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離婚裁判百選⑧悪意の遺棄を遡る
0 はじめに
悪意の遺棄の歴史的を振り返っています。
実は、戦後民法を改正するにあたって「家」の廃止など、根本的な改正を迫られている状況下で、最終案直前になって尊属に関する2つの事由が落とされ,それに代わって,悪意の遺棄と,強度で回復の見込みのない精神病が加えられたと指摘されていました。もう少し掘り下げてみます。
1 「直系尊属からの虐待」?
実は直系尊属からの虐待が適法に離婚をする原因となることは、ぎりぎりまでおかれる予定でした。しかし、削られています(我妻榮編「戦後におけ民法改正の経過」145頁(日本評論社,1956))。米国側からの要請ではなく、自然と規定から削除された経緯のようです。しかし一方「配偶者又ハ其ノ直系尊属ヨリ著シク不當ノ待遇ヲ受ケタルトキ」の文言が削除されたことをもって、「悪意の遺棄」なるものを復活させる必要があったと、立案に参画した最高裁判事であった奥野健一氏は語っています(同書151頁)。
2 悪意の遺棄の出自?
ここまで検討してみると、遺棄、とは、本来尊属に対するもの、もしくは尊属から冷遇を受けた場合を指していたことがわかります。これが本来予定されていた悪意の遺棄の意義でした。
しかし実際はどう解釈されているか。実態はどうか。『悪意の遺棄』概念は本来の趣旨や射程を大幅にこえ、同居義務違反でさえ悪意の遺棄と解釈されています。
同居に対する話し合いがないことを認定して悪意の遺棄を認めるこの事例や、
一方的な別居をもって悪意の遺棄としています。尊属やいずこへ…
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