詩)海ゆかば 二十歳の僕に
ぼくが昭和20年5月 20歳だったら と想像する
偶然と必然は表裏一体だ
時代は宿命的に人を導く
明治生まれの父は小作農で12人中の六男であった
突然 死んだ兄の代わりに兄嫁を娶ることになりそうになるが拒む しかし仲人のはかりごとにより入籍させられ 悶々とした日々を過ごす
昭和元年 弘誕生 しかし三歳で赤痢に感染 死水がわりに大量の水を飲まされ奇跡的に助かる
昭和6年満洲事変 昭和13年母病死。
昭和16年 太平洋戦争 18年就職 19年徴兵検査合格 近視のため乙種
父後妻を娶るが一年後に急逝
敗戦 肺結核に罹り昭和二六年退院
二七年 「I was born」を詩学に投稿
思い描いた生き方ではなかったが生と死という命題が 弘を旅立たせることになった
戦争とは英雄が必然だったのかもしれない
現実とは実に折り合わない英雄像が
「海ゆかば」大君のため
だが実は
大君とは 貴方のことではなかったか
大君が君主というのは後世の世の作文ではないか
人は人に必死だったのではないか
ぼくが昭和20年5月 に
20歳だったら と想像する
人は美しくない
人生はもっと
だからこそ
生きるのだ
ぼくは
だからこそ
戦争はいらないのだ
万里小路 譲 言の葉の彼方へ 詩というテキスト
「吉野弘の眼差し」参照
2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します