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荷車の騎士にツッコミを その1

さて、先日わたくし、物語らせていただきましたこちらのお話『ランスロまたは荷車の騎士』。物語るだけでは飽き足りませず、今回ツッコミを入れていこうという企画でございます。

つれづれなるままに書き散らしてゆきますので、お茶とお菓子でも(別にお酒とおつまみでも遜色ございませんとも!)召し上がりながらのんびり読んでいただければ幸いです。

ちなみに私原作があまりにも面白かったためほとんど削ることができず、いやセリフはごりごり削ったのですが、ほとんどシーンを削っておりませんでしたので2時間以上語る羽目に陥ったのでございます。

お付き合いくださいました方々に心からの感謝を。

この記事はお付き合いくださいました方々、並びに原作を読んだぞ!と言う方へ向けて書かせていただきましたものにございます。

ストーリーが知りたいという方は是非、私の語りor原典訳が収録されております『フランス中世文学集2愛と剣と』訳新倉俊一 神沢栄三 天沢退二郎 白水社 をご覧くださいませ。

さてではまいります。

「プロローグ」
こういう詩人がああだこうだと前口上を述べるの私大好きなんですよね。
それを受け継いで、わりとああだこうだ前口上述べる方です。もちろん早々に切り上げますがね。

それにしてものっけから「奥方に依頼されました」と書いている時点で女性向けと気づきそうなものなのですが、私全然気づきませず。

あるときフォロワーさんが「貴婦人向けの夢小説では」のようなことをおっしゃっていて。
「は!そうか!そういえば、そうだな!ジャストミートそうだな!」
膝を打ち納得した次第にございます。

たぶん昔の貴婦人方も日ごろの鬱憤はたぶん大量にたまってらっしゃったと思うのですよねぇ。政略結婚で結婚せざるを得なかった夫にブッチブッチにキレることもあったでしょうよ。

素敵な人と恋愛したいわ……。できれば見た目が良くて、すっごく強くて、きちんと身分もあって、私のことが大好きで!とか、まあもう、いつの時代も人間の考えることはさして変わりません。

日本人の価値観には若干違和感があるかもしれませんが、私、フランスのマダム方がガンガン愛人を作っている小説の解説書……的な……鹿島茂さんの本とか読んでおりましたので、ああ、いつものか。というくらい貴婦人たちのお遊びには慣れっこなのでございます……。

にしても、この作品でのグィネヴィア様のなさりようちょっと極まってるところがあるので、クレチアンはなんてものを書いたのだ、脳みそは大丈夫か、と思うのですが……。

ちなみにこの作品、夫婦愛の堅めなものが好きだったらしいクレチアンが嫌気がさして筆を折ったのが定説らしく。そうじゃなくて、なんか終わらない物語になりそうだったからそうなってしまったのではないか的なことも、巻末の本に書いてありましたが。

クレチアンにインタビューすることが不可能である以上真実は闇の中なのでしょうね……
クレチアンの日記でも見つかったら別ですが。

それにしてもクレチアンの筆の冴え方を見ていると、クレチアンが本意であれ不本意であれ、こういう性向(ランスロットがギネヴィア様の髪相手にフェティシズムをガンガンに示してくれるところとか)にきちんと通じる心を持っていたことはよくわかりますね。

1「強いられた約束」
さーて、物語の幕が開きまして、早速メレアガンがアーサー王宮廷に突っ込んでくるわけですが。ちなみにどこかの書物ではメレアガンがマリアガンスになっていて、マリア様がグィネビア様攫っていくのはそれはそれでいいな……と思ってしまいますが、まあそれはさておき。

本当によく忽然と武装した騎士が現れて喧嘩売ってくるパターン、中世ものでありますよね……たぶん実際にごろごろありそう……騎士、野蛮だし……。

で、アーサー王に「お前の国の奴らをとらえてるぜ!ハッハー!!取り返せるものなら取り返してみな!!(意訳)」と言ったのに、アーサー王は「我慢する」と言ってきたわけですよ。

ええー?!アーサー王の腰抜けー!!とメレアガンは思ったでしょうね。
私も思いました。

でもメレアガン、たぶん黄泉の国の王子様なんですよ。明言はされてないけど、行ったらかえってこれない国なので黄泉じゃんそこ……というね。

ちなみに解説でも「冥界の王」とか言われてるので、この解釈で問題ないと思います。

そして、「クッ……アーサー王め、その手は桑名の焼き蛤ということか!(言ってない)」とでも思ったのか、一旦退却しかけるメレアガン。カワイイですね。出鼻くじかれてる。

でも立ち止まって最後にもう一度お誘いをしたところで。

引っかかったのがケイ卿―――――!!キャー!待ってました!
中世文学で何かあるとまず最初に突っ込んでいくのがケイ卿でございます。

ちなみにケイ卿、フランス語だとクーです。超可愛いでしょ。
紋章、鍵なんですよケイ卿。
それキーじゃん。
シャレ?シャレなの?(深い意味があったらまっことすまぬ……)

すぐ脱線しますね、失礼。
さて、うまいこと言って王と王妃を出し抜くケイ卿。
引っかかる方も引っかかる方よな!!

ウェールズはマビノギオンのアーサー王はちゃんと引っかかってなかったぞ!!
フランスのアーサー王うかつ、うかつ!(しかしそこが好き)

さて、無事に引っかかった(無事じゃない)アーサー王のフォローをしに飛び出すのは、もちろん我らがガウェイン卿!!
そっと耳打ちして策を伝えます。

おのれなんと優秀な。さすがガウェイン卿!
いや、ゴーヴァン殿!!

そう、フランス文学だと、ガウェイン卿はゴーヴァン殿と呼ばれてるんですよ。
尊くないですか?!尊い。ゴーヴァン殿は尊い。

さて優秀なガウェイン卿がケイ卿の後を追うとまあ、ケイ卿は攫われ、王妃様も攫われ。

あああ、予想通りー!

そこへやってくる主人公!!
ヒーローは遅れてやってくる!!

ラーンスロット!!!

どうやら馬をめちゃくちゃに走らせて、王妃様を助けに行こうとしていた模様。
でも、馬が限界なので、ガウェイン卿にいきなり、
「馬、貸して……」
という。

いきなり年下キャラで売り出してきたなこの男……あざとい……

ガウェイン卿もよく馬を余分に用意してくれてたよね。
もしかして予測済みなのか?!
ランスロットがどんな行動するかくらい、俺は知ってる……的な。
仲良し?仲良し?(後で出てきますがマジで仲良しです)

さて、ランスロット一人で爆走していっちゃうので、ガウェイン卿がいくらむきになって追いかけても追いつかないわけです。
よその作品ですが、ガウェイン卿って馬をすごく大事にする人なんですよ。
騎士の鑑ですね。

ランスロットは最初に乗ってきた馬を走らせすぎで死なせ、ガウェイン卿に借りた馬は戦いで死にました。
馬大切にしないねアナタ……。

長くなってしまったので今日はここでお開きとさせていただきます。
次回はとうとうランスロットが荷車に乗るよ!!(次回が続くかは未定)

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