が1標準偏差増加するごとに、肺がんリスクは42%、消化器がんリスクは22%、子宮体がんリスクは36%、それぞれ上昇することが示されました。

つまり、最近の若年者の間では、老化が加速し、若年発症型のがんリスクが上昇していることを示唆しています。
 

暦年齢とは異なり、生物学的年齢は食事、身体活動、精神的健康、環境ストレス要因などの要因によって影響を受ける可能性があります。 これらの研究結果は、若い世代が予想よりも早く老化している可能性があることを示唆しています。これはおそらく、さまざまな危険因子や環境攻撃に早期にさらされていることが原因と思われます。



【がんと老化のリスク要因は共通するものが多い】

加齢はがん発生と体の老化(様々な生理機能の低下)の最も大きな発症要因です。
 
組織幹細胞の遺伝子変異は加齢とともに蓄積していくので、老化に伴ってがん細胞の発生が増えます。神経細胞も、虚血や酸化ストレスなどによってダメージを受けた神経細胞が少しづつ脱落していくので、歳を取るほど神経細胞の数が減っていき、認知症が増えてきます。心臓や腎臓や筋肉も加齢とともに機能が低下します。
 
がんと老化を促進する原因として加齢以外にも共通の要因が多数あります。遺伝子(DNA)や細胞にダメージを与える要因、例えば、酸化ストレスや慢性炎症を引き起こすような要因はがんも老化も促進することになります。高糖質食、肥満、糖尿病、メタボリック症候群、喫煙、酸化障害、慢性炎症などはがんと老化を促進します。
 
つまり、体の老化を促進するリスク要因と、がん発生を促進するリスク要因は共通するものが多いと言えます。(下図)


図:加齢はがんと老化(様々な生理機能の低下)の最大のリスク要因であるが、さらに肥満・糖尿病・メタボリック症候群・酸化障害・慢性炎症・喫煙・高糖質食などもがん発症と老化を促進する。
 
 
例えば、糖尿病やメタボリック症候群や慢性炎症の改善効果がある地中海食は、がんとアルツハイマー病の両方を予防する効果が報告されています。地中海食は新鮮な野菜や果物や魚介類が豊富で、オリーブオイルを多く使う料理でがんやアルツハイマー病だけでなく心臓病の発生率を減らす効果も報告されています。
 
糖質制限食やケトン食ががんと老化性疾患の両方の予防と治療に有効であることも知られています。適度の運動もがんと老化の進行を抑制します。つまり、がんと老化の発症リスクがかなり共通しているので、がんを予防することは他の老化性疾患の予防にもつながると言えます。



【現代社会では発がんと老化を促進する要因が増えている】

「がんは汚染や食事などの環境因子によって引き起こされる現代病で,ヒトによってつくり出された可能性が高い」とする研究結果が報告されています。例えば、古い時代のミイラの遺体を検査した研究などで、古代においてはがんは極めてまれな疾患であったと推測されています。
 
がんの罹患率は産業革命以降、劇的に増加し、特に小児がんで顕著であったことから、がんの増加は単に寿命延長の影響ではないことが示唆されるとしています。「古代の自然環境にはがんの要因になるものは存在せず,がんは環境汚染や食事・ライフスタイルの変化が原因の人為的疾患と考えざるをえない」という意見です。
 
日本においてがんが年々増えていますが、この数十年に関しては、人口の高齢化が一番の原因です。がんは加齢とともに発生率が増えてくるからです。しかし、この数100年間のがんの発生率の増加をみると、高齢化よりも、近代工業化に伴って人為的な発がん要因が増えてきたことの方が重要のようです。

大気汚染や医療放射線被曝による発がんが増えています。交代制勤務による概日リズムの乱れや、ストレスの増大も発がんを促進するようです。アスベストや電磁波や食品添加物などここ数十年に出現した新たな発がん要因もあります。
 
近代化に伴って、生活は便利になり、寿命も伸びてきましたが、このような社会環境の変化ががんを増やす要因にもなっている点も注意する必要があります。そして、これら発がんリスクを高める要因は、老化を促進するものも多くあります。

このように、がんの発生や老化を促進するリスク要因は近年増えています。最近までは、医療と公衆衛生の発達で、寿命は延びてきましたが、若年者の老化が進行している現実が明らかになったことは、これからはがんの発生数は増え、人間の寿命は短縮することを予見しています。


図:現代社会においてがんの発生が増えているのは、人為的な発がん要因が社会の近代化とともに増えているためである。タバコ、オゾン層破壊による紫外線増加、排気ガスによる大気汚染、環境や医療目的での放射能被爆、電磁波(携帯電話など)、飲酒(アルコール)、運動不足、高糖質高脂肪食、肥満、糖尿病、ストレス、交代制勤務、加工肉や食品添加物、薬品や発がん物質などの発がん促進要因は近代社会になって出現し、年々増加している。これらの要因は体の老化を促進する可能性も高い。



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