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不倫判例百選63【番外編】婚姻の特権?

0 はじめに

婚姻とは、法律学の世界では、婚姻とは、相手方と夫婦関係を設定する契約であると考えられています。

契りを交わして、公に届出をして、夫婦関係は成立します。契り、の中には、不貞行為をしない、などと明確に合意することはまずないでしょう。当然の前提になっている?のか、法律が定めているからなのか?浮気をすること自体がよくないから、婚姻をすると当然それが再確認されるのか?

1 法律学によるある説明から考える

法律学におけるもっとも古典的なある考え方は以下のように要約できます。

配偶者の貞操を求める権利は、婚姻制度が一夫一婦制度を基礎としている以上、法的に保護される性的結合である。夫婦はそれぞれ相手方に貞操を求める権利を有しており、それが世の中のだれもが侵してはいけない。すなわち、貞操を求める権利は人格権である。これは対世的な権利として成立すると考えれば、その配偶者あることを知って条項関係を結べば権利侵害となる。

ある論者は、以下のように述べています。

双方の合意によって相互に貞操義務を負う場合は婚姻に限りません。婚約や内縁も同様です。しかし、婚姻は、これが氏や戸籍によって公示され、産まれた子に対しては嫡出性が推定される特別な効果が付与されています。これは婚姻したからには世の中に対して配偶者の貞操を求めることができるという制度として婚姻が存在していることを示すのではないでしょうか?岡部喜代子『親族法への誘い』35頁(八千代出版,第二版,2006)。

私は、ある疑問を感じています。

2 疑問と私見

たしかに、実際に届出をすることで、婚姻関係が有効に成立し、それは戸籍などの記載によって明らかになっていきます。ただ、以前もご紹介した以下の事例を考えてみます。

アプリで知り合って、婚姻したくて、好きでした。彼が既婚であると知って、、、頭がパニックになりました。奥さんには本当に申し訳ないと考えているのですが、彼のことが赦せません・・

この相談は、現場には最近本当に多い事例です。

アプリの発達によって増えたというより、ある種古典的なものかと思います。

対配偶者との関係で、ちぎりを交わし、戸籍にも反映させた。それを犯してしまった自責の念を感じているのか?おそらく違うと思う。自分が契りを交わしたかった相手に怒りを感じ、その反射として、自責の念を感じているのだと思う。この怒りは正当なのか?

3 疑問は深まる

一応、裁判所は、この怒りを、慰謝料請求の形で保護しています。

私個人も、この結論には賛成です。

ただ、貞操請求権を、婚姻、という制度に対して求めることは限界が来ていて、個々人が等しく人格権の内容として交際者などの密接な関連を有する者に対して守操請求権を有している、と説明するほうが自然だし、素直ではないかと考えている。

内縁だから、法律婚だから、ではなくて、保護すべき人格権として有している。届け出があるから、などによってではなく、本来、人格権として有しているものを侵害したのかどうか、というシンプルな考え方に戻してもいいのではないか。

家族の在り方の変容に合わせて、柔軟な解決を図るには、この考え方があってもいいように思う。婚姻の特権かのようにみえる不貞行為の慰謝料請求という理解は問題を複雑にする危険があります。

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