離婚裁判百選㉔番外編ー生殖にとっての責任及び婚姻の承認を読んで
Scott FitzGibbon【ボストン大学ロースクール教授】「生殖にとっての責任及び婚姻の承認〔訳:鈴木伸智〕という論文(『21世紀の家族と法小野幸二教授古稀記念論集』768頁以下(法学書院,2007)を読、んだ。
著者は、一男一女の婚姻が、生殖にとって正当であるに違いないと結論を導いています。
論者は、婚姻以外の形態を排斥する趣旨ではなく、生殖の関係に最も適切な関係は婚姻であると位置付け、最も適切な形態を確認する一連の基準を提案しています。親子の関係から考察をはじめ、
この7つの要件が正当性を支えると説く。わかったようなわからないような基準を提案していますが、とりわけ⑷に意味深な主張がある。
婚姻をすると、貞操義務が生じると解されるが、たまたま時を同じくして、芥川賞作家遠野遥氏著「破局」を読んだ。ある大学生がモト彼女と浮気をして、モトカノジョの密告にいより現彼女に見つかってしまう。動揺して主人公は暴力沙汰を起こし、(おそらくは)将来などを失う。
私見になるが、婚姻をしている=貞操義務が生じる、というより、婚姻に至るまでの間に貞操義務が強固になっていくように思う。
その理由は、婚姻をしていると、不変という美徳が働く?のかどうかはわからないが、婚姻をしていないと、貞操義務は法的義務には昇華されてもいない。しかし、実際には、交際関係は解消には至りやすい、もろい。そうだとすれば、交際中の貞操義務?的なものの方が、(心理的)拘束力の程度が高いともいえる。法的義務はないが、拘束力がある。
ちなみに、紹介した論文の筆者は、同性の関係では生殖に正当性がないと主張している。永続についての誓約をせず、一方で義務を最小にしていると説明している。
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